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異世界生活・1日目 3話目でまだ冒険始まらないってマジ?

【前回までのあらすじ(前回から、だいぶ日が経っていたので)】


「いつでも、どこでも異世界転生できる能力」を使い過ぎた俺 (康介)は、その罰として「神」とやらに「天寿を全うするまで、異世界で生きる」ことを強制的に押し付けられてしまった。


不満たらたらで転生した先では、冒険の拠点となる街を見つけ、中に入ろうとするが、「通行許可証」を持っていなかった為に、外へと追い出されてしまった。


「完全に詰み」状態の俺だったが、偶然、近くを通りがかった美人の貴族令嬢によって助けられ、何とか街の中へと入ることになった。


俺は今、馬車に()られている。


もちろん、中は快適そのもの。座席とか背もたれにちゃんとクッションが()かれていて、馬車の揺れも心地(ここち)よく感じられる。流石(さすが)貴族(きぞく)御用達(ごようたし)だな。


もしも(かな)うなら、ずっとこのままでいたいなあ…。




この痛い視線さえなければ。


って、(なん)ですかお(じょう)さんさっきから。窓の外を(なが)める訳でもなく、ずっと俺の方を見てますよね、

ってか、(にら)んでらっしゃいますよね? そんなに俺が嫌いですかね?


「あ、あの〜、すみません。何か俺、貴方(あなた)の気に(さわ)るようなことをしましたかね?」


「別に。」


うわぁ、冷たい。()()ない。(つら)い。


「あの、ちゃんとこの馬車乗る前に、(くつ)(どろ)は落としましたし、なるべく(よご)さないようにはしているつもりなんですが。」


「だから、別に。」


えぇ〜。なんなんだよ、もう。


「貴方のような(かた)、この(あた)りでは見たことがございませんから、少しばかり気になっていただけですわ。」


「そうですかね? (わり)とどこにでもいる格好(かっこう)だと思うんですが。」


「いいえ。貴方のような格好は、とても()いていますわ。」


そう言われて、俺は自分の()なりを確認する。



って、これ現実(リアル)の私服じゃねえか! しかも部屋着!

さっきは動転(どうてん)してて、気づいていなかったけど、これは確かに「浮いている」。


クソッ! あの(じじい)、マジでそのまま送りやがった! これで、どうやって生きていけって話だよ!


って、そんなことより上手く誤魔化(ごまか)さないと!


「ああ〜、まあ確かにそうかも知れませんね。実は俺、結構(けっこう)遠くの所から来た者ですから、お嬢様にとっては(めずら)しいのかも知れませんね。」


「まあ、そうですの。ちなみに、どれほど遠い所なのか具体的に教えていただいても?」


やべえ〜。「具体的に」って質問は、(なかなか)々キツイぞ。


「その〜、あまり(がく)がない身でして、よく分からないんです。」


「そうなのでございますの? では何故(なにゆえ)、この(まち)(おとず)れたのかしら。

確かこの街は、相応(そうおう)の学力が(そな)わっていませんと、『通行許可証』が(もら)えないはずですが?」


ええ〜っ! 何それ、どこの入学試験?


「あ、いや、その、完全にという訳ではないのですが、そこの分野は少々苦手にしておりまして、その他が結構出来てましたから、多分それで〜。」


「まあ、それはさぞや大層(たいそう)な出来なのでしょうね。」


あ、絶対この人俺の事を疑ってる。だってちょっと口元(くちもと)引きつってるもん。絶対 (あや)しんでるよあれ。


「いずれにせよ、貴方はこの街に用があったということで間違いないですのよね?」


「え? まあ、はいそうですが。」


「分かりました。では今回ばかりは特別に、この街に入る為のご助力(じょりょく)をさせてあげますの。」



「助力」ってどういう…。あっ、検問(けんもん)か。


そんなことを考えてたら、あっという間に俺を乗せた馬車は、さっきの門の所に辿(たど)り着いた。


「それで、俺はどうすれば、」


「貴方はそこで大人(おとな)しくして(くだ)さいまし。」


そう言うと、お嬢様は馬車の窓から顔を出して、門の番人に話しかけ始めた。


「もし、(わたくし)ですわ。門を開けて下さる?」


すると、あんなに屈強(くっきょう)な門番達が(ひざ)を折り、お嬢様に向かって頭を下げていた。


その中から、(おそ)らくはここの門番達のトップらしき人がこちらに向かって来た。


「これは、リリエッタ様。今お帰りでしたか。

もちろん、()ぐにでもここをお通し(いた)しますが、(ねん)(ため)、中を確認させては(いただ)けないでしょうか?」


「ええ、(かま)いませんわ。」


ほ〜お、このお嬢様の名前は「リリエッタ」と言うのか。なるほどなるほど。


「おや? こいつは…。」


リリエッタお嬢様の許可を得て、馬車の中を調べる門番長が、俺の存在に気づいた。


あっ、この人さっき俺を連行(れんこう)した人だ〜。


既視感(きしかん)を覚えていたのは、俺だけじゃなかったようで、門番長は不審(ふしん)な顔つきになり、馬車の主に問いかけた。


「リリエッタ様、恐れながら、この男は?」


「あら、知り合いでしたの?」


「いえ、知り合いと言うより、先ほど『身分が証明できていない』ということで、追い出した者と全く同じでしたもので。

お嬢様、なぜこの男がここにいるのか教えていただいてもよろしいでしょうか?」


「その男は、新たに私の屋敷にて働くこととなった執事(しつじ)でございますわ。

間抜(まぬ)けにも、途中で『通行許可証』を落としたようで、そこへ私が偶然、遭遇(そうぐう)したのでございますわ。」


「執事、でございますか? それにしては随分(ずいぶん)と身なりが粗末(そまつ)ですが…。」


「遠い村から(はるばる)々歩いて来るのですから、仕方(しかた)がありませんわ。物は見かけに()らず、と言いますでしょう?」


左様(さよう)でございますか。

あ、いえ、リリエッタ様がそういうのでしたら、我らはこれ以上の追及(ついきゅう)は致しませんが、いかんせん仕事柄ですので。」


「分かっていますわ。貴方がたのお陰で、この街の治安が守られているのも事実。これからもどうかよろしくお願いいたしますわ。」


「ははっ。では、リリエッタ様。どうぞお通り下さいませ。」


「ありがとう。」



す、すげぇ。言いくるめちゃった。これが「お嬢様パワー」か。


しかも、俺を「執事として雇う」だって。いやっほう! これでこの異世界ライフは(もら)ったも同然だ!


突然舞い込んできた幸運に、俺は心を(はず)ませていた。





俺を乗せた馬車は、門をくぐり抜け、しばらく街の中を進んでいたが、やがて人通りが少なくなった所で完全に停止した。


「あの、お嬢様? もう着いたんですか?」


窓の外のどこを見渡しても、「お嬢様が住む家」らしき物は見当たらない。

あるのはただ、一般的な中流階級の人達がよく住む、どこかヨーロッパ風の一軒家(いっけんや)ばかり。


「着いた、とは一体(いったい)どういう事ですの?」


「え? だってこの馬車、お嬢様のお(うち)に向かっているんですよね?」


「ええ、そうですが。」


「でもここら辺には、そういった建物が見当たりませんよ?」


何故(なにゆえ)、貴方が私の家を(おとず)れるのですか?」



…ゑ?


「あの、執事として雇って貰えるはずでは?」


「貴方のような素性(すじょう)も分からない者を、私の屋敷に入れる訳がないでしょう。

言ったでしょう? 街に入る為の手助けは致しますと。

貴方を雇うつもりなんて私には到底(とうてい)ありませんわ。」


ええ〜!? そんなぁ〜。


「えっと、それじゃあ、俺はこれからどうすれば…」


「そのような事は、貴方自身が決めることではなくて? とにかく、ここで降りて頂けます?」


えっ、ちょ、待って。


「この者を外へ。」




あっという間に、俺は馬車を降ろされた。これからどうすればいいんだよ…。


「あ、そうそう。貴方の名前を聞き忘れていましたね。なんとおっしゃいますの?」


馬車の中からお嬢様が声をかけてくる。これは(なか)ば、ふてくされ気味(ぎみ)に答えた。


「康介です。」


「コウスケ、左様でございますか。

では、私も名乗り返させていただくとして、私の名前はリリエッタ・マドレーヌ。この街を治めるマドレーヌ家の長女ですわ。

またいずれ、どこかで会うことがあれば、その時はよろしくお願い致しますわ。」


「あ〜はい、よろしくお願い致します〜。」


おいおい、マジかよ。ガチのお姫様じゃん。

あ〜でもそんなことより、これからこの街でどうやって、


「コウスケ様。確かこの街には『ギルド』なるものがあるそうでございます。そちらへ行って相談してみてはいかがでしょう? では、私はこれにて。」


その言葉を最後に、お嬢様を乗せた馬車はさっさと行ってしまった。



「……はあ〜。ここで悩んでてもしょうがないし、『ギルド』行ってみますか。」


そうして通りに独り、取り残された俺は、この街の『ギルド』を探してみることにした。


お久しぶりです。本当に、更新にここまで時間が空くとは、思ってもみませんでした。


とりあえず、3話です。また次回も日が空くかもしれません。

それでも一応、4月中にはこの小説の第1部を終わらせたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。


ではでは

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