[鳥取大学文芸部冊子『暖簾』試し読み] 腐乱した愛
題名:腐乱した愛
貴女に嚙まれてしまったために
私はもうじき死んでしまって
ゾンビとなるでしょう
これは事故や事件による死ではありません
私自らがこの死を選んだのです
率直に言ってしまうと
貴女のことが好きでした
貴女に嚙んで戴きたかったのです
ゾンビになった貴女は
それでもなお美しく思えました
生前貴女がつけたコロンの香りが
まだ少し香っていました
貴女と関わりを持てるのならと
体がするりと貴女のもとに飛び込んだのです
身を任せ
嚙まれた瞬間
耐えきれない激痛とともに
同等の快楽を感じていました
それもまた事実です
こういったことを言うのは恥ずかしいのですが
ペアルックにあこがれていたのです
高嶺の花の貴女と
そんなことはできないと思っていました
ですが私ももうじき
貴女とお揃いになれるのです
喜ばしい限りです
後悔は有りません
ただ
私がゾンビになってしまったら
きっと貴女を噛もうとは思わないのだろうと
そう思うとただそれだけが
本当に残念です