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#2 誕生日


 俺がこの世界をきちんと把握しはじめて一ヶ月あまり。

 ある日を境に、町の中が妙に騒がしくなったような気がする。

 それまで何も手を付けていなかった道路の整備が始まったり、公園の遊具が新しくなったり。

 ベビーカーに押されていた時からお気に入りだった川沿いの散歩コースも、砂利道からアスファルトに生まれ変わった。

 街の大通りでは、今も立ち並ぶビルの外壁を綺麗にする作業が着々と進められている。


「この街も忙しくなってきたわね」


 一緒に買い物に出かけたある日、そんな大通りを歩きながら母親がポツリとこぼした。


「どうして?」

「この前のニュースでね、今年の年末にはイヴ様がこの街にいらっしゃるって発表があったのよ」

「イヴ様って…」


 確か、この世界の創造神で全人類が信仰している絶対神だったはずだ。

 そんな人が、この街に来るって?


「神様が、来るの?」

「そうよ。正確に言うと、その神様をご先祖様に持つ方が、ね」

「ふーん…」


 そりゃ待ちも活気づく訳だ。

 でも、そんな凄い人がこんな街によく来るな。


「みんなも、まさかこんなところに来るなんて思っていないから、すっかり慌ててるのよ」

「へ~」


 まぁ、まだ3歳の俺にはあまり関係ない話か。

 この年でそんな人混みに行きたくないしな。


「優も、当日が楽しみでしょ?」

「え?」

「あ、まだ知らなかったのね。

イヴ様がやってくるのは、今度の優のお誕生日なのよ」

「へぁ?!」

「しかもしかも、当日お誕生日の人とその家族は、なんとイヴ様とお食事パーティーができるらしいのよ!」

「………」


 その瞬間、半年も先にあるはすの誕生日が、一瞬で真っ暗に染まった。



 ――そして、それからの半年はあっという間だった。



 家の近くには大型ショッピングモールが建ち、街の中心地は道路から街路樹に至るまで完璧に整備されていた。


「…いよいよ今日か……」


 俺はカレンダーの前で一人がっくりとうなだれていた。

 昨日のうちに床屋に行き、前世を含めてもこれまでにないくらいカッチカチに決めた頭。

 先月から何件もブランドショップを周り仕立てた勝負服。

 もちろんそれは俺だけじゃない。

 一週間前から久しぶりに早く帰ってくるようになった父も、俺と一緒に店を回っていた母も、今までおしゃれになんて何の興味もなかった兄も、気合が入っているのが俺にも分かる。


「さ、でかけるわよ!」


 そんな母の掛け声で俺たちは家を出た。

 時刻は午前10時。

 俺の4歳の誕生日、運命の一日が、幕を開ける。


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