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遭遇戦

ちょっと変態(成人のお漏らし)なシーンが登場しますが、直接的表現がないためR-15だと言いはります。



■登場人物

但野(タダノ) (ヒロシ)

自分の死をきっかけに、謎の存在から正体不明の力を授けられた人間の男。

自分の持つ能力がどういったものなのかが曖昧にしかわからないため、実はとんでもないことをしているということにもまた気付いていない。


『デリック・ホロン』

帝国騎士団に所属する人間の男。

誰もが舌を巻くほどの弓の名手で、金髪碧眼の美男子。


『ザボック・グリンエッド』

帝国騎士団に所属する人間の男。

多くの修羅場をくぐり抜け、多くの仲間をその身で守り抜いてきた「生きた盾」。


『グレイ・ダン』

帝国騎士団に所属する人間の男。

ザボックの直属の部下で、どんな敵が相手であろうともその手で屠ってきた「生きた剣」。


『ポーラ・トラキア』

帝国騎士団に所属する人間の女。

素朴な顔立ちながら、愛らしい性格と慈愛に満ちた笑みが多くの男達の心を鷲掴みにしている。

 ガラの吠え声がする方に駆け出した。

 暗い森の中、ぬかるんだ地面に足を取られて、なかなか前に進めない。

 それとも、なかなか前に進むことができないのは、俺の心が未だに警鐘を鳴らしているからなのかもしれない。

 「逃げろ」と訴えてくるのだ、これまで通り、いつも通りに、いつまでも同じように。

 不安から、苦難から、恐怖から、脅威から、痛みから、妬みから、未来から、期待から、全てから逃げろと。

 そうしていれば、安心で、安寧で、安泰で、安全で、案外なんとかなるものだ。

 だってそうして生きてきたじゃないか、そうやって生きて、生き続けて。

 そしてあっさり死んだんだ。


 せっかく苦しみもなく死んだのに、俺はなんで今更こんな道を選ぼうとしているんだ。

 視界は暗闇、足場はぬかるみ、逃げろと訴えてくる心の声を押し殺し、そうまでしてやりたいことってなんなんだ。

 俺は何がしたくて、こんなに走っているっていうんだ。


『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕』


 耳慣れない声がする。

 声のする方を振り向くと、手に明かりを持って歩く「人間」がいた。

 人間…人間だ…。


『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕』


 言葉がわからない…ズーラ語じゃないのか。

 俺はすかさず[鑑定眼]を使う…人間の狩人で、名前はデリック・ホロン、言語はレマリア語、使用できる特技は[曲芸][気配察知][精神集中][動物調教][ナイフ投げ][曲射][隼落とし]、…[隼落とし]は投擲や射撃の武器を使うときに、相手の動く先を読んで偏差攻撃を行う特技か…。

 レマリア語…レマリア語ね…やっぱり[鑑定眼]の使用がキーになって話せるようになるのだろうか。


『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕』


 あ、ダメだ、全然わからん。

 ヤバイ、言葉がわからない、相手はずっと話しかけてきてくるが、いい加減返事を返さないことに怪しまれてもおかしくはない。

 幸い相手は一人だ、今なら無力化してしまうのもありなんじゃないか…?

 [八腕組手]…相手を拘束攻撃によって反撃不能のまま無力化できる特技、試すチャンスがあるというなら、相手が一人きりという今しかない。

 吠え声そのものはもっと遠くから聞こえてきた、この人間以外にも確実に誰かがいるはずだ、合流されたら試すどころじゃない…またその場その場で新しい特技をいきなり使って、そんな危険を犯すくらいなら、もう今ここで試しちゃったほうが良いんじゃないか?


『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕』


 相変わらず言葉はわからない…どんな目的でこの森の、コボルトのテリトリーを害するのかは知らないが、今はコボルトたちを助けると決めたんだ…ええいままよ!迷ってられるか!


 [八腕組手]を使おうと思うと、[縄抜け]を使ったときと同じようにスルスルと体が動いた。

 相手の手を掴んだかと思えば、スルリスルリと俺の手足が相手の身体を這っていき、蛇が相手を絞め殺すがごとく完全な拘束が決まった。

 相手も暴れだし、なんとか抜け出そうとしているのが肌から伝わってくるが、締め上げが完璧すぎて何一つ抵抗を許さない、身体に力を込めていることは何となく分かるが、ピクリとも動かせないでいる。


「…あ、ヤバイ…!」


 …そして、相手の身体がガクガクと震え、口から泡を吹き出し始めた。

 首、両肩、両腕、両足、腰、人間が重心を移動するために使用するすべての関節がガッチリと締め上げられ…もちろん首も絞め上げているのだから、当然のごとく呼吸は止まる。

 ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!殺すのはまずい、無力化だけでいいんだ!!


 焦った俺は技を解除してしまった。

 狩人の男は技が外れるとゴロゴロと泥土の上を転がり、苦しそうに嗚咽している。


『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕』


 息を整えてから、なにか大きな声を上げた後、ナイフを持ってこちらに構えてきた。

 周囲からこちらに向かって何かが迫ってくる音がする。

 まずい、仲間を呼ばれたんだ…。


 一応どんなものなのか予想はしていたが、まさか[八腕組手]がこれほど殺意の高い絞め技だとは思いもしなかった、身動きをできなくする程度でよかったのに、もう少し締め続けていたら殺してしまいそうだった。

 殺さずに済んだと安堵するものの、今度はナイフを構えられてこっちが殺されるんじゃないかという番だ。

 落ち着け、落ち着け…無力化攻撃は他にもある。

 [嘆きの拳]か、[悦びの拳]だ、反撃の意志が強いほど効果が高まるとあったのだから、むしろ今の状況はうってつけかもしれない。


 まずは[嘆きの拳]を試す。

 これも使おうと思えばどうやって身体を動かせば良いのかがわかる…ぬるりと身体が動き、俺の手が自分の意思を持って動く生き物であるかのように、相手に目掛けて突き動いた。

 ドンッ。と、相撲の張り手でもするかのように相手の身体に手が打たれる。

 相手は一瞬苦しそうな顔をした後、至近距離まで迫った俺にナイフを突き立てようとする。

 だが振りかざされたナイフは振り抜かれることなくその手からこぼれ落ち、男はその場でいきなり四つん這いになったかと思うと、突然嘔吐し始めた。


『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕』


 顔を上げて何かを話しながらこちらを睨んできたかと思うとまたすぐに嘔吐し、こちらを伺おうとしてはまた嘔吐し、何かを喋ろうとしたらまた嘔吐し、もはや顔をクシャクシャにして泣き始めたというところで泣きながら嘔吐した。

 胃の中身が全部逆流して飛び出してきたと思える量の嘔吐を続けたというのに、いまだに酸っぱい臭いの液がボダボダと口から溢れだし、号泣しながら吐き出して、止まって、吐き出して、止まって…ということを繰り返し続けた。


 そして程なくして、男は衰弱しきってしまい、ついにはゲロの海に倒れ伏した。


 なんだよこの特技は!?効果が恐ろしすぎるだろ!!使ったこっちの方が気分悪いわこんなの!!

 [嘆きの拳]の名前の由来って、使ったこっちが「あぁ、使ってしまった…」って嘆くからってことか!?

 そんなふざけた特技があるか!?…いや、そういやまだ俺が使った特技の中でまともだと思えたものって、もしかして一つもないんじゃないか…?

 割と便利だと感じている[チャクラ]は、便利だがその効果が凄まじすぎる…[爆熱闘魂]を使ったときのことを思えば何かの反動があってもおかしくはないし、なんか便利そうだなぁ~と感じる特技は、その分だけのデメリットと言うか、なにか含みのある部分が残されているんじゃないだろうか。

 いや、[八腕組手]や[嘆きの拳]は、実際には自分に対してなにかダメージがあったわけじゃない、ただ俺の予想を尽く超える形で効果が発揮されているだけだ。


 しかし、これでなんとなくわかった、やはり特技の名前と現れる効果にはしっかり関連性がある。

 [爆熱闘魂]は全身を凄まじい熱が蝕んだ、[八腕組手]は八ヶ所の関節を完璧に締め上げる技で、[嘆きの拳]は相手を地に伏せさせて立つことを許さなくなる…「嘆いているようなポーズ」を取らせて無力化するということだろう。

 ならば、[悦びの拳]なら!

 「よろこび」というくらいなのだから、相手に満足感を与えるとか、それっぽいポーズを取らせるとか、何なら笑顔にすることで無力化するとか…そういう効果なのかもしれない…!!


『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕』


 …しまった、さっさとここから離れて、隠れて様子をうかがっておくべきだった。

 おそらくこの狩人の男の仲間だったのであろう人間たちが、この場に集ってきてしまった。

 合流してきた人間の数は三人…相手はこちらの様子をうかがっており、すぐに攻撃してくる気配はない。

 チャンスだ…すぐさま[鑑定眼]を使い、相手の情報を確かめる。


 人間の重騎士の男、ザボック・グリンエッド。

 使用する特技は[愛国の誇り][重突撃][冷ややかな挑発][盾殴打][強行前進][猛将の指揮]、…[猛将の指揮]は味方の戦意を高揚させて攻撃能力を強化する特技か…その他にも豊富な攻撃手段が揃っており、かなり厄介だと感じる。

 もうひとりは人間の衛生騎士の女、ポーラ・トラキア。

 使用する特技は[盾殴打][重突撃][状態看破][観察眼][愛の微笑み]、…怪我や病気の状態を見抜く[状態看破]と、使用した相手の治癒力を高めることがある[愛の微笑み]…衛生騎士というのは、つまり回復役か、すぐさま怪我が回復するような特技を持っているわけじゃないので、今は気にしなくても良いかもしれない。

 三人目は人間の戦士の男、グレイ・ダン。

 使用する特技は[二連斬撃][両手持ち][跳躍][尽きぬ手札][獣の覇気][鉄拳]、…[獣の覇気]は[龍の闘気]のさらに下位互換ともいえる技で身体能力と自己治癒力を強化する、[尽きぬ手札]は戦闘の最中に違う武器に取り替えてすぐさま攻撃に転じることができるという特技らしい…よく見れば腰や腿、脇の下や背面などの様々な場所にそれぞれ異なる武器を携えている、それらを持ち替えて戦うということなのだろう。最悪素手でも[鉄拳]という特技によって素手の攻撃能力が向上しているので本当にどんな場面でも攻撃に転じる事ができるというわけだ。


 …当たり前のように、使おうと思えば彼らの持つ全ての特技が自分でも使用できる。

 [鑑定眼]は相手の習得している特技のことはわかっても、その特技についての詳細は自分がその特技を持っているのかどうか確認して初めて確認できる。

 ということは、[鑑定眼]ではその特技の詳細までは見抜けていないということだろう、あくまでどんな特技を使用できるのか、どんな名前で歳はいくつで種族は何で職業はどうで言語はどういったものを扱うのか、そういうのがわかるだけってことか…いや、そこまでわかるなら十分凄いんだけどな。


『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕』

『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕』


 なにか話をしているが、その間もこちらに近づいてくる気配もなければ、攻撃してくる気配もない…。

 三対一の状況は、流石にまずいんじゃないだろうか…今ならすぐに攻撃してしまえば一人沈めて、二対一の状況に持ち込めそうだけど、どうするべきだろうか…。

 無力化するなら、攻撃能力が高そうな男二人のどちらかを真っ先に沈めておきたい…あと、女性にいきなり殴りかかるのはなんとなく嫌だ。

 少しすると、衛生騎士の女が倒れ伏した狩人に近づき、おそらく状態を調べているのだろう…観察と触診を始めた。

 少し身体を動かすと、男の口からドロリとした酸っぱい臭いのしそうな粘液が零れ落ちた。

 意識はなさそうだが、ちょっとしたことで口から液体を吐き出そうとして、そのたびに身体がビクンビクンと跳ねているのを見るとげんなりする…やはり、この技は封印したほうが良さそうだな…。


『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕』


 女性が鬼気迫る顔でなにか話したかと思うと、その場で応急処置のようなことをし始めた。

 それを聞いた男二人の様子はと言うと、突如として険しい顔になり、あたりを警戒し始めた。

 何かの攻撃を受けてこうなったということがわかったのかもしれない、だがそれを行ったのが俺だということにはまだ気付いていない様子だ。


『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕』


 男のうちの一人、戦士のグレイがこちらへ声をかけながら近寄ってくる。

 まずい…まだ彼らの言葉がわからない。

 どうする、ズーラ語で返事をしても大丈夫なのか?

 いや、ズーラ語を使ったら、コボルトの仲間だと思われて警戒されてしまうかもしれない。

 それなら、普通に日本語で話せば良いんじゃないだろうか、どうせどちらの言語を使うにせよ言葉が通じることはないだろうし、それなら日本語の方なら首をかしげられる程度で済むかもしれない。

 そろそろ黙り続けるのも不自然だ…意を決して、俺は日本語で返事をすることにした。


「…あ~、すみません…その、言葉がわからないっていうか…俺の言ってること、わかったりしますか…?」


 [観察眼]のおかげか、相手が一瞬で武器を握るために手を伸ばそうとしたのが見えた。

 攻撃に転じる速度があまりにも速い…言葉が通じないという理由だけで、一瞬で俺に対する警戒を最大まで引き上げたと言った様子だ。

 武器を握り、そのままこちらに抜き放とうとしてくる。

 間違いない、これは脅しとかではなく、本当に攻撃しようとしている。

 迷っている暇はない、やられる前に無力化だ…!


 [悦びの拳]を使う。

 俺の身体はまるで俺のものではなくなったかのように動き、相手の体の様々な部位を撫でるように触れた。


『✕✕✕、…✕✕✕✕✕ーーーーーー!!!!』

 

 相手の身体が文字通り「飛び跳ねた」。

 俺の攻撃で吹き飛んだわけじゃない、何故だかわからないが相手の身体が突然バネのように跳ね上がったのだ。

 そのまま仰向けに倒れたかと思うと、水揚げされた魚のようにビッタンビッタンと跳ねまくり、ついに白目をむいて気を失ってしまった。

 なるほど、嘔吐しなかっただけでほとんど[嘆きの拳]と同じような状態にするということか…。

 だが、これがどうして「よろこび」なんだ?

 しかし、その意味を考えている暇はない、残った二人に目を向ければ、完全にこちらを敵とみなしたように警戒を強めている。


『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕!!!!』


 重騎士の男が大きな声で何かを叫んだかと思えば、すぐさまガサガサとこちらへ何かの気配が近づいてくるのがわかった。

 更に仲間を呼ばれたのだ、これ以上は本当にまずい…!

 急いで無力化するために、まずはこの重騎士の男に[悦びの拳]を放つ。

 全身を重厚な鎧に囲まれているが、首周りや手首などの関節部位は、流石に金属で覆うことは難しいようで、布一枚隔てて皮膚の感触のようなものを感じた。

 [悦びの拳]はその部位を的確になで上げると、


『✕✕✕、✕✕✕✕……✕、✕✕✕✕✕✕✕ーーーーーー!?』


 まもなくこちらの男もなにかの叫び声を上げ、その場に崩れ落ちた。


『✕✕✕✕✕!? …✕、✕✕✕✕…!』


 衛生騎士の女性が先端に刺々しい重りのついた棒…メイスというのだろうか、それをこちらに振りかぶる。

 大丈夫、多分この[悦びの拳]に危険はない、白目をむいて気絶するくらいで済む…だから、ごめんなさい!

 俺は容赦なく、衛生騎士の女にも[悦びの拳]を放った。


『✕、✕、✕、……✕✕✕✕✕✕✕ーーーーーー!!』


 衛生騎士の女は振りかぶったままに武器を手放し、空いた両手で胸と下腹部を抑えてビックンビックンと跳ね上がりし、ほどなくして白目を剥いて倒れた。

 ピチャピチャという異音がするのでよく見てみると、どうやら気を失ったと同時に漏らしてしまった様子だった。

 ……本当にごめんなさい。


 ガサガサという音がこちらに集まってくる。

 これ以上ここにとどまるのはまずい、俺はガラのいるであろう方角を目指し、遭遇した人間たちには今度は[鑑定眼]を使ったり様子をうかがったりということをすることもなく、ひたすら出会い頭に[悦びの拳]で無力化していった。

 いやぁ、しかしこれは便利だ。

 ただ気絶させるだけだし、怪我もさせないというのだから、今後は積極的に使っていいだろう。

 俺は珍しくまともな特技を使用できたことで少し安堵した、安心感を持って使用できるというのはやはり良いものだ、うんうん。


・・・・・・・・・・


「何をし、…ッグアァアアーーーーーー!!!!」


「えっ?」


「ダン!?」


 えっ、えっ、なに、どうしたの……突然叫び声を上げて、ダンがのけぞり倒れた。

 「アヒッ、オフッ、オッホォォォォ」というなんだか聞いちゃいけないような声を上げながらビクビクと跳ねまくっている。

 まさかと思って股間の方に目線を移すと、明らかに泥じゃない何かが布地に染み出していた…え、嘘、まさか…嘘でしょ?


「気をつけろトラキア!! 敵だ!!」


「はっ、えっ…は、はい?…えええっ!?」


 敵!?え、何をしたの、何をされたの、なんで…ええええ!?


「第六班・第七班・第八班は至急参集!!!!」


 隊長が物凄い剣幕で目の前の人間を注視しながら声を張り上げる。

 さっきまで飛空艇の墜落事故被害者の一人なんじゃないかと話していたのに、いきなり敵認定で、ダンが凄いことになって、っていうか明らかに非武装の人間なのに武器とか構えて良いのかなって…わ、私はどうしたら良いの!?


「何だ、こいつ速……オッ、ワァアアアアアーーーーーー!?」


「グリンエッド隊長!? …た、隊長がやられた…!」


 迷っている間に一瞬で隊長がやられてしまった…嘘でしょ、本当に敵!?

 なんなのこの人、なんで……え、ちょ、ちょっとまって、まさかソレを私にもするつもりなの!?

 い、嫌!!絶対に嫌!!わ、わ、私、嫁入り前で、そういう経験もないのに、こんなの…絶対に嫌ぁ!!


 私はもうやぶれかぶれでハンドメイスを振り上げた。

 しかしそんなものは無駄だとでも言わんばかりに、手に持った武器を振り上げている間に、相手の正体不明の攻撃が私の身体に衝撃を与えた。


 触れられた部分が熱い、すぐに視界がバチバチと光り輝き、頭の中が光で満たされていく。

 あ、あ、あ、あ、…………あっ。


『あ、い、っ、……イヤァアアアアアーーーーーー!!』


 ……す………ご……………い…。


・・・・・・・・・・




◆キャラクター紹介

『ポーラ・トラキア』

種族は人間、成人済みだがまだまだ若い年頃の女性。

帝国騎士団第三軍所属の衛生騎士、遠征では衛生管理が部隊の士気に著しく影響を与えるため、戦闘力はさほど高くなくとも衛生士が騎士の叙任を得て軍団員となることがある。

ポーラは同期の中ではとくに賢く、さらにはその目の良さを存分に買われ、見事に騎士の叙任を得ることとなった。

しかし、騎士に選ばれると元が衛生士であろうとも厳しい訓練に加わらなければならず、元々は女性らしい体型をしていたのだが、最近は色んな所に筋肉がついてしまい「私、結婚とかできるのかな…」と悩むことが多くなった。

根は真面目で仕事熱心で献身的、素朴な容姿ながらも柔和な笑顔が愛らしく、軍団内では密かにアイドル的存在として扱われている。

軍団内の皆は怪我や病気になったらすぐに報告しに来てくれるので「衛生管理がしっかりしてるとても良い職場」だとポーラは認識しているが、実際には「ポーラに治してもらうために他のどこをも頼らずに怪我や病気を抱えてポーラのもとへ駆けつける」という状況になっていることを彼女は知らない。

素敵な結婚を夢見ていたのだが、とある「すごい」事件がきっかけでもう夢どころじゃないと途方に暮れるようになってしまう。

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