第六十三話 侵入者?
―――???視点
なぜこうなったのだろう
いつものような平和な日々、みんなが笑顔でただただ幸せに日常を謳歌するはずだった。
―――あいつが来るまでは
「我が名は”魔公爵ディラン”誇り高き上位悪魔である。慈悲深い私がお前たちに選択肢を与えてやろう。服従か死かどちらか好きな方を選べ。」
突如として私たちの暮らす村に現れた魔公爵ディランと名乗る魔族が現れた。
しかも、服従をするか、しなければ殺すといってきたのだ。
当然村のみんなは困惑した。
「あまり我を待たせると機嫌を損ねるぞ?早く選べ。だが、そうだな…この村の長はいるか?」
「は、はい。今から呼んできます!」
と村の若者が返事するとディランはつまらなそうに”早くいけ”と手を振る
程なくして先ほどの若者に連れられて、村長が現れた。
「魔公爵ディラン様お待たせして申し訳ありません。私がこの村の村長です。」
「やっと来たか。まぁいい。それでお前はどちらを選ぶ?服従か死か」
「それなのですが、皆と話し合う時間をいただけませんか?」
「ほぅ、これ以上我を待たせると?」
というと機嫌を悪くしたのか、表情が歪む。が、それだけでなく圧倒的な威圧がディランから放たれる。
上位悪魔というに相応しいものだった。
「申し訳ありませんが、魔公爵ディラン様に服従するように皆を説得する時間をいただけないでしょうか?必ず村の者たちを説得しますので」
「ふん、わかった。だが、あまり待たせるなよ。」
「はは!みんな集会場に集まってくれ」
村長の呼びかけにより村の者全員が集会場に集まった。
この村は全員で300人程と大きめな村でそれに合わせて、集会場もその人数に合わせてかなり大きく、この村一番の大きな建物だ。
いつもは和気あいあいとした風景も今は見る影もなく、皆が難しい表情をしている。
「村長、本当にあいつに服従するのか?」
村で一番の戦士であるガゲツが村長に尋ねる。
皆もそれが気になっていたのか村長の答えを静かに待っている。
「本当なわけなかろう?」
村長の答えに少しばかり弛緩した雰囲気になったが・・
「じゃが、服従しなければ我々が殺されるのは間違いなかろうの」
その言葉に凍り付いたように皆の表情がひきつったように固まる
「正直言ってあ奴に勝つ可能性は0に等しい。例えこの村全員でかかったとしてもだ。ガゲツ、お主も感じたじゃろう?あ奴の圧倒的な強さに」
「・・・あぁ。俺では勝てんな」
『っっっっ!!!』
ガゲツが勝ち目がないのを認めたことで皆が驚くとともに絶望感に近いものを感じる。
ガゲツはこの村の戦士頭であり、冒険者ランクであればAランクに匹敵する程の人物だ。
「皆に言っておこう奴は恐らく進化種じゃ。強さで言ったらそうじゃのう・・SSランクに至っておるじゃろうな。ガゲツなどでは圧倒されるのが目に見えておろうな。」
「・・・じゃあ、降るのか?」
「魔族に降ったとて、いつもの生活が送れるかというと無理じゃろうな。儂らなど奴隷のようにこき使われるだけじゃて」
『・・・・・・』
絶望的な状況であることを理解したのだろう、皆沈痛な面持ちでいる。
「そこでじゃ、皆に提案がある。儂が時間を稼ぐから逃げてくれんか?」
「なっ!村長はどうするんだよ!まさか村長だけ奴隷になるっていうのか!?」
「それに俺たちが逃げたなんて知ったら村長は絶対殺されるぞ!」
「なぁに未来のないおいぼれが死ぬだけじゃ。お前たちのような未来をもつ者のためなら死ぬのだって惜しくはないわい」
「何言ってんだ村長!そんなこと受け入れられるわけが!」
「・・ガゲツお主ならわかってくれるな?」
「っ!・・・わかった」
「なっガゲツ!村長が死ん---」
「村長は俺たちを生かすために犠牲になると決心したんだぞ!お前たちは村長の覚悟に泥を塗るつもりか!」
『っっ!』
ガゲツのその声は大きかった。だが、握ったこぶしは震えていて、目は潤んでいた。それがガゲツにとってどれ程のものであるかが容易に推し量ることができる
「お前たちの気持ちはとてもうれしい。じゃが分かってくれ。」
優しくも覚悟を決めた声にもはやなにも言えなかった。
が、まるで今の暗い雰囲気には似合わないように明るい声が響く
「村長や、老いぼれならここにもいるぞい」
「そうじゃそうじゃ、わしらもあんたに付き合うぞい」
「水臭いこと言うんじゃねえよ村長。わしらもこの子たちのためだったら、こんな老いぼれの命なんて惜しくはないぞい」
「なんじゃなんじゃ、お主ら儂が格好つけようとしてるときに」
「あんたばかり格好つけてずるいぞい。儂らにも格好つけさせい!」
数人の老人が喧しくも明るくこれから犠牲になるというなのにまるで世間話しているかのようだった。
「はぁ、まぁよいわ。物好きな奴らじゃのう。さて、ガゲツ。お主を見込んで頼みがある。これから儂たちが命をかけて時間を稼ぐ。その時には、お前が長となりなるべく多くの村人を安全なところに避難させよ。」
「わかったぜ、村長!おい、お前ら直ぐに非難するぞ!荷物は俺たちの作ったアイテムボックスに入っているものだけでいい。それを回収したら直ぐに出発だ!」
『おう!』
準備はすぐに終わり、この村に残る人たちとの最後の別れを済ませ。直ぐに出発した。
「お前たち行くぞ!先頭はデゲン、お前に任せる」
「了解!じゃあ俺の後についてきてくれ。」
彼らの中では珍しい盗賊系統のスキルをもち、狩人として仕事をしていたデゲンを先頭に出発する。
なるべく危険を避けながらの旅ではあったが日が過ぎるごとに1人2人と徐々に減っていった。
特にガゲツが率いた戦士の損耗は激しかった。
彼らの多くは村人であるため、戦いを専門とした兵士の重要性はとても高く、その分戦闘の際の役割の大半を担っている。
だが、当然戦士だから無敵なわけではない。
危険は大きく、特にガゲツにしか手が負えない、もしくは、ガゲツですら逃げるしかない魔物もこのあたりには何種かいるため、そんな魔物と会ってしまったらもうアウトだ。
だからこそ、デゲンの感知能力がこの旅の要であるのだが、それでも限界があり、デゲン以外の盗賊がいないということも問題であった。
「ハァッハァッデゲン!この近くに休めるところはあるか!?」
「っっ!あそこだ!あそこに洞窟がある!」
「わかった!みんな踏ん張れ!もう少し踏ん張ってくれ!」
『おお!!』
気力を振り絞って返事をし、なんとか洞窟にたどり着いた。
「ハァハァ、今は何人残っている!?」
「ざっと200ちょっとってところか」
「そうか・・だいぶ減ってしまったな。わかった。みんな!ここで一夜を明かそ――」
「ようこそ、侵入者諸君って傷だらけじゃないか!それにドワーフか初めて見たね」
のんきな声がした方に向くと絶世の美男子がいた。
「あ、あんたは・・」
「僕の名前はハクト。ってその前に確認するけど、君たちは侵入者のようには見えないけど、敵対するつもりはあるかい?それとも避難してきたのかな?」
そうこの洞窟はダンジョン、それもハクトのダンジョンであった。
明日も投稿しますのでこれからもこの作品をよろしくお願いします!