第六十一話ハクトの特異性
「ちょっと疑問なんだけど僕はスキル【一心同体】をするとランクが上がるよね?これみたいに自身のランクを上げるスキルがあるってことは種族の限界を越えることができるんじゃないかな?それだと、ヒト族でいえばSSランクに到達している方達がこんなにも少ないことはどうしてなのかな?」
「ハクト様は少し勘違いをしていますね」
「ありゃ?そうなの?」
「まず、種族の限界を越えることができることは進化以外はありえません。つまり、どんなに強い効果があるスキルでも種族の限界を越えるほどの強化をすることはできません。そのため、ヒト族を例にするとSSランク以上の格上との戦闘から勝利をするという条件は必ずヒト側は弱者であるということです。さらに、一対一であるというヒトの強みである数が生かせないことも拍車をかけます。ですから、前例がこれ程までに少ないのです。」
「それを聞くと前例が4件もあることが多く見えるし、むしろ、奇跡に等しいんだね」
「その通りです。加えるとランクを上げる程の効果があるスキルというものもかなり希少なものなんです。一部の固有スキルや極一部のレアスキルが該当しますが、それほどに希少なんです。ハクト様のように【一心同体】と【白銀色】という二つのランクを上げる程のスキルを持っているということは普通はありえません。」
「そういえばトゥーレの【雷身】もかなり強力な強化をするスキルだけどランクを上げる程ではなかったね。なるほどなるほど…ん?そういえば聞きたいんだけど僕はダンジョンマスターが種族ではあるけどヒト族に近い姿をしているよね?そして、僕が進化をするには、ヒト族とダンジョンマスターのどちらの種族の進化条件も満たさなきゃいけない。でも、僕はSSランク以上と闘ったことはないけど、ヒト族の種族の限界を越えてスキルを使っているとしてもSSランクに至ることができる。これは、どういうことなのかな?」
「これは、ダンジョンマスターの特性によるものです。」
「特性?」
「はい。まず、ダンジョンマスターの姿は千差万別です。ハクト様のようにヒトの姿であったり、異形の者、例えば魔物やアンデッド、果ては虫の姿をとっていたりします。」
「それは、前に説明してもらったね。その姿をとっている種族ごとに特徴があるって話だけど。」
「ええ、その通りです。ですが、その特徴というものが今回深く関わってきます。」
「ふむふむ、それは?」
「その前に言っておくべきことがあります。実は、ヒト族のダンジョンマスターというものは本来は最弱の存在なのです。」
「え?」
「まず、ダンジョンマスターには初期能力として、種族ごとに確定で得られるものがあります。スキルではないのですが、共通しているもののなかで、姿をとっている同種族の召還コストがある程度低く設定されているなどです。なので、オークの姿をとっているダンジョンマスターはオーク系をゴブリン系のダンジョンマスターはゴブリン系の魔物を召還する際にコストを低くすることができるんです。ですが、ヒト族のダンジョンマスターの場合はこれは発揮されません。」
「それは…ああ!そっか、なるほどね。ダンジョンモンスターとしてヒト族は召還できないんだっけ。」
「はい、その通りです。ヒト族であると、召還が不可能となるため、この能力は発揮されません。付け加えると、エルフや獣人といったヒトの近親種の亜人種も召還することはできません。ですが、亜人がダンジョンマスターになった例はありませんのでこれはヒトののみのデメリットといえます。」
「そうだったんだね」
「他の最弱と呼ばれる理由としては、初期戦闘力の低さですね。本来、ヒトのダンジョンマスターは最低ランクのEランクとなることが大半で強くてもDランクがせいぜいです。」
「ってことは、シルフィアが初めて僕のランクを見た時にあんなに驚いたのは…」
「Bランクというのはあまりに常識はずれだったということです。ダンジョンマスターに強さは必要なのか?という疑問は良くありますが、序盤に自身を戦闘力として数えられることは良い手段の一つになります。ある程度安定してきた中堅どころのダンジョンマスターであれば必要どころは少なくなってきますが。」
「なるほどね。他にデメリットはあるのかな?」
「疲労を感じる、睡眠をとる必要がある、そして、有用なスキルを初期に得ている確率が低いなどでしょうか。」
「確かに疲れを感じるし、睡眠もとってるね。そこは、ヒトと変わらないんだね。なんか、他のヒトのダンジョンマスターと比べて僕は恵まれ過ぎてないかな?なんか、申し訳なく思っちゃうね」
「確かに、ハクト様は初期の頃からお強くあられました。ですが、それに奢らず、努力を続けております。英雄になるということは茨の道です。それでも、なおひたむきに進んでいるというハクト様のあり方は他のダンジョンマスターにはない特別なものです。ハクト様が恵まれていると感じていることこそ、ハクト様が素晴らしいダンジョンマスターであることの証です。」
「ありがとう、シルフィア。だけど、シルフィアって隙あるごとに僕を誉めるね。正直こそばゆい感じがするよ」
「おや?お嫌いでしたか?」
「全然そんなことはないよ。でも、ちょっと恥ずかしいというか…」
「ハクト様は素晴らしい方ということをお伝えしてるのみです。わかっていただけないのなら小一時間ハクト様の良いところを話しても…」
「わかった!わかったから!っと話を戻すけど、ヒトのダンジョンマスターが弱いことはわかったよ。だけど、メリットはないのかな?」
「メリットはあります。一つはスキルの取得の制限の緩和ですね」
「制限?」
「ハクト様は剣術系のスキルを得て、最終的に【剣神】スキルを得ましたね?その時に違和感を感じませんでしたか?」
「違和感?うーん…DPを使ってとったことや、実際にスキルをとったときも違和感はなかったし…あ!そういえば、【剣聖】スキルは【剣術】【剣技】スキルをとってから取得可能になったし、【剣神】スキルは【剣聖】スキルをとってから取得可能になったね。これが制限なのかな?」
「その通りです。実はこのユグドラシルでは、スキルを取得する際には制限が設けられています。条件と言い換えてもいいでしょう。ハクト様の例だと【剣術】、【剣技】スキルは【剣聖】スキルを得るための条件となっているということです。この場合、【剣術】、【剣技】スキルは基礎スキルとなり、【剣聖】スキルは上位スキルということになります。この世界では、上位スキルを得るためにはそれに関する基礎スキルを得ていることが条件の一つになっています。」
「なるほどね。ん?ところで、疑問だったんだけど、僕は【剣神】スキルという上位スキルをもってるよね?でも、【剣術】、【剣技】、【剣聖】スキルはステータス上から消えないよね?これは何故かな?」
「これも、ユグドラシルの法則ですね。本来は上位スキルの基礎となったスキルはステータス上から消えることはありません。ですが、固有スキルにはそれは適応されず、固有スキルのなかで基礎となったスキルはステータス上からは消えます。しかし、このケースはかなり稀なものです。」
「なるほどね。それで、制限の緩和ってどんなものなのかな?」
本っっ当にお待たせしました。
更新頻度を上げるといいながら全然投稿できなくてすみませんでした。
身内の不幸や体調不良になってしまったなどでずるずると執筆が進まず…
ですが、もう立ち直りました。
明日も投稿しますのでこの作品をよろしくお願いします。