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第五十九話ヒトの強さ

ヒトの強さとはなにか?

まず、ヒトはこのユグドラシルという世界で最も数の多い種族であるということが特徴といえる。

つまり、繁殖力と成長の安定性が他種族を圧倒しているのだ。

魔物ように多産な訳でもなく、番からは一度に一人だけだ。

では、なぜ圧倒しているのか?

それは、ヒトという種族の共同体という国家がある程度の安全を保証しているからだ。

そして、親子の親愛の情というものが魔物などの他の種族よりも深いことも一因といえる。

産まれた子は弱い存在であるが、それを守るために協力し合って育てていく。

ヒトは弱い種族であると言ったがだからこそ共同で生活をする。

それは、村であり、町であり、都市であり、国である。

このヒトは共同体、つまり、同族意識というものが比較的強い傾向がある。

もちろん、全てのヒトがそうとは言えないが、家族や友人などの親しい関係をもった者を大事に思うのは自然の摂理とも言える。

だが、この同族意識というものが1つの問題となる。

なぜなら、戦争が起きるからだ。

現在も、ユグドラシルでは、国家間の争いは起きている。

それには、様々な理由が付随しているが行き着く先はなにか?というと侵略者は自分達の国を更に豊かにしていくために、防衛側は自分達の国を守るために争う。

過去には、100年戦争と呼ばれる長い年月の戦争がユグドラシルでは起こった。

双方総力を挙げて決死に戦った。

それで残ったのはなにか?

甚大な兵力の損失、莫大な量の軍事費、農民を兵として徴兵したために生産力の多大なる欠如。

残ったものは目を覆いたくなるほどの損失ばかりであり、更にこの100年戦争が史上最悪の戦争と呼ばれる一端は決着がつかなかったということにある。

つまり、どちらも得をせず、ただただ、被害を被っただけという有り様だったのだ。

この100年戦争はどちらも当時は大国とうたわれていた2国の争いであったため決着がつき、どちらかが勝利すればこの世界最大の国となることは目に見えていた。

が、それがいけなかったのだろう。

この世界の最大の国家という言葉に魅せられてしまったのだ。

その結果双方国を維持することが困難になり分裂した。

この分裂も仕方なかったとはいえ、決して良い結果へとは繋がらなかった。

なにが起こったのかというと…


〝侵略〟だ。


強大な大国が誇った軍事力は今やみる影もなくなってしまったため、その土地を求めて他の国が侵略してきたのだ。

結果的に、得をしたのは、実際に戦った国ではなく、弱ったところを漁夫の利をした他の国家というなんとも救い用のない終局を迎えたため、この100年戦争は史上最悪の戦争と呼ばれている。

これは、為政者には一種の教訓として、語り継がれている。

つまり、このような失敗はするなということだ。

だが、今でもこのユグドラシルという世界では国同士で争っている。

もちろん、100年戦争のような規模の大きすぎる戦争は起こっていないがそれでも争いというものは決して遠いものじゃない。


さて、話が逸れてしまったが、ここで問題となるのは同族なのに争っているという点だ。

だが、この同族という言葉がなかなか定義しづらい。

もちろん、ヒトというくくりでみれば、ヒトであれば、皆同じ存在ではある。

だが、この世界では、そのような考えはあまり浸透していない。

というのも、同じ国の人々と違う国の人々は違うヒトである、つまり、同族ではないと考えるからだ。

これをおかしいと思う者は地球であればこそだ。

しかし、この世界では、仕方のない部分もある。

そもそも、国を跨ぐ存在というのがこの世界では希少なのだ。

村人は産まれた村で一生を過ごすというのも珍しいことではない。

そして、その村の中の世界しか知らないという者もまた、珍しいことではない。

近くの村ならまだしも、町や都市などに出たことがない、見たことすらない村人は決して少なくない。

そのため、多くを占める村人や農民からすれば、冒険者や商人、旅人などの広い世界を知るものというのは、なかなか珍しい存在なのだ。

何故そんなに狭い世界しか知らない者が多いのかというと一番に挙げられるのが旅や移動の危険性である。

ユグドラシルには魔物がいるのだ。

基本的に魔物はヒトを襲うため、それに抗う術を持たないものは旅などできるはずがない。

村人が魔物を倒すほど強くなればいいと思う人もいるかも知れないがそれは、かなり難しい。

まず、村人が全員が、才能を持っている、もしくは、厳しい訓練に耐えられる訳がないからだ。

そのため、自分が強くなれなければ旅の危険性というものがグッと上がる。

運良く、魔物に遭遇しなかったというケースも無いわけではないがかなり珍しい。

だが、自分が強くなければ旅は無理と言えるかといったらそうではない。

商人ならば誰でも行っていることではあるが冒険者を護衛として雇えばいいのだ。

冒険者は魔物との戦いの専門家であるため、冒険者がいれば旅や移動が安全になることは言うまでもないだろう。

しかし、もちろん問題もある。

まず、それにかかる費用だ。

冒険者を雇うのだからそれに見合った報酬を払わなければいけない。

ある程度の稼ぎのある商人なら問題はないだろうが、村人が直ぐに払うことのできる料金では決してない。

それに、冒険者は高ランクの者を雇えば安全性は更に上がるがそれに応じて料金も上がるためそれとの折り合いもつけなければいけない。

次に、安全性は確実ではないということだ。

冒険者がいるから安全というのは間違いではないが、忘れてはいけないのが冒険者を上回る強さをもった魔物もしくは、冒険者が対応できないほどの数で襲ってきた場合だ。

雇うに当たる費用を節約するために低いランクの冒険者を雇ったら魔物に襲われて、全滅したという話は商人のなかでは有名な話だ。

他にも問題はあるが村人はまず、費用の面の問題が重くのし掛かる。

というのも、村人が冒険者を雇えるほどの資金を稼げるかどうかということだ。

村は、当然国のものであるが、無数の村を国王が治めるということはなかなかに難しい。

そのため、国王に任じられた貴族が村を代わりに統治する。

貴族も無数にいるわけではないので、複数の村もしくは、町や都市を同時に統治することになるが、そこで、問題が生じる。

まず、貴族には自治権というものが存在する。

言わば、国家に反逆するといった犯罪をしなければある程度は自由に統治していいということだ。

もちろん、その見返りとして税を国王に納める必要があるがそれさえしてしまえば自治権は認められるのだ。

そして、この税を納めるということに問題がでてしまった。

過剰に村に税を課す貴族が一定数存在しているということだ。

まず、国に納める税金は法律で決められている。

しかし、一律いくらと決まっているわけではなく、村や町などの領地に応じてその税金が変わってくる。

法律で定められているのだから法外な値段ではない。少なくとも明日の生活の見通しがたたないような血も涙もないものではない。

それをある貴族は利用した。

つまり、法律以上の税金を課すことでその差額を自分の懐に入れてしまおうと思ったのだ。

これに対して、疑問に思う村人は少なくなかった。

それでも、そういうものかと無理やり納得してしまった。

何故か?

まず、法律を正しく知っているものがいなかったということ。

次に、貴族に歯向かうことは実質的な死を意味したこと。

この二つが大きな要因といえる。

村人の知識といえば、農作物の作り方や畑の耕しかたなどで、法律に対する知識などあるはずがない。

だから、ある貴族は嘘をついた。

「この税金は国によって定められた法律のもと課している」と

村人は信じてしまった。

というか、知らないのだから、信じるしかなかった。

そして、村人は払わなくていい料の税を払い、貴族は私腹を肥やす。

もちろん、そんな貴族にとって美味しいやり方を自分もやりたいと思った貴族は一定数いて、それが今でも続いている。

だが、これに反感をもった者もいないわけではなかった。

実際に反乱を起こした村もある。

しかし、待っていたのは明るい未来ではなく、漆黒のようになにも明かりも見えない暗いものだった。

まず、反乱を起こした村はそれを制するために来た軍に鎮圧される。

農業を生業とした村人と戦闘を生業とした軍のどちらが上か?

言うまでもない、後者だ。

そして、村人は殺されるか、捕らえられるかの二つの道しかなかった。

捕らえられた者は一人残らず反乱罪として処理され、奴隷となり劣悪な環境で生活することを余儀なくされる。

これを聞いた村人は震え上がった。

だから、村人は今の生活を保つしか選択肢はなかった。

普通より悪くても、最悪よりはマシという考えで。

そのため、村人が冒険者を雇うほど稼げるかはその税金の額次第であり、それでも何年かは節約と貯金をする必要がある。

だからこそ、国内の移動すらも危険であるのに他の国のことは別世界と同義であった。

しかし、村によっては例外もある。

それは、戦争のための徴兵だ。

国が戦争を行うと決めると、もちろん、全員ではないが貴族も参戦するために徴兵を行う。

貴族は基本的に治めている領地から徴兵を行い、一定数集まったら戦いの場へと出発する。

この時に初めて安全な村の外への移動を経験した者も多い。

当然、戦争なのだからヒトの国であれば、ヒト同士で戦うことになる。

中には亜人種も参戦していることもあるが、やはり、ヒトの方が数は多い。


「殺さなければ殺される」という思考は戦場では当たり前だ。

そして、この瞬間に同族としてでなく、敵として認識をしてしまう。

自分達にも家族や仲間などの大切な人がいるように敵にも大切な人がいると分かっている、それでも…


……そう、彼らはもう同族ではない、倒すべき敵なのだから


結論から言うと、同族意識というものの範囲は決して広くはない。

そして、それは人それぞれの認識によっていくらでも変わってくる。

それでも、国は国民がいて初めて成り立つものなのだから、国民を守るために存在する。

国は親、国民はその子供という関係といえるかもしれない。

少なくとも、同じ場所で同じ生活をしている者達を同族とみるのはおかしなことではない。

親は子を守るというのは当たり前のことだ。

子はその影響を受け、今度は自分が守る。

それは、例え狭い世界でも、変わらない。


同族意識は一種の〝絆〟と言えるのかもしれない。

少なくとも、その同族に対しての絆は他の種族よりも強いことは確かなことだ。

これがヒトが何代に渡って備えた価値観であると言えるだろう。

すみません、会話のないただの説明回となってしまいました。

次回もこんな形になります。

明日も投稿しますのでこれからもこの作品をよろしくお願いします!

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