第五十四話 神との対話2
『さて、次にあなたの武器、神剣を覚醒させましょう。ハクト、シルフィア、スキルを発動して…おや?』
神様が言い終わる前に、神剣がハクトの前にあらわれる
「あれ?まだ『一心同体』を使ってないけど…シルフィアも姿があるし…」
『ふふふ、そんなにハクトに入れ込んでいるんですね?さて、ハクト、あなたはこの剣に意識があるのを知っていますか?』
「意識…いえ、知りません」
『この神剣はインテリジェンスウェポンという意識のある武器になります。ですが、あなたはその意識に気づかなかったということはやはり、名付けを行う必要がありますね。あなたは、魔物に名付けをしましたね?それと同じようにこの剣にも名前をつけてみなさい』
「わかりました。ふむ、なにがいいかな…」
神剣はロングソードを少し長くしたような形をしていて、白く光輝いている。これは、昼も夜も関係ない。そして、この剣はとても美しく価値は想像もつかない程だ。まさに、神剣と呼ぶにふさわしい。
「ううん…よし!決めた!神剣、君の名前は…『白夜』だ!」
ハクトが神剣に白夜と名付けを行うと神剣がこの空間全てを飲み込むばかりに光輝く
『おめでとう、神剣の名付けは成功しました。神剣改め白夜…とても良い名前です。これにてハクトは白夜に認められました。』
「認められた…」
『はい。これで、あなたはスキル【一心同体】を使わなくてもこの剣を携帯することができます。それに…随分白夜に好かれているのですね。』
「好かれている?」
『この剣は神剣、剣の中でも最高峰の剣。故にその主を見定めます。そんな剣が早く名前をつけてもらいたいと。早く、真の持ち主として認めたいと言う気持ちが凄く伝わってきます。ハクト、白夜に話しかけてみなさい。それでこの気持ちもわかるでしょう。』
「はい。白夜、僕は君の…っ!!!」
剣を握りハクトは話しかけようとしたときに
また、白夜が光輝く!
目を開けることが困難な程の光の輝きだ
だが、光っていたのは数秒程度。
だが、驚くべき変化があった
そこにあったのは…
「こ、子供?」
そう、子供であった。それもまだ12歳程の女の子。
『おや、もうすでに人化ができるのですか。』
「人化?それはいったい…」
と、ハクトが呟いた瞬間
「お兄ぃぃぃいちゃぁぁああん!!!!」
「ぐふぅ!」
白夜??らしき子供がハクトの腹に飛び込んでくる
ハクトが思わず呻き声をあげるほどの勢いで
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ぃぃぃいちゃぁぁああん!!」
「ハクト様!?大丈夫ですか!?」
『白夜、嬉しいのはわかりますがハクトとシルフィアが困ってますよ』
「あ!ごめんなさい。でも、やっとお兄ちゃんと話せるから舞い上がっちゃって。」
「白夜…白夜なのかい?」
「うん!そうだよ!私は白夜!」
『ハクト、今の彼女は人の姿をとっていますが紛れもなくあなたの剣である白夜です』
「な、なるほど…では、人化というのは…」
『ええ、このスキル【人化】は魔物もしくはインテリジェンスアイテムやインテリジェンスウェポンに代表される意識のある物質が希にもつものです。』
「白夜はもともとこのスキルをもっていたのか?」
「ううん、名前をつけてもらったからだよ!私にはスキルはあれしかなかったし」
「あれ?」
『白夜は神剣ですが、未だに未発達であり未完成な代物です。そして、そのスキルというのが…』
「【魔斬り】…ですね?」
『その通りです。よく、わかりましたね』
「初めて冒険者と闘ったときに魔法を斬ることができたので、それでは、と」
そう、魔法は斬ることができないというのがこの世界の法則だ
だが、その常識を変えるのが【魔斬り】
ハクトがまだ、【魔斬り】のスキルをもっていなかったのに魔法を斬ることができたのはこういうからくりだったのだ
「【魔斬り】を白夜がもっていたら、スキルとして、覚える必要はなかったのでしょうか?」
『ハクト、あなたは【魔斬り】をスキルとして覚えたのは決して無駄なことではありません。なぜなら、【魔斬り】はとても習熟が難しいものなのです。このスキルが伝説の勇者が編み出したものですが使いこなすのにおよそ10年ははかかっています』
「10年!?」
『それほどに使うのが難しいスキルということです。さらに、使いこなすといってもあなたたちのようなSランクの闘いに使用できるほどにはさらに5年以上は費やしています。お分かりですか?あなたは【魔斬り】を一週間程度で実戦に、それも、Sランク冒険者相手に使い、その魔法を斬りました。もちろん、完璧に使いこなしてはいなかったようですが、それでも異常と呼べるでしょう。この異常性は剣と肉体両方が【魔斬り】をもっていることがなし得た一種の奇跡です。』
「なるほど…白夜に助けられていたんだね。ありがとう、白夜」
ハクトが礼をいい、頭を撫でると白夜は尻尾があったら引きちぎらんほど振っていただろう、とても嬉しそうにしていた
『ハクト、あなたは正直私でも器がはかり知れません。【魔斬り】ひとつとっても。』
「それは、白夜とこのからだがあったからで…」
『いえ、それでは説明がつきません。確かに白夜は【魔斬り】のスキルをもっていて、その補助がありました。ですが、やはり習得してから実戦に使うには圧倒的に経験が足りません。そして、 私は確かにあなたに才能をその体に与えました。それでも、あまりにも強くなるのが早すぎます。これは、ダンジョンマスターの性質でも説明がつきません。おそらく、あなたの魂が原因でしょう』
「僕の…魂?」
『はい。あなたのからだとその魂の親和性が原因でしょうね。私は幸運ですね。本当に幸運でした。あなたを見つけることができて、そして、あなたがそれに応えてくれて。ああ、こんなときに人は神に感謝をするのでしょうね』
「それは…それは、光栄です。神様にこんなに感謝されるとは。ですが、まだ…」
『ええ、確かにまだ、私の存在は強くありません。私の全盛期程の力を取り戻すには時間がかかるでしょう。ですが…これもそう遠い未来ではないかもしれませんね』
「神様にこんなに期待されるとは…僕も捨てたもんじゃありませんね」
『ふふ、そんなに謙虚に振る舞う必要はありませんよ?シルフィアに白夜、ハクトにもっと自分の凄さに自覚をもたせてあげてくださいな』
『はい!!』
元気よく両者が応える
『さて、ハクト、シルフィアに白夜。申し訳ありませんがもうそろそろあなたたちと別れなければなりません。私の神としての力ではあともう少しが限界です。あなたが英雄になったときにまたお会いしましょう。最後にあなたにプレゼントです。』
神が指でハクトの額に触れる
【???神の加護を取得しました!】
『あなたの行く道に幸あらんことを』
神のその言葉を最後にこの空間から見覚えのある風景に変わる
「おや、戻ってきたみたいだね」
そう、ハクト達のダンジョンに戻ってきたのだ
「神様、待っていてください。きっと英雄になります。それが、あなたへの恩返しです」
神は何度かハクトへ礼をいっていたがこちらだって思っていないわけではない
むしろ、誰よりも感謝していた
信仰というには語弊があるが、それでも、ハクトにとって親同然である者に感謝しないわけがない。
「きっと、そして、またお会いしましょう。」
静かな呟きは確かな覚悟で紡がれた