第四十七話久しぶりの我が家(ダンジョン)
「さて、顔合わせも済んだし中へ入ろうか。自慢の我が家を見せてあげよう。っと、そういえばダリオンはダンジョン転移はできるんだっけ?」
「はい、問題なく」
ダンジョン転移とは、ダンジョンマスター及びダンジョンマスター代行が使える機能だ
スキルではなく機能だ
内容はダンジョン内に限りすきな場所に転移をすることができるというものだ
なお、魔力は使わないためいつでもすきなときにすきな場所に転移することができるというとんでも性能だ
だが、これには制限があり複数転移をする場合はダンジョンマスターまたはダンジョンマスター代行になにかしら触れなければならない
そのため、以前ケイルをダンジョンの最奥に招待という名の転移は、あれは転移トラップつまり罠を使ったためできたものだ
罠はなかなか種類が多く、その性能によって必要となるDPも変わるため一長一短だ
代表的なもので言えば毒や落とし穴などが挙げられる
ただし、ダンジョン内には仕掛けられる罠は二つ三つと設置するごとにDPがどんどん元の必要なDPに加算されていく仕様になっておりダンジョン内を罠だらけにすることが余程大きなダンジョンでないとできない
まぁハクトは得られるDPが多すぎるのであまり心配する必要がないのだが…
もちろん、ハクトも罠を設置しているが決して数が多いとはいえない。まだできて二ヶ月ほどのダンジョンからすれば多い部類に入るがあくまで多いというだけで得られるDPからすれば少ないといえるだろう
ダンジョンマスターは罠と配置するモンスターのバランスを考えることが非常に重要だ
罠を配置する利点は様々な効果のある罠で敵を殺すないし撹乱することも可能なことだ
ただし、だからといって罠ばっかり配置すればいいのかといわれればそうではない
ダンジョンへの侵入者は高ランクになればなるほど罠を解除するための盗賊系のスキル持ちをチームに入れている
そのため罠を解除される危険性があるためその分DPが無駄になってしまう
ならばモンスターばかりを配置すればいいのかといわれればこちらもそうではないといえるだろう
まずダンジョンの危険度は罠よりもモンスターの強さや数によって決まるといってもいい
先程も言ったとおり罠は解除できる。その侵入者が高ランクであるほど解除は容易だ
だからモンスターばっかりのダンジョンをつくったとしよう
よく考えてほしい
そんな明らかに危険性の高いダンジョンを放置することはできるか?
例えば低ランク冒険者であれば出来たばっかりのダンジョンでも撃退することは難しくはない
だがもし、これがギルドに低ランク冒険者では勝てないと判断されたダンジョンはそのままほっとかれることなどありえない
すみやかにCランクないしBランクのベテランや中堅どころの実力者のチームが派遣される
そうなってしまったらほとんどのダンジョンマスターは殺されてしまう。ダンジョンコアのみを破壊せずに人間に管理された、いわば冒険者のための訓練施設のようになってしまう
もちろん管理されているからといって命の危険が無いわけがなく死んでしまうものは少なくないのだが…
つまり、新米ダンジョンマスターは生き残ることが難しいということだ
そのためダンジョンマスターはまずは大人しく力を貯め、早くダンジョンを成長させ、人間、特に冒険者を相手にする場合は完璧に情報をギルドに流さないようにすることが理想的だ
もちろん、ダンジョンへの侵入者は人間だけではない
野生のモンスターや獣などが紛れ込むこともある
それを殺すことでDPを得ることができるため大半のダンジョンマスターはこれを最初のDP稼ぎとする
また、ダンジョンのモンスターと野生のモンスターがどちらが強いかといわれるとなかなか難しい問題だ
ただ同種同士だと若干ダンジョンモンスター有利となっているがあまり差はない
が、これにも例外があり野生のモンスターやダンジョンモンスターが武器を所持していると話は変わる
前に話した通り、DPで得られる武器は性能が良くないためよりよい武器を持たせるためにはダンジョンから出ないとなると冒険者や侵入者を殺すしかない
これは野生のモンスターも変わりはない
そして、武器を手にしたモンスターがスキルをもち、戦闘を重ねたものがより、高ランクのモンスターへと進化する
さらにはモンスターの集団をつくりやがて王になる
まさに人間にとっては最悪な状況といってもいい
それが伝説の魔王の誕生へと繋がっていく
あと、特例でモンスターのなかには誕生と共に武器をもっているモンスターもいる
それは生体武器といわれていて、自身の成長とともに武器の強さも変わるというものだ
例えばリビングアーマーやリビングデットアーマー、ノワールナイトは生体武器をもっている
シルフィアがこれらのモンスターを選んだ理由の一つがこれである
他にはアンデットであるため食事、休息の必要がないことがあげられる
生体武器もちはダンジョンマスターからしたら有用なモンスターといってもいい
ただし、その分必要となるDPが他の同ランクモンスター比べて高めとなっており数を揃えるのは難しい
さらに生体武器は確かに有用ではあるのだがやはり同ランクの鍛冶職人のつくる武器と比べると性能は劣ってしまう
そうは言っても武器をもっている者とそうでない者ではやはり差はでてくるため欠点とはいえないだろう
なかにはケイルやトゥーレのように武闘家であるものは武器をもたない、もしくは拳に小手を装備したり、鉤爪を装備するものなどがいる。武闘家の数は意外と多いためあまり珍しくはない
ただ、やはり剣や槍など有名である武器が多いことはそれをもつことの有用性が理解できるだろう
少し長く説明しすぎてしまった
「それでは転移するから僕かダリオンに触れてくれ」
『はい!』
みんなが転移できる状態であることを確認し、ダンジョン転移を実行する
すぐにさっきまでの入り口からダンジョンの最奥である花畑が目に飛び込んでくる
「わあぁぁぁああ!」
ユリィが思わず驚きと感嘆の歓声をあげる
エメラも驚いたような表情を浮かべている
「それじゃあ部屋に入ろうか、ついてきて」
ここ、ダンジョンの最奥はかなり広く作られている
花畑や野菜を作る畑、さらに大きめの家や林などがあり実に良い光景だ
家のドアを開けると黄金の小麦亭ほどではないがかなり広く、清潔でなかなか豪華なつくりとなっている
「ダリオン、頼んでおいた部屋はできてるかい?」
「はい、万事滞りなく」
「主様、前よりも家が大きくなっておりますね。それに部屋を新たにつくったのですか?」
「そう、DPに余裕があるからね。拡張したんだ。じゃあダリオン案内を頼むよ」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
ダリオンに案内され、進んでいると大きなドアが見えてくる
扉を開けるとゆうに30人は入れそうな大広間が見えてくる
「注文通り、いや、それ以上のつくりだね。ありがとう、ダリオン」
「我が主君のためならこれくらい造作もありません」
「ふふ、ありがとう、ダリオン。それじゃあ改めて…僕の名前はハクト。このダンジョンのダンジョンマスターだ!エメラ、ユリィにはここで言うのが初めてだね。驚いたかな?」
ユリィとエメラは驚いてはいるようだがそこまで大きくはない
「あれ?そんなに驚いてないね」
「それはその…ダリオンさんがダンジョンマスター代行って自分でいってますし、ダンジョン転移をなされたので正直、正体はある程度予想できたので…」
「これは、主君。申し訳ありません」
「気にすることはないよダリオン。まぁ驚いた反応をあまり見れなかったのは残念だけど別に気に病む必要はないよ。さて、みんなで自己紹介をまずしようかな。じゃあ次はシルフィアからだね」
次回、ハクトの仲間達の紹介と新たな眷属を登場させます!