第四十六話奴隷9
ボンゴレに案内されてシルフィア達のいる部屋へと案内される
「こちらがお連れの方達のいる部屋になります」
「ありがとう、ボンゴレ。っとエメラ、僕の大切な仲間たちと会うからね」
「は…い…ご主人様」
エメラは少し緊張したような雰囲気をしている
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ、皆優しい子達だからね。それじゃあ入ろうか」
扉を開けるといつもの仲間たちが談笑している光景が目に入る
そして、初めにシルフィアがこちらへ気づいた
「ハクト様!そちらが例の奴隷ですか?」
「そうだよ、彼女が新しい僕達の仲間だよ。彼女はエメラ、僕が名付けたんだ」
「そうですか、私はシルフィアといいます。よろしくお願いしますねエメラ」
「は…い、よろしく…お願い…します…シルフィア…様」
「この子は、ちょっとコミュニケーションが難しい子なんだけど良い子だから、嫌いにならないでくれ」
「ええ、それは問題ありませんが…ハクト様、この子は人族ではありませんね?」
「おっ!わかるかい、シルフィア。この子はヴァンパイアだ」
「なっ!ヴァンパイア!?」
エニファが声をあげて驚く
「魔族を…仲間にしても大丈夫なのでしょうか?」
「今さらなにを言ってるんだい、エニファ、僕達も同類だろ?」
「あっ!そういえばそうでした。私はエニファ、これからよろしくお願いしますねエメラ」
「は…い…エメラさん」
「ねぇ、パパ、この子も僕と同じ黒髪だけど…もしかして、忌み子なの?」
「そのとおりだよケイル、君と同じでエメラは忌み子だ。エメラという名前も僕がつけたし、それまで名前すらなく、愛情すら受けられなかった子だよ。エメラ、こちらはケイル。見てのとおりドラゴニュートで忌み子だ」
「よろしく!俺はケイル!エメラと同じ忌み子だけど…僕は母親から愛情を受けてた分、エメラよりも幸せだったのかな」
「お母…さん…は?」
「……俺を逃がすために死んだよ」
「あっ、ごめん…な…さい」
「いいんだ!僕は今新しい家族がいて、幸せなんだ!エメラもこれからは俺たち新しい家族といて幸せになるんだよ!」
ケイルが輝かしい笑顔をエメラに見せる
エメラは眩しそうな眼差しを向ける、エメラにはあまり実感がないが母親を失った…家族を失った気持ちは理解できる。例え、愛情を受けなかったとしても血の繋がった者は特別な存在だ。これから新しい家族と幸せな生活を送る、なんと素晴らしいことだろう
「あとは、ユリィだね」
「はい!ご主人様!私はユリィ!よろしくね、エメラ!」
「ユリィとエニファはエメラと同じ奴隷仲間だね。こらからはここにいる皆が家族だ、お互い仲良くしてほしい。さて、これにて目的は済んだ。待っているボンゴレに挨拶したら久しぶりに僕達の家に帰ろうか」
『はい!』
ハクト達は店をあとにして、まず、冒険者ギルドへ少しの間ここをあとにすることを告げる
カーラ達受付嬢は少し、不満そうではあったが特になにも言われなかった。冒険者は活動拠点を変えることや依頼でここを離れることは珍しいことではないからだ
では、なぜ不満そうだったのか?というと単純に目の保養であるハクトがこれから少しの間見れなくなるという理由からだ
ガレフとは時間の都合で会えなかったため、カーラに言付けを頼んでギルドを後にした
次にハクト達が泊まっている『黄金の小麦亭』にこれから数日この街を後にすることを報せておく
後は、エメラの服があまり良いものではなかったので新しく服を買い、用意ができたため門へと向かう
門を出て、近くの森へ入るとまずチコを元の姿へと戻ってもらい、我が家であるハクト達のダンジョンへと向かう
ユリィとエメラは普通の猫だと思っていたチコがいきなり巨大なモンスターへと変化したことに驚いたり、チコのあまりにも、肌触りのよい毛並みを堪能したり、チコの速さにびっくりしたりと楽しい時間を過ごしているとほどなくしてダンジョン付近の森へ着いた
「ここからが我が家への入り口だよ」
「ご主人様、ただの森のように見えるのですが?」
「なに、入ってみたらわかるよ。チコ、ここをまっすぐ行ってくれ」
『グルルルルゥ』
なにも道のないただの木が群生している道をどうやってまっすぐ行くんだろう?とユリィとエメラが不思議に思っているとすぐに答えは分かった
急に開けた道が目に入ってきた
あれ?あの、木はいったいどこへ?と思うがエメラには心当たりがあった
「幻…術…?」
「正解、よく分かったねエメラ。そのとおりさっきまでの風景は幻術で前へ進まないとここから先へは行けないようになっているんだ。まぁ、わざわざ険しい森のなかを進もうとする酔狂な人や幻術が効かない人には意味がないけどね。さぁ、あともう少しで入り口が見えてくるよ」
ハクトの言うとおり、少しすると洞窟のような入り口が見えてきた。
だが、それよりも驚いたことがある
入り口にハクトがいた
いや、すぐそばにハクトがいるのに入り口にもハクトがいるのだ
これにはユリィもエメラも混乱した
「ご主人様って双子なんですか!?」
ユリィの言っていることはこの状況では、普通の人が思うことだろう
だって、同じ容姿をしている人がいるのだ。双子か兄弟なのでは?と思うことは当然と言える
「お待ちしておりました、我が主君」
「やぁエルダードッペルゲンガー。久しぶりだね」
「まことに。二人ほど初めてお会いする方がいらっしゃいますな」
「あぁ、こちらはエメラとユリィだよ。エメラ、ユリィ。彼はエルダードッペルゲンガー。僕の仲間だよ」
「よろしくお願いします!」
「よろし…く…お願い…します」
「ええ、よろしくお願いします。私はエルダードッペルゲンガー。我が主君のダンジョンマスター代行を仰せつかっております」
「あっ…あの…エルダードッペルゲンガーさんはご主人様と双子なのですか?」
「いえ、これは主君の格好に変化しているだけです。本当の姿は別にございますよ」
「そっそうなんですか!?」
ドッペルゲンガーと聞くとホラー系の話では有名な種族だが実はユグドラシルでは地球ほどあまり有名ではない
何故かと言うとドッペルゲンガーは自然発生することがなく、ダンジョンでしか目撃されることがないためだ
それに戦闘能力も以前言ったとおりに化けた相手の5割ほどしかないため強敵とはなりえず、印象に残るほどの敵ではない
もちろん、化けたことで相手を騙すことが可能だが完璧に騙せることなど滅多になく、更には経験を積んだ冒険者ほどそう言った対策をしているため残念なモンスターと言える
さらに、極めつけはBランクモンスターであることだ
Bランクと言う高ランクなのに戦闘能力は期待できないし、対策されることが多いモンスター
そんなモンスターをわざわざ高いDPを払ってまで召還することは滅多にない
だが、エルダードッペルゲンガーとなると話は変わる
使えないモンスターの上位版と聞くと、あまり召還しようとは思えないがその性能は破格と言っていい
変化した人の9割の戦闘能力を持つことができ、更にはスキルまで模倣することができる
また、幻術を使うことができ、先程の森の幻術はこのエルダードッペルゲンガーがかけたものだ
なお、ダンジョンマスター代行という能力は実は発揮されることは少ない
基本的にダンジョンマスターはダンジョンの最奥でダンジョンを運営する。モンスターを召還し、罠を設置し、ダンジョンを大きくする
そのため、ハクトのようにダンジョンの外へ出て活動するというのは滅多にいない
だが、エルダードッペルゲンガーにも問題がある
それはランクの高さゆえのDP問題だ
エルダードッペルゲンガーはSランクであるため、100000Dも必要であるためすぐに手を出すことはできない
だが、ハクトはすぐにその分のDPは回収できる
まさにハクトはチートといってもいいほどのスキル『一心同体』をもっているためだ
「それじゃあ中へと入ろうか。自慢の我が家を見せてあげよう。ああ、それといい加減エルダードッペルゲンガーって種族名で言うのもなんだから名前をつけてあげよう」
「よ、よろしいのですか?主君」
「なにか問題でもあるかい?」
「い、いえそんなものはありません!感謝しますぞ、我が主君」
「じつはもう考えているんだ。エルダードッペルゲンガー、君の名前はダリオンだ!」
「ダ…ダリオン…ありがとうございます、我が主君!このダリオン主君への永遠の忠誠を捧げますぞ!」
「ふふ、これからもよろしく頼むよ、ダリオン」
「はっ!」
皆様、台風は大丈夫でしたか?
私の地元は幸運なことに被害らしい被害もなく特に支障のない生活を送れています
今季最大の台風ということもあり、被害にあった方も多いと思います
一刻も早く皆様が普段の生活を送ることができますよう心より願っております