第二十七話Sランクへ2
(俺はまだ負けねぇ!!)
見た目からは想像もつかないが、ハクトはガレフ以上の筋力をもっているのだろう
たった一度の攻防だったが観客は驚きに包まれていた
もちろんガレフも驚いた。が、すぐに意識を切り替える
「俺がただの力自慢だと思うなよ!」
ガレフが叫ぶ
事実、力だけではSランクなど到底不可能なものだ、それにガレフはまだ切り札を隠し持っていた
ガレフの異名を思い出してほしい
彼の異名は『金剛』だ
彼の異名『金剛』は防御系の固有スキルで肉体をアダマンタイト以上に固くすることができる
この世界で最も硬い金属といわれているアダマンタイトを超えるほどの硬さと考えるとそのスキルがどれ程の強さかわかるといえるだろう
「おおぉぉぉおおりゃあああ!!」
もう一度ガレフが斧をハクトめがけて振り下ろす
そして、もう一度ハクトは片手の剣ではじく
さらに、今度はもう片方の剣でガレフに斬りつける
それにガレフは渾身の力をこめた一撃を弾かれたため斧を戻すには間に合わない
これはハクトの一撃が入る!と誰もが思った時
「『金剛』!!」
ガレフの切り札を使った
その瞬間アダマンタイト以上の硬さをガレフの体はもった
そして、ハクトの剣が入ったと思った時薄皮一枚を斬られた程度に終わった
これにはハクトも観客もガレフでさえも驚いた
ハクトは必勝の一撃を薄皮一枚を斬るくらいで終わったためだ
観客もあれだけの力をもつ一撃が薄皮一枚で終わったことに改めてギルドマスターの力に驚いた
ガレフはなにを驚いたのかというと自分の絶対の自信をもつスキルを発動させたのに薄皮一枚とはいえ傷をつけられたということに驚いたのだ
『金剛』はアダマンタイト以上の硬さを誇るスキルだ
そんな防御に傷をつける、つまり突破されたことにガレフはひどく自尊心を傷つけられた
(あの剣ただの魔剣や聖剣ではないな!)
魔剣や聖剣もピンキリであり良いものも悪いものもある
そのなかでも見た目からしてわかるが最上位の武器なのだろう
しかし………
ちなみにだがハクトの剣は魔剣でも聖剣でもない
あえて呼ぶならこういうだろう
剣のはるかなる高み
その名を《神剣》と
だが、ハクトのもつ剣は、まだハクトの実力では完全な《神剣》ではないためガレフの守りを突破できないのだ
それを考えるとガレフの『金剛』はさすがSランク冒険者だといえるだろう
「『金剛』を使っても傷をつけられるとは思わなかったぜ」
「ガレフも元とはいえさすがSランク冒険者だね」
二人でお互いを称える
「それじゃあ……少しだけ本気でいくよ!!」
ハクトが覇気をこめてガレフにむかっていく
そのスピードは観客が見たらいきなり消えたように見えるほど速かった
そして、ガレフに剣を振り下ろす!!
(ちっ!こんな重さのある攻撃受けたことないぞ!)
ガレフも斧で受ける
その威力はガレフの足が地面に沈むほどだった
そして、ガレフが受け流そうとしたその瞬間に圧力が消えた
ハクトが剣を押し込もうとしなかったためだ
それから、まるで剣が生きているように見えるほど2つの剣がガレフを襲う!
「『金剛』!!」
一撃一撃が必殺の攻撃!
そんな攻撃には『金剛』以外では返すことができない
斧で弾くこともできるがハクトは二刀流であり手数では、負けている
徐々にガレフの傷が多くなる
「それでは、ガレフそろそろ終わりにしようか」
「あん?お前は俺の『金剛』を突破できるのか?」
「これを使うとすぐに終わってしまうから使わなかったけど……これを使うのはガレフが最初の相手だから、誇っていいよ!」
ハクトは絶対の自信をもって言う
(俺の『金剛』を突破できるだと?やれるならやってみろ!)
ガレフも言葉にはしなかったが『金剛』には絶対の自信をもっている
「では……いくよ!!」
ハクトの渾身の一撃!
居合いの型のように体を捻り放つはハクトのあるスキル、空間魔法を使用した、一撃だ
「『空間斬』!!」
二振りの剣に空間魔法をのせた一撃はある特性をもっている
それは……防御を無視するという特性だ
今まで説明していなかったが空間魔法はその名前の通り、空間を操る魔法だ
この魔法は空間に事象をのせたもののことをいう。例えば空間を斬ればそこに空間を斬ったという事象をのせることができる。そこに、斬ったという事象をのせることで相手が通ったときに斬ることができる
空間に事象を与えるということはいろいろな使い方がある。例えば空間を固定することでそこに不可視の盾があらわれるようになり生半可な攻撃で破られることはない
そんな便利な魔法をなぜ戦闘に使わなかったのかというと単純に使うほどの相手があらわれなかったというものもあるが、あまりに便利な魔法のためそれに頼った戦闘をしたくなかったというのが一番の理由だ
そんな魔法を解禁したためハクトの勝利はもはや決定したといえるだろう
そして、二振りの剣閃がガレフにとおる
「『金剛』!!」
ガレフは『金剛』を発動させた
が……しかし、
致命的な一撃、いや二撃がガレフに通る
「がっはぁっ!」
ガレフは信じられないといった顔をして、結界から自動的に外に出る
つまり、これはハクトが勝利したということだ
《うおおぉぉぉおお!!》
観客から雄叫びがあがる
新たなSランク冒険者の誕生だ!!