第二十六話Sランクへ
「それでは!Sランク試験を開始します!」
『おおおぉぉぉぉおお!!』
観客も盛り上がっている
そりゃそうだろう、ついさっき冒険者登録をしたばっかの新人冒険者が圧倒的な力を見せて、ついにはSランクの試験へ挑むのだから盛り上がるのも当然と言えるだろう
さらには相手をするのが我らがギルドマスターだということも起因しているだろう
ギルドマスターは元とはいえSランク冒険者であり実力は疑いようがない。さらに、義理人情に厚く頼れる兄貴として人望もある。そんなギルドマスターがSランクの実力をもつといったハクトはいったい何者なのか
謎がさらに深まるばかりだ
「名前を聞いても?」
「おう!俺はガレフってんだ!よろしくな!」
元気はつらつとした声だ
ギルドマスターことガレフは身長は2mを超えるほどで筋肉が太く大きく体を包んでいる
すでにこれで50代だということは驚きだ
50代となるとその身を包む筋肉も衰えているのが普通だろう
だが、そのような衰えというものを一切感じさせないこの姿も元Sランク冒険者という人間の最高峰の実力をもつゆえんなのだろう
ちなみにだがハクトはすでに『一心同体』の合体を発動させた状態でいる
ハクトも本気というわけだ
スキル『一心同体』の合体を発動させたらハクトの体をフルプレートアーマーが身を包み、頭にはサークレットと呼ばれるものをつけている
さらに二振りの剣をもったその姿はまるで神が祝福を与えたかのような神々しさがあった
実際に神からスキルをもらっているためそのような推測も間違いではないのだが
そのたたずまいはなにかの絵画に残したいと思うほど絵になっていた
それに比べてガレフはレザーアーマーと呼ばれるものを着ている
動きやすさを重視したのだろうだが、それを甘く見てはいけない
なぜならばそれは竜の皮を使ってつくられたものだからだ
ここで補足として竜と龍の違いを話しておこう
竜と龍の最も簡単な違いはその強さだ
基本的に竜よりも龍のほうが強い
竜は下級竜、中級竜とワイバーンなどの亜種のドラゴンのことをいう
龍はその上の上級龍、エンシェントドラゴン、龍王などのことをいう
主に下級竜やワイバーンなどの亜種はAランク、中級竜はSランク、上級龍はSSランク、エンシェントドラゴンや龍王はSSSランクというのが主な強さの基準だ
基本的には上級龍やエンシェントドラゴン、龍王などと会うことはないに等しく、主に遭遇するのは下級竜やワイバーンなどしかない。そもそも龍王やエンシェントドラゴンは物語くらいしか登場することがないためほとんど伝説のようなものだと言える
しかし、一番下の下級竜でもAランクという強大な力をもっているため村や町にあらわれたら運が良くて半壊といったところだろう
そんな災害のような竜や龍を殺すことができた者をドラゴンスレイヤーと呼ぶ
そのうちの中級竜をガレフは倒した、つまりSランク相当の実力をもつモンスターを倒したということだ
さすがSランク冒険者と言えるだろう
つまりガレフはSランク冒険者でありながらドラゴンスレイヤーでもあるのだ
そんなガレフが身を包んでいる装備は当然竜の素材でつくられたものだ
まさに一級品と呼べるような装備に身を包み、その手に握られた武器は斧だ
身の丈ほどの大きさをもつ斧でこれも竜の素材によってつくられたものである
「ギルドマスターのあの装備ってことは……ギルドマスター本気じゃないか!?」
「そのようだな……ギルドマスターのあの装備は竜の素材でつくられたやつだろ?ハクトの装備も見事なものだが……装備の差はないと言っていいかもな」
「ハクトの武器あれ魔剣か?聖剣か?」
「みたことない光だが……ただの剣ではないだろうが……初めて見るな」
「ギルドマスターの斧も竜の素材でつくられた魔斧だからなどっちが勝つか検討もつかないな」
「ハクトの装備もドワーフ製なのかな」
「あれだけ見事な装備だ、その可能性が高いだろうな」
「いや、ダンジョンの宝かもしれないぞ?」
「なるほどその線もあるか……」
観客がざわざわとしていると
「お!動いたぞ!」
今まで不動だった両者がじりじりと二人の距離を縮める
戦いが始まった!!
・・・・・・・・・・・・・
ガレフは今までにないほど集中していた
(隙が全然見当たらねぇ!)
そうなのだハクトのどこにも隙というものがないのだ
ガレフほどの強者になると隙というものを見つけることはたやすいがそれは相手が弱い場合だ
同格、いやそれ以上の実力をもっていることを改めて実感した
現役のときと比べて力が劣っていると少なからず感じていたが、それ以上に老成した経験や技をもっているのは現役のときよりも勝っている
だが、それでも、例え現役のときでもここまで自分が勝つイメージをもてない相手は初めてだ
(だが、それでもお前を超えてやる!小僧!)
「うおおぉぉぉおお!!」
渾身の力をこめてハクトに斧を振り下ろす
もし、これが避けられたら大きな隙になるだろう
だが……それこそが狙いだった
地面につく直前に斧を直角に横に薙ぎ払う
元とはいえSランク冒険者の尋常ではない筋力によって繰り出される攻撃は当たっただけで戦闘不能になる威力がある
(さあ!どうする!)
ガレフは見た目から力で押すタイプだと思われがちだがこと戦闘に限っていえば聡明で決して力だけで勝つなんてことはしない
ガレフの自分が勝つためのプランはすでに決まっている
後何手で終わるか
それのみが問題だ
だが……それは最初にあることが間違っている
ガレフはその見た目通り、力という面では、負けることはないと思っていた
だが、それは間違いだったと思い知らされた
なぜかというと渾身の力をこめて振り下ろした斧をハクトが剣で弾いたからだ
それも……片手の剣だけでだ
(な!?嘘だろ!!)
両手であればまだ納得できただろう
だが、片手なのだ
ハクトは見た目以上の力があるのだろう
観客もどよめいていた
「ギルドマスターの斧を片手で弾きやがった!」
「なんつう力をもっているんだ!?」
「これ……ギルドマスターまずいんじゃないか?」
自分の渾身の力をこめた攻撃を片手で弾いたのは驚いた
がしかし、
(俺はまだ負けねぇ!)
まだ、ガレフは諦めてはいなかった
次話決着がつきます!




