第二十五話昇格試験
「では、これより昇格試験を開始します!」
試験場はコロッセオのような形になっていて闘技場みたいに見える
「なんだなんだ?なんでこんなに観客がいるんだ?」
冒険者の1人が呟く
試験場は訓練所のとなりになっているため試験場が異様なほど熱気に包まれていることに気がつくのは当たり前と言えるだろう
「おい!なんだってこんなに観客が集まっているんだ?Aランクの試験でもあるのか?」
「いやDランクの試験だ」
「は?なんでそんな低いランクの試験でこんなに盛り上がっているんだ?」
「それがヘルハウンドを倒す実力があるみたいなんだ」
「な!?ヘルハウンドってAランクモンスターだよな?なんでDランク試験なんか受けてんだ?」
「ついさっきなんだよ冒険者登録したのが」
「なるほど……だけど噂ひとつとして聞いたことないんだが……」
「とりあえず謎の多い人物だからどれ程の実力があるのかを確かめるためにみんな試験場に集まっているんだよ」
「そうだったのか……なら俺も見に行くかな」
「あぁその方が良いだろう」
これから冒険者仲間となる人物がどんな強さをもっているのか
(少なくともAランク以上の実力をもつ謎多き人物か……いったいどんな人なんだろうな)
「お!?そろそろはじまりそうだな、じゃあ行くか?」
「おぉ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・
「俺が今回のDランク試験官だ、武器はこちらの刃を潰した物を使ってもらう。なにか問題はあるか?」
「いや、こちらは問題ない」
「そうか……では、これよりDランク試験を始める!受付嬢!合図を」
「了解しました!では……はじめ!!」
キン!!
そんな音が聞こえた
そして冒険者達の観客がどよめく
おそらく武器と武器がぶつかった音だろう
それだけならばなにもどよめきなど起こらない
だが……驚くことに試験官の手には先ほどまで握っていた剣がない
いったいどういうことかというと答えは簡単だ
ハクトが剣を試験官の手から飛ばしたということだ
試験官の実力はCランク程度であり決して弱くはない
決してハクト相手に油断をしていたわけでもない
自分の得物を簡単に飛ばさせるようなことは決してない
それなのにどうして?
それは……ハクトが常識外の実力をもっているということだ
『おおおぉぉぉおおお!!』
「すげぇ!!どうやったんだ!?」
「誰か今の動きを捉えた者はいるか!?」
「きゃー!!かっこいい!!」
「試験官は確かCランクくらいの実力だよな?なんであんなに簡単に勝てるんだ!?」
観客は興奮を隠しきれない様子だ
「いったいなにがあったんだ?」
試験官も呆然としている
「なに、簡単なことですよ片方の剣で持ち手に衝撃を与えもう片方の剣ですくいあげるようにしただけです」
「二刀流というのも珍しいが……なるほど、さすがヘルハウンドを倒すような奴だ」
「では、これでDランクになれるのかな?」
「いや、お前はCランクに昇格だ!もし、よかったらもっと上のランクの試験も受けたらどうだ?」
「そうかい?では、そうさせてもらおう。受付嬢、Bランクの試験を受けさせてもらえるかい?」
「かしこまりました。少々お待ちください」
いまだに熱気が冷めない試験場
続いてBランクの試験を受ける
そして危なげなく試験官に勝ち無事にBランクに昇格した
次にAランクの試験になるがこちらは今までと違い、刃を潰した剣などではなく普段自分が使っている武器を使い試験を行う
それは危険じゃないか?という意見もあるだろう
確かに危険であり死者がでる可能性も無いわけではない
しかし、死者がでる心配はない
それはある道具を使うことで解決するからだ
それは古代の遺物、アーティファクトといわれるものだ
このアーティファクトを使うと結界がはられる
そして、このアーティファクトの利点は結界の中で受けた傷は結界をでると無傷な状態に戻るというものがある
さらに、このアーティファクトは致命傷を負ったと判断した人を自動的に結界の外に出すという能力もある
そのため、死者がでることはないと断言できるほど安全に試験をすることができる
「では、Aランクの試験を頼むよ」
「はい、おまかせくだ……」
「おぉ!お前がハクトか?」
いきなり第三者から声がかかる
「ギルドマスター!?」
受付嬢が驚きの声をあげる
「ギルドマスター?」
「おう!その通りだ!お前強いみたいだな?もしよかったら俺と戦わないか?もし、お前が俺に勝てたらSランクに昇格してもいいぞ?」
「それは本当かい?」
「あぁ!約束するぜ、まぁ勝てたらの話だけどな」
「ギルドマスター!困ります!ハクトさんはAランクの試験を受けるところだったんですよ!?」
「別にやる必要はないぞ、ハクトはSランク位の実力があるからな」
『な!?』
受付嬢や観客から驚きの声があがる
ちなみにだがギルドマスターは元Sランク冒険者だ
そんな実力をもっているギルドマスターがそう判断したということはハクトはそれ相応の実力をもっているのだろう
ギルドマスターになる前にはSランク冒険者として近隣諸国に《金剛》という異名を轟かせていたほどの実力者だ
引退して、3年ほどになるが今まで鍛練を1日たりとも欠かしたことはない
(俺を楽しませてくれよ!)
好敵手の出現に心踊らせるギルドマスターだった