第十七話第三の眷属
「んう?あれ?私はなにを……」
まどろみからか少しぼーっとしているとだんだん頭が覚醒してきた
「そうだ!ここはダンジョン!」
あたりを見回すと普通のダンジョンの岩肌がむき出しになったものではなく家の中のようだ。ベッドに寝かされたらしくしかもこんなに柔らかいベッドは初めてだ。普段は部屋などは与えられず、馬の厩舎のようなところで牧草の上に寝るのもぜいたくなものだった。それがこんなにも良い寝床に寝ていると思うともうちょっと堪能したいと思うが意思の力でねじ伏せる
なぜこんなところに?と思っていると
「おや?目が覚めたかい?」
私の声ではない
しかし、この声は聞いたことがある
あれだけインパクトを受けたのだ忘れるはずがない
「ダンジョン……マスター……」
「そうだよ、でも僕はハクトという名前なんだ!よろしくね」
なにも敵対する気配を感じないのが逆に恐ろしい
「なぜ……私は……生かされているのですか?それに主人達は?」
「あぁ彼らにはダンジョンの肥やしになってもらったよ、そしてなぜ生かしているのかというと僕は人間と友好的な関係になりたいと思ったからだよ」
「それは……なぜ友好的になりたいのでしょうか?」
「おや?主人を殺したのは疑問に思わないのかい?」
「彼らを真の主人と認めたことは一度もありません。命令には逆らえないので仕方なく従っていただけです。それにあんな人達は死ぬのは当たり前です」
「そうかい?まぁ彼らは生かす価値がないと判断したからってだけだけどね。それとなぜ友好的になりたいのかっていうと彼らと共存したいって考えているからだよ」
「なぜ共存したいって考えているのですか?普通ダンジョンマスターは人類にとって敵となるはずですが……共存は難しいと思いますが?」
「それはダンジョンマスターだと認識した場合の話だろう?」
「つまり……ダンジョンマスターだとバレないように人族として共存するということですか?」
「そう!その通り!別に相手にはダンジョンマスターだと思わせなければいいだけだろう?」
「それでは……なぜダンジョンマスターだと知られている私を生かしているのでしょうか?先ほどは人間と友好的になるためと言っていましたが私が生きていることはかなりリスクのかかることだと思いますが?」
「疑問はもっともだね。そこで提案があるんだけど僕の眷属になってくれないか?」
「眷属……ですか?」
「そう!それと眷属になってもらわないなら君を殺すしかない。できればそんなことしたくはないんだけどね。君が眷属になって僕のことを誰にもダンジョンマスターだと言わないことを契約しなければいけない。そうじゃないとせっかくの計画がご破算になるからね」
契約か死か
単純明快で分かりやすく現実を突きつけられる
(死ぬのは嫌だなぁ)
「わかりました眷属になります」
「本当かい!?良かったよ!君が賢い選択をしてくれて」
心底良かったと思っているのが伝わってくる
(案外いい人なのかも)
「さて、では眷属の誓いをしようか」
「はい!」
眷属の誓いは主人の血を少量飲み眷属になると誓うことでできる
「よし!これで眷属の誓いは成功だ!これからは君の主人となるハクトだ!よろしく頼むよ」
「はい!よろしくお願いいたします主様!」
「それで君は名前はあるの?」
「私は奴隷となったときに名前を失っています。なので名前をつけてもらえますでしょうか?」
「そうなの?それじゃあ、うん~と……よし!君の名前はエニファだ!」
「エニファ……はい!ありがとうございます!主様!」
「じゃあエニファの眷属仲間達を紹介するよ!こっちに来てもらえるかい?」
家のようなものから出るとそのには花畑が広がっている
改めて見るとその景観が素晴らしく良くできているのが分かる
「すごい……ですね……」
思わず感嘆の思いで呟いた
「そうだろう?自慢の景観だよ!しかし喜んでくれるのはとてもうれしいね」
嬉しそうに主様は言う
少し歩いていくと最初に主様と会ったテーブルと椅子に二人が座っている
「ハクト様!」
「パパ!」
二人がこちらへ駆け寄る
「紹介しよう女性の方はシルフィア、男の子の方はケイルだ。二人とも新しく眷属になったエニファだ」
「初めましてよろしくお願いします。私はエニファです」
「よろしくね!俺はケイルだよ!」
「よろしくお願いします。私はシルフィアです。ハクト様の眷属が増えていってうれしいです」
「さぁてと、顔合わせも終わったことだしこれからの計画を話し合おうか」
真剣な顔になった主様を見て不覚にもときめいてしまったことは内緒だ