明日頑張る
いつもの食堂でいつもの席に座り、メニューを眺める。
といっても、名前の羅列だけなので、そこから類推しなければならないけれど。
そんな俺を、今日もどこか落ち着かない様子で待っていたのは馴染みのウェイトレス。
しかしいつも思うが、別にこの席に張り付いてなくてもいいんじゃないだろうか。他に客もいるのだし。
「え、えっと…。今日はこのゴブリンの肝の澄まし汁がお勧めですよ」
今日もじゃないのか。いつも勧められるけど、ソレ。
ただ、ゴブリンの肝とか好奇心は刺激されるが…。
「…いつもの」
「いい加減にしてくれる!?」
突然キレられた。
おかみが嫁の貰い手がないと嘆いていたのが思い出される。喜ばしいことだ。
「いっつも、いっつも朝の忙しい時間に!私に恨みでもあるの!?」
恨みは無いかな。
悪態つきながらも、彼女は厨房に引っ込んでいった。そう、彼女はウェイトレスとコックの二刀流だ。小さいとはいえ、食堂を一人で切り盛りしているとは中々の働き者である。
いや、食堂で働いたことがないので、中々で済ませていいのかも良く分からないけれど。
首尾よく運んだら、教えてもらおう。
それから待つこと暫し。
運ばれてきた雑炊を口にする。
「50点」
「…私の腕もだいぶ上がったね…」
そうだね。最初は本気で0点だったからね。飼料にもならないレベルだったんだから、大進歩だよね。
完食して店を出た。
いつも通りだった。
また明日頑張ろう。