春の青空と洒落た眺め ~汚い虹~
息抜きで特に何も考えず書いてたら、何か汚いのができた。ので、勢いで投稿してみた。場面とキャラの性格付けは用意したので、後は貴方が二人を好きに想像しながら読み進めてみてください。
「なぁ」
そう彼が、背中合わせに互いにもたれかかった彼女に言うと、
「んん~、んんぅ。ふぅああああああ」
彼女はそう、返事にならない返事をした。酷い寝ぼけ具合で。そこが、済みきった青空の下の一面の草原の上であり、とってもぽかぽかふわふわであったのだから、それは割と仕方のないことかも知れない。そして、
「俺がお前をどうしてここに連れてきたと思う?」
「わかんな、ふぅあああああ。ど~でもい~」
「お前なぁ……」
彼女の余りのだらしなさに、彼は呆れ、彼女の背もたれになるのを止めた。それでも彼女は起きる気はなかったようで、そのまま体を、ふかふかの芝生へと、ふわりと自重のなすがままに。
「ん~? それ、なぁに?」
視界に入った彼の姿に、むくり、と彼女は置き上がった。彼が荷物の中から出した、大きめの、やたらに骨が多い洋傘に目がいったからだ。雨なんて、降る気配は微塵もなく、日差しも程良い明るさでしかないのにどうして、と。
「お前の分もあるぞ。ほら」
と、彼が、寝そべったままの彼女の目の前に差し出したのは、いつの間にか膨らませていた一つの紫色の風船だった。一見、よく街中などで配られている、いや、最近はよくは見ない。だが、ありがちな風船。
「ん?」
「ほら、早く受け取ってくれよ。次が渡せないだろ?」
彼はそう言って微笑んだ。
「ん~? どうしてこうなった~?」
そう、彼女は彼に尋ねる。自身がしがみついている彼に。
「ほぅ。未だ未だ余裕がありそうだな。もっと上昇するか」
「ごめんなさいぃっ!」
そこは、先ほど二人がいた地面から凡そ800メートル程度。二人はそうして空にいた。彼女はその体に、大量の風船を括り付けられており、彼にしがみついていた。どれ位の数の量の風船か。それは、二人の体が、優に浮かび、上昇していけるだけの数の風船。風船数百個。それも、全部紫色の風船であるのだから、まるでブドウのようだった。
「そうか。じゃあ聞くが、それは何への謝罪だ?」
と、彼は彼女に意地悪そうな顔をしてそう尋ねた。好きな女の子をいじめる男の子さながらな感じの。そして彼女はその定番に乗るかのように涙目ながらに答える。
「久しぶりのデートなのに寝てばっかりだったから。ここに前から来たいって言ってたのは私なのに、楽しそうにもしてなくて、いつも通り眠そうにしてただけだから……。そろそろ、許して~……。……」
彼女は彼が相当お怒りであることに今更ながらに気付き、そして、減らず口も出なくなった。そして、一言、彼女はぼそりと。
「もう、もたないよぉ……」
もじもじし始める。
「分かった。じゃあ、そろそろ降りようか」
そして、彼女は青褪めた。彼が、風船の一つに、何処からともなく取り出した針を刺したから。絶望の始まりの音が鳴った。
「何でぇえええええ~~~~」
風切る音が大きくなっていく中、彼女はそう叫んだ。髪は逆立ち、穿いてきたスカートはどうしよもなく全開にまくれ上がる。それでもスカートを抑えないのは、彼にしがみつくが為。彼から手を放せば、まだ浮いていたれるか、非常にゆっくりな落下ができると彼女は気付かない。彼が未だにちょくちょく風船に針を刺して、浮力を減少させていっているのも防げるということに全く目がいっていない。
「はははは。やってみたかったんだよ。スカイダイビング。だが、ヘリコプターからとか、怖いだろう? 最初から地上が見えていて、その上、安全を備え付けていれば、唯の遊園地の絶叫系アトラクションと変わらないだろう?」
彼はとても楽しそうに笑っていた。向こう見ずな子供の笑み。だからこそ、彼女は焦った。もうこれは、何を言っても無駄なのではないか、と。
だから彼女は、
「はは……。はははははは。あはははははは――」
諦めることにした。
「どうだ? 楽しいだろう? そろそろ許してやんよ。ほらっ!」
彼が持ってきていた傘がバッと開く。唯の多骨傘であったそれが、更にもう一段階。傘の布地部分から大量の紫色の風船が出てきて、ぷくり、と膨らんだ。
「一度試してみたかったんだ。ついでにお前に見せたかった。こういうの好きかなって、思ってさ。だから俺は少しばかりいらついた訳だ。お前、何も察せず、唯眠たそうに、つまらなさそうにしてんだもの」
そうして、いつの間にか笑うことを止め、ぷるぷると震える手でしがみついてきていた彼女の顔を、懐から上げてみると、
「あはっ」
彼女はいつの間にか彼から奪っていた針で彼の指先を、ぷすり。
「痛っ、……って、ぁああああああああああああああ」
彼の手から離れた風船傘。猛烈な勢いで彼の手から離れて上昇していき、その傘の淵で、彼女に縛り付いていた残りの風船の大半をパチパチ割って、
「あああああああああああ――」
「あははははははははは、あはははははははは――」
激しく落ちていく。涙を流しながら笑顔で大笑いしつつ、決して放さないと言うかのようにがっしり彼にしがみついている彼女と、ガチガチに青褪めて叫びつつ、せわしなくごそごそする彼。
「あああああ、あったぁあああああああ、っしゃああああああああ!」
ポチリ。
何処からともなく出した、赤いスイッチ。白い台座にくっついた赤いスイッチ。掌サイズ。すると、
未だ未だ遠く、後200~300メートルはあるが、割と近くなっていた地面の色が変わる。その見掛けも、がらりと。それは、海だった。青い海。穏やかに波立つ、海。
「うふふ、ふぅ」
「ふぅ」
と安心し切る二人。色々と緩んだのだろう。彼女が僅かに先。そして、彼もそれに合わせるように、仲良く、弛緩し、空から雨を垂れ流しつつ、
ビュゥウウウウウウウウウウウ、ザバァアアアアアアアアアアアアンンンン! ブゥゥゥ、ボコボコボコボコボコ、
「ばふぅ!」
「がはぁ!」
仲良く海面から顔を出した。そうして、互いの顔を見合わせながら、
「はははあはは、何やってんだろな、俺ら。ははははははは、でも、」
「ふふふふふふ、ほんとね~、ふふふふ、でも、楽しかったよ~。でも、」
「「漏…―、まっ、いっかぁ!」」
声を揃え、空を見上げて笑うのだった。掛かっていた小さくも綺麗な虹。そう、汚くも綺麗な虹。
「あ"あ"~、楽しかったぁ~」
「それは何よりだ」
そして、彼は、再び掌サイズのスイッチを押して、辺りが一面真っ白になったかと思うと、そこは六畳程度の小さな洋間へと変わった。二人はその何も置かれていない部屋の中央にいた。部屋の一つの面を占有している窓のカーテンは完全に閉まっている。
彼も彼女も立ち上がる。そして、
「じゃ~、私、お風呂先に入ってくるから、片づけお願いね~」
「はいはい……
と、彼女が、その掌サイズのボタン型のホログラム機器を回収し、湿った足音を立てて浴室へと去っていく中、彼は、片づけを始めた。フローリング床の黄色い水溜まりの片づけを。生温い湿りと生々しい臭いに塗れながら。
「すぅぅぅぅ、はぁ……。楽しかったし、楽しんで貰えたが、全然、洒落てねぇ……。……、はぁ……」
そう、彼は大きく息を吸って、溜め息を吐いた。
貴方の心の汚れ具合で、見え方が変わってくる……? いや、ないか……。もし良かったら感想聞かせてください。




