表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/21

第六話──追跡──

 斗真はこっそりとヤンキー風ファッションの男の後をつけていく。

 時には通行人に紛れ、時には物陰から観察する。元々暗夜に所属していた頃はスパイや暗殺をメインに請け負っていたため、気づかれずに追跡するなどお手の物である。実際、ヤンキー風男が警戒している様子もなく、むしろテロリストだというのに、その歩みはゆうゆうとしたものであった。

 数十分ほど歩いただろうか。いつの間にか周囲には人影はかなり少なくなっており、閑静な住宅街に来ていた。


「!!」


 斗真は、咄嗟に物陰に隠れた。

 男の横に車が止まったためだ。特に何の変哲もない白いバンである。

 ゆっくりと顔を覗かせてみると、車の窓が開いており、どうやら運転席の誰かと何か話しているようだ。生憎、声は聞こえないため、どんな内容を話しているかまでは分からない。

 時間にして一分程度だっただろうか。何らかの話を終えたらしい男は車に乗り込んだ。


「ヤバッ」


 斗真が物陰から飛び出した時には、既に車が出発していた。


(しまった……)


 そう思ったが、時既に遅し。だんだんと車は離れていく。

 ウロボロスと思わしき男を見つけて、この男をつけたらなんらかの手がかりが掴めるかと思ったのにこれではまた振り出しに戻ってしまう。

 そう思ったら、身体が先に反応していた。

 全力で走る。

 もちろんただの全速力では車に追いつけるはずがない。


「『ポルターガイスト』!!」


 斗真は能力を発動させた。物を浮かせ、移動させる異能、『ポルターガイスト』。その異能を、自分の服と靴に使った。

 助走をつけたまま、足に思いっきり力を込めると、全力で跳ぶ。

 すると軽々と三、四メートルほど飛び上がった。そのまま、近くの家のベランダの壁を掴み、飛び乗ると、再び跳躍。あっという間に屋根へと登った。

 別にポルターガイスト自体は人に自由に空を飛ばす程の力はない。が、落ちないように、より上へ上がるようにと、自身の跳躍の補助として使えばこういった芸当くらいはできた。

 今度は靴にのみ、能力を集中させると、屋根を全力で走る。靴にまるで羽が生えているかのように軽やかで、屋根から屋根へと飛び乗りながら、車を追いかける。流石に車に追いつくほどでは無かったが、離れていくスピードは確実に遅くなる。


(いける……!!)


 そう確信すると、更に足に能力を集中させた。


 ──☆──☆──


「ハァハァ……」


 車が止まった隙になんとか追いつくことが出来た。


「ハァハァ……ハァハァ……マジか……今からかよ」


 屋根から車を見てみれば、一人の少女が今まさに、誘拐されようとしていたところだった。

 少女は、黒髪ロングにメガネをかけた大人しそう、かつ真面目そうな少女だった。東使山高校の制服に身を包んでいることから多分綾乃の言っていた少女で間違いないだろう。


「ハァハァ……なにか……何かないか?」


 このままだとウロボロスに目的の少女を奪われる。

 焦る気持ちを抑えつつ、斗真はこの状況を打開する何かがないかとキョロキョロと辺りを見渡した。この車に追いつくために全力を使ってしまい、肩で息をしている現在では、とてもではないが戦闘はできそうにない。

 すぐ近くに公園があるのが見えた。先ほど斗真が休んでいた公園ほど大きくはなかったが、何人かの子供が追いかけっこしたり、親子がキャッチボールして遊んでいる様子が見える。


「すまん。少し借りる」


 一人屋根の上て小さく謝ると、能力を発動させる。

 そのキャッチボールをしている親子の近くにあった、予備と思わしき野球ボールを、ポルターガイストで手元に引き寄せた。

 もしかしたらその親子には急にボールが空飛ぶ瞬間を見られたかもしれないが、そんな事を気にする余裕はない。

 ボールを左手で握ると、能力をボールに使いつつ、全力投球した。

 目標は少女の腕を掴み、車に連れ込もうとしているヤンキー風男だ。

 能力で精度も速度も上がったボールは、少女と男で揉み合っている中でも、正確に男の後頭部に命中した。

 男は少しよろめいた後、倒れた。あの勢いのボールが当たったとならば、軽い脳震盪くらいは起きたかもしれない。

 少女は一瞬何が起こったのかと目を見張った様だったが、すぐに走って逃げ始めた。


「よしっ!!」


 斗真は小さくガッツポーズをとると、再び屋根から屋根へ飛び、走り始める。

 車で来ているということは、運転席に少なくとももう一人いるはずだし、倒れた男が復活するのも時間の問題だろう。

 少女をウロボロスより先にゲットするために、急がなくてはならない。

 そう考えると、斗真は足にさらに能力を集中させた。

数日間が開きました

まぁストックは使い果たしたしたぶんこんなペースが当たり前みたいな感じになると思います


斗真の能力便利やなぁ……(作者並感)


ここまで読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ