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第十七話──昼の目覚め──

 斗真は、眠っていた意識がはっきりしていくのを感じた。


(前もこんな感じあったな。そういや、その時は確かどっかのホテルで手足縛られてたっけ)


 何となくそんな事を思い出す。

 しかし、今斗真の手足は一切縛られていないし、布団の感触はホテルのものよりさらに柔らかい。


「ん……」


 まだ寝たいような惰性に無視して、思いっきって上体を起こす。

 そして、ゆっくりと目を開けた。

 視界に飛び込んできたのは、豪華の一言に尽きる部屋だった。おそらく、この自分が今いるベットも高級品だろう。


「ここは……アヤノの屋敷か」


 どうして斗真が今ここで寝ているのか、思い出そうとしたが、記憶にない。

 斗真が思い出せる最後の記憶は、葵をなんとかビルから連れだした所までだ。

 上半身裸で、撃たれた肩などに包帯を巻かれているところを考えると、決して夢オチとかではなさそうだが。


「つまり、なんとか葵を連れ出したあと、屋敷へ帰ってここで寝ているっていう訳だよな……ん?」


 寝起きで、まだ意識もちゃんと覚醒していなかったので、気づくのが遅れたが、隣からスゥスゥという寝息が聞こえる。


「アヤノ……? ……!!」


 同じベットで綾乃が寝ていた。

 広いベットの端の方で、気持ちよさそうに寝ている。

 流石に、少し前に見たネグリジェ姿ではなく、いつも通りの男物のズボンにシャツという格好だったが。

 状況が理解できず、混乱する。

 なぜ、どうして、いつからか……斗真には、さっぱり分からない。


(しかし、こうしてよく見ると……)


 可愛いなぁと思った。

 元々、無理してやや低い声を出して、男っぽい行動をしてと、男装を徹底しているため、そちらの方へ目がいって気づきにくいが、よく見るとボーイッシュながらも、結構可愛い顔をしている。こういう時は年相応の少女だ。


「……起きろ、アヤノ」


 どうするか少し悩んだ挙句、起こすことに決める。

 身体を揺すりながら、声をかけると綾乃はんー、と唸りながらも目を開けた。


「あ、おはよ、トーマ。起きたんだね」

「おはよ、アヤノ。とりあえず、今なんでアヤノが、同じベットで寝ることになったかの事情を説明してもらおうか」


 そう言うと、綾乃はガバッと身を起こしてた。

 一気に目が冴えたらしい。


「いやいやいやいや、深い意味があったわけじゃないよ!! ただベットが気持ちよさそうだなぁ、トーマ寝てるし寝ても大丈夫かなーとか思っただけで。そう特に意味なんてないよ」


 混乱しているのか、一気に早口でまくし立てる綾乃。

 頬は心做しか赤い。


「いや、とりあえず落ち着け。深呼吸、深呼吸」


 なんとかアヤノに深呼吸させ、落ち着けさせる。

 顔がさらに赤くなっている気がする。


「今は……もう一時半かぁ。たぶん十時くらいに寝たから結構寝ちゃったなぁ」

「とりあえずベットが気持ちよさそうだから寝たってことでいいのか……?」

「うん、まぁそんなところかな。最近ちょっと疲れてたし」

「ふぅん。まぁ別にいいんだけどさ。ベットが気持ちよさそうって、アヤノの自室のベットの方がもっと質が良くて気持ちいいだろ」


 そう指摘したら、アヤノに、まるでわかってないなぁ、と言わんばかりの哀れみに満ちた目で見られた。

 何か間違えたのだろうか。


「まぁ、いいや。トーマ、身体は大丈夫そう?」


 綾乃は、ベットから立ち上がると聞いてくる。

 斗真も同じくベットから立ち上がると、軽く肩を準備運動のように動かした。

 全身に多少の気だるさは残るが、動かすのには全然問題なさそうである。


「あぁ、問題なしだ」

「そう、それは良かった。なら、ちょっと遅めの昼食にでもしようか。そっちも聞きたいことや話したいこともあると思うけど、食べながら話すということで」


 そう言うと、綾乃はいつも通りにニッコリと笑った。

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