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第十五話──決戦の裏で その1──

 斗真が京介と大乱闘を広げた、あのウロボロスのいたビルから遠く離れたまた別のビル。

 そんなビルの影に隠れる様に、月夜からも身を隠す様に、潜みながら写真集を握る男が一人いた。

 京介と共に来た、もう一人のウロボロスの構成員であり、『ジャバウォック』の異能の保持者。東偽亮(やおみりょう)である。

 亮はポケットに手を突っ込むと、スマホを取り出す。

 注意深く周囲を確認すると、電話をかけた。


「もしもし、東偽亮です。天使の件についての報告です。……失敗しました。他の組織に取られました。現在生存者は自分一人。任務の続行は不可能。以上です」


 声を絞り出すように報告する。もしかしたら声が震えていたかもしれない。


「そうか、まぁ、亮、京介、和泉の三人というウロボロスの中でも選りすぐりなお前達で向かいながら、失敗したということは何か言い訳はあるんだろうな?」


 対するスマホから聞こえる声は、落ち着いていた。いや、落ち着いていたというよりは恐ろしく冷たい声だった。


「リ、リーダー!? なぜこの電話に!?」


 電話の相手が予想外だったのか、驚き狼狽える亮。

 それは当然だろう。ただ、ウロボロスの幹部の一人に連絡しようとしたらリーダーが出たのだから。


「別に誰が電話に出ても構わんだろう。俺だってお前らの結果を気にしていた、というだけだ。で失敗した言い訳は? 状況次第なら許す」


 許す、と言いながらその声はいっそう冷たくなったように亮は感じた。

 背中に冷や汗が流れるを感じながら亮は声を絞り出す。


「……『七つの大罪』。そのうちの一つの怠惰の能力者にやられました」


 ──と言えと、その怠惰の能力者本人に言われました。

 と、馬鹿正直に付け加える。


「ふうん、怠惰ねぇ。一応細かく聞こうかな。その時の状況を細かく説明して」


 怠惰と、言った際に反応があったのを亮は感じた。細かく説明しろという声は、心なしか先ほどより冷たくないように感じた亮は、まくし立てるように、喋り始める。

 今よりほんの一時間ほど前の状況を。


 ──☆──☆──


 その時、亮は、その後斗真が天使と会話することになるバーにいた。京介も同じくだ。

 今回のターゲットである葵は、手足を縛り、猿轡を噛ませて、地面に転がせてあった。

 別に意識はあるようだが、恐怖からか物音一つ立てずかなり大人しい。

 目標である少女はこうして、縛られている。

 つまり任務達成である。あとは無事に送り届けるだけである。

 しかし、任務達成まであと少しだと言うのに、二人の空気は重苦しかった。仲間の一人が戻らないのだ。偵察、探索に特価した異能の持ち主だった。

 今日の昼までは連絡がついていたのに、突如途絶えた。今ももしかしたら帰ってくるのでは? という期待をわずかに持ちながら、こうして待っているが、恐らくその望みは薄いだろう。

 二人ともそれが分かっているが、口に出せなかった。

 故に、どんよりとした陰湿な空気が二人の間を流れていた。


 ガタッ!!


 何分経っただろうか、そんな陰湿な空気をはね飛ばすような勢いで、京介が椅子から立ち上がった。


「すまん、ちょっと煙草吸ってくるわ。ついでに軽くビルに異常がないか見回る。それまでの間、そいつを任せた」


 そう言うとスタスタと歩き、バーから出ていく。

 京介は、喫煙者だが、決して人前では吸わないのだ。今のように吸いたくなったら、わざわざ人のいないところまで出ていって吸う。

 マナーをきちんと守っているので、良いことだとは思う反面、別に志を同じくする仲間である自分にそこまで気を使わなくてもいいのに、と亮は少し思っている。わざわざ口には出さないが。

 こうして喫煙ついでに、ビルの他の階を見回った京介は斗真と出会うのだが、それはまた別の話である。


(伊藤葵。今回のターゲットにして、天使の異能を持つ少女か……まぁ、こいつの母親を殺したのは俺だし、よく見れば面影が残ってるな)


 京介がいなくなった事で、亮の意識は葵へと集中する。


「確か『ラファエル』だったっけ……不死になるか仲間にその不死を付与する能力だっけか。──なら、ちょっと試すか。最悪死んだらこいつはその天使の能力者じゃなかったって事だしな」


 何となくの思いつき、もしかしたら仲間が戻ってこない事への苛立ちや八つ当たりもあるのか、残虐な事を口走る。

 止める人物が誰もいないことをいい事に、即実行。近くに置いていた、兵器について纏められた特製の写真集を手に取る。


「『ジャバウォック』」


 能力名を呟きながら、能力を発動させると、本の中から、拳銃を取り出した。


「すまんな。まぁお前が『ラファエル』の能力があるなら、大したことにはならないはずだ」

「──!! 〜〜!!」


 拳銃を構える。葵は死の危険に気づいたのか、なんとかしようと暴れ、叫ぼうとするが、手足の拘束や猿轡に邪魔され、大して動けない。


「ちっ! ガタガタうるせぇ」

「!!」


 手足が拘束されているなりに必死で暴れる葵に、苛立っている亮は、葵の腹を勢いよく蹴った。

 痛みや恐怖で気絶したらしく、葵は大人しくなった。

 再び静かな空間へと戻る。


「じゃあ、試すか」


 亮は、拳銃を再び構え直すと、引き金にゆっくりと指をかけて──

ついに5万字超えました!!

今後ともよろしくお願いします

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