『屋上(9)』『そらくじら(9)』『くらいよる(5)』
『屋上』
屋上に出ると、先客がいたらしい痕跡を見つける羽目になった。腰の高さほどもあるフェンスの手前。きっちりと揃えられたローファーの下に、封筒が一通差し込まれていた。
辺りに風は欠片ほども吹いていない。どんよりと立ち込めた灰色の空模様は、じっとりと大気を湿らせていて、重苦しい気分をさらに加速させる装置として、効果的に働いてくれている。
そう思えば、初めてぼくが死にたいと思ったときもこんな天気だった。今から七年ほど前のことだ。中学二年生になった頃のぼくは、どうしようもなくこの世界から消え去りたいと願い続けていた。
原因は些細なことだった。世間的に見れば、よくある話のひとつに過ぎなかったに違いない。ようするにぼくは学校でいじめられていたのである。何の前触れもなく、何の理由もなく、同じクラスの一員として過ごしていたはずの彼らは、突如としてぼくに牙を剥いた。
毎日が暗黒に染まり始めた。朝起きると急にお腹が痛くなって、でも両親を心配させるわけにはいかなかったから無理やり登校して、無理がたかって血を吐いてしまったことも何度かあった。当時のぼくの胃の壁には、大きな穴がぽっかりと顔を覗かせていたのである。
その末路として、幼かったぼくは今日みたいに屋上に昇ってきたのだった。空は曇っていて、風は凪いで蒸しきっていて、フェンスに寄りかかって睥睨した町並みはどこかよそよそしく、ぼくの居場所はもおうどこにもないように思えた。
だからぼくは、えいっ、と一思いにフェンスを飛び越えて、屋上の縁から身を乗り出してみたのだ。
それからもう、どれだけの月日が流れたのだろう。
成長し、少しだけ大人になったぼくは、今もこうして、あの頃とは少しだけ変わって見える世界を眺めている。灰色の空と、その下に広がる広大なコンクリートジャングル。町並みはより一層人を寄せ付けなくなったのではないだろうかと、最近思うようになった。
人の手によって快適さを追求した末に、人にとって排他的な側面を見せるようになった町並み。その因果じみた姿に小さくため息をついてから、ぼくは足元にあった封筒を手に取った。
中には三枚ほどの便箋が折り畳んである。文面を一目見て目を閉じたぼくは、思わず呻きたくなってしまった。間違いない。書き連ねてあったのは、憎悪とも謝罪とも取れる、独特の存在感を放つ文章――拙いながらも真摯な思いが添えられた遺書であった。
「拝啓。二年B組のクラスメイト様方へ」
証書を受け取るときのように両手をピンと伸ばして、ぼくは恭しくその文章を朗読することにした。
「まず最初に、このような身勝手な行動を取ってしまったことを、皆さんにお詫びいたします。
ごめんなさい。許してください。
本当に私は最初から最後まで貴方達に迷惑をかけてばかりでした。邪魔だと罵られ、キモイと嘲笑われ、消えろよと嫌悪されつつも、どうにかこうにか私の存在を希薄にしようと努力していたつもりだったのです。けれども、どうしても足りませんでした。私は力不足でした。ごめんなさい。本当に迷惑ばかりかけて申し訳ないと思っています。
けれど、一方でこれでよかったのではないかなと、この文章を書きながら思っている私がいることもまた事実です。クラスの粗大ゴミがいなくなって、皆さんはさぞ爽快な気分になれることだろうと思います。なくなった私の机のことなどすぐに忘れてしまって、少しだけ広くなった教室になんぞすぐに無感動になってしまうかもしれませんが、一瞬でも私がいなくなったことを自覚して気が晴れてくれるのならば、それで私は満足なのです。それ以上は何も望もうとは思いません。
だからどうか存分にこれからの人生を謳歌してください。私が歩めなかった将来を、有意義にお過ごし下さい。
最後になりましたが、お父さん、お母さん、こんな馬鹿な娘を今まで育ててくれてありがとう。せっかく貰った命だけれど、もうもとの場所に戻してあげようと思います。私はこの命の持ち主として相応しくなかったようですから。悩みを共有してくれたり、好きなことをさせてくれたり、今思い返せば感謝してもし尽くせない人生でした。本当にありがとうございます。そして、ごめんね。本当にごめんなさい。でも、私にはもう耐えられないのです。さようなら。敬具」
全てを朗読し終えてから封筒に便箋を入れなおすと、ぼくはおもむろにライターの火をつけた。角にともった炎は大きく成長してどんどんと封筒を飲みこんでいく。手が熱くなる前に、ぼくは屋上から封筒を投げ捨てた。
「やっぱり、くだらねえなあ」
呟いて、フェンスの上に肘を突いた。なんだってこんなことで自殺しなきゃなんないのか、理解に苦しんでしまった。
あの時もそうだった。身を乗り出したものの、その瞬間にどうしようもなく馬鹿馬鹿しくなってしまったのである。
どうしてぼくはこんなことをしなければならないのだろう。
突如として頭を持ち上げた素朴な疑問に対して何一つ答えられることがなくて、気がついた時にはもう屋上にへたり込んでしまっていたのだった。
人はそれを臆病だと誹るのかもしれない。あるいは浮かんだ疑問に対して、答えなんて決まっている、みんなが私の存在を望んでいないからだ、と声を大にさせる人もいるかもしれない。
よろしい。それはそれで結構なのだ。死にたいと思っている人を思いとどまらせることは並大抵のことではないし、そもそもその人とぼくとは違う人間である。彼らがぼくのことを理解できないように、ぼくもまた彼らの心境を理解することなんてことは永遠に不可能なのだ。
しかしながらである。ぼくだってひとりの人間であるのだ。何かを考えているし、感じているし、持っている信念だってある。それを誰かに伝えるのはぼく個人に与えられた自由に他ならないし、ぼくにはその自由を行使するだけの権利が与えられている。
「なにもさあ、こんな狭い世界を見ただけで終わることはないと思うんだよなあ」
口にしてぼくは煙草を咥える。大学に入学するのと同時に吸い始めて、すでに習慣になってしまった。ずうっと煙を吸い込むと、思わず目が萎んでしまう。肺腑一杯に溜まった紫煙を、灰色に染まった空に向かって、思いっきり吐き出してみた。
「な。お前も一本どう?」
煙草ケースをフェンスの向こう側、一段下がった場所に座り込んでいた彼女に差し出してみると、ふるふると、俯いたままの頭が左右に振れた。まあ確かに煙草は身体に悪い。喫煙者だけじゃなくて、周りにも迷惑をかける。難儀な物だと思う。
けれども美味いのだから仕方がない。やめられないのである。年々肩身は狭くなるばかりだが、それでもたぶんぼくは一生煙草をやめないと思う。
それだって自由なんだなどと思いながら灰を叩き落して、彼女に声をかけた。
「で、これからどうするつもりなの。やっぱり死ぬ? ここからならきっと確実に死ねると思うけど」
俯いたまま彼女は何も答えなかった。それも答えのひとつの形なのかもしれないけれど。ぼくにその胸中は計り知れない。彼女がぼくの心を正確に理解できないように、結局人はお互いを完全に理解しあえるようにはできていないのだ。たとえそれが友達であっても、家族であっても。
ただ、それでも伝えられそうなことは伝えておきたいと、ぼくは願う。
煙草を放り捨てると、手のひらを空に突き上げて思いっきり伸びをした。
「ま、とにかくだ。飯食おうよ。食ってりゃあ生きてけんだからさ。な、そうだろう」
言ってぼくは彼女に手を伸ばす。どうか掴んでくれよと、内心かなりどぎまぎしながら。
曇天は流れて、雲間からは光の帯が差し込んできている。
(おわり)
☆ ★ ☆
『そらくじら』
おとうとは空に絵の具を落とすのが上手だった。
水に湿った筆先を、チューブから搾り出したかたまりに向かわせる。すくい取った小さな欠片をパレット上で伸ばしてから、えい、と大胆な描線をキャンバスに表現する。
描かれた空は澄んでいて、そこに面があることを忘れてしまいそうなくらいに青く、大らかな広がりを持っていた。
もう一度繰り返そう。
おとうとは空に絵の具を落とすのが上手だった。とてもとても。本当に奇跡みたいな空を、何枚も何枚の描いたのだった。
将来は画家になると語っていたおとうと。稼ぎが安定しない険しい道だからと、何度も両親に説得されたのに一度も肯んずることがなかった唯一のきょうだい。
瞳にはいつだって眩しいほどの輝きが宿っていたというのに。
ようやく何かが崩れかけていると気がついたのは、窓辺に置かれた小さなサボテンに白い花が付き始めたころのことだった。毎日のようにキャンバスに向かっていたはずのおとうとが、どうしてか外出することが多くなっていた。
当初は、デッサンか素描のためだろうと、あるいは構想を練るために不可欠な散歩なのだろうと高を括っていた。そういうことも必要なのだろうと。思い込んでいたから、玄関を出て行くおとうとの手には何一つとして持ち物が握られていなかったにも関わらず、まったく疑問を持たなかった。
最近おとうとはなにをしているのだろう。朝早くから夕方遅くまで、いったいどこにいっているのだろう。
不思議に思い始めたときにはもう手遅れになってしまっていたのだと思う。おとうとはぼんやりと空を見上げることが多くなり、一日中なにもしないまま、それこそ食事をとることもしないまま、ただ空を見上げるだけの生活を続けるようになってしまった。
「ねえ、どうしたの。最近おかしいよ」
声をかけても、にっこりとやつれ細った顔に弱々しい微笑みを浮かべるだけで、他に反応は得られない。食事を摂るよう強要すれば席を立ってしまうし、同じ部屋で生活しているはずなのに、わたしとおとうとの距離は徐々に離れ離れになっていってしまった。
だからその日、久々におとうとがキャンバスに向かっているのを見たときは嬉しくて、心から驚いて息を呑んでしまった。
不治の病を罹った患者のように細くなった腕は、枯れ枝のような姿になっても、以前の腕前となんら変わりなく、滑らかに色彩をキャンバスに重ねていった。
喜びのあまりわたしは、素早く背後に近寄ると、今回は何を描いているのかを訊ねてみた。
「そらくじら」
おとうとは振り返ることもせずに返事をした。
「そらくじら?」
「うん、そう。悪いけど集中したいんだ」
言われ、謝りながらわたしはおとうとのそばを離れた。部屋の入り口からどうにか覗き込めたキャンバスには、今までと何ら変わりない、いや今まで以上に簡素な、しかしながらどこか不思議な存在感のある空が、どこからどう見ても空だけが描かれていた。
だから、結局わたしには最後まで“そらくじら”がなんであるかがわからなかった。おとうとが描き続けた空には、いつまで経っても空以外になにも描き加えられる気配がなかったし、筆を置いたその翌日からおとうとは、二度と部屋に返ってくることがなかった。
だから、わたしの部屋にはいま、おとうとの描いた“そらくじら”だけが残っている。サボテンの花はもう散ってしまったし、その隣で舌を伸ばす子犬の置物(以前おとうとが買ってきてくれた。)にも、もう随分と埃が降り積もってしまった。
おとうとは、最後の瞬間まで空を見上げていたのだという。最後の最後、かぎりなく空に近い建物の屋上から身を投げ出したその一瞬まで、ずっと空を見上げていたのだという。目撃者の証言を聞きながら、どうしてわたしがそこにいることが叶わなかったのか、理不尽だと怒りが込み上げてきてしまった。
自殺であると決め付けてかかっていた警察は、最終的に栄養失調から意識が朦朧となって、誤って足を踏み外したのだろうなどという馬鹿げた見解を示した。またある人は、薬物を服用し、自ら空を飛べるような幻覚に陥ってしまったのではないかと、不謹慎な憶測を並び立てた。
わたしには、そのどちらも真相を言い当てているとは思えない。おとうとは、あの屋上でそらくじらに会ったのだから。そらくじらに会って、その背中に乗って旅に出ようとしたのだから。
そう、おとうとが死んでから送られてきたわたし宛の手紙の中に書いてあったのだから。
『姉さん、このような形で連絡をいれる無作法をお許しください。
いまごろ、ぼくがどこかへ行ったきり帰ってこなくて不安におもっていることだと思う。でも安心してほしい。ぼくはぼくで元気にやってるよ。
とはいっても、信じることはできないかもしれない。たぶんその方が自然なんだと思う。ただ、ぼくは決しては嘘をこの手紙に書くつもりはないし、だからこの手紙に書くことは全て真実であるのだと、姉さんには、姉さんだけには信じてほしいんだ。だからこそ姉さんにだけこうして手紙を送ったのだしね。きっと信じてくれることだと願っている。
さて、前書きが長くなってしまったね。とにもかくにも、近況報告をしなければならないと思う。
ぼくはいま、空に一番近い場所に暮らす生き物と一緒に、世界中を旅して回っています。そう、この前描いていたそらくじらと一緒にいるのです!
ですから、帰りがいつになるのかはわかりません。もしかしたら、もう一生帰られないかもしれないかもしれない。予定は未定です。
でも、これだけは念頭に置いてもらいたい。かれらと旅をすること、それがぼくの選んだ道だったんだ。これまでどんなことにでも、ぼくの考えたことなら受け入れてくれた姉さんにならわかってくれることだと思う。ぼくは、かれらと一緒に旅に出なければならなかったんだ。それが、ぼくの運命だった。かれらの存在に気がついたそのときに決められた未来だったんだよ。
本当は事前に説明をするべきだったんだろうけれど、このことだけは流石の姉さんでも止めるかもしれないなと思ってこんな手紙を書いています。だって、最近の姉さんはすごく心配性だろう? かれらと旅立つためには、できるだけ内密にことを運ばなければ不可能だと思ったんだ。
とは言え、事後承諾のような形になってしまったことについては本当に悪いと思ってる。ごめん。謝ってどうなることでもないだろうけれど、それでもやっぱりごめん。
けれどさ、ぼくは元気だから。かれら、本当にたくさんの事を知っていて、たくさんの美しいものを見せてくれるんだ。ぼくはその全てを描ききるまでは帰ることができない。その全てが描ききれたら、必ず戻ってくるよ。
だから、そのときまで。
さよなら』
おとうとは、そらくじらにかどわかされたのだ。
手紙を読み終えて、わたしには全てが理解できた。
おとうとはそらくじらに連れて行かれてしまった、やつらに奪われてしまったのだ、と。
そのことに気がついた瞬間、泣き疲れて衰弱しきっていたわたしの身体の奥底から、とてつもない力が沸き起こってきた。
そらくじらが、おとうとの命を空に散らせたのである。
立ち上がり、ぼろぼろになっていたわたしは、改めておとうとの描いた“そらくじら”の前に立った。そしてありったけの絵の具を水に溶かすと、キャンバスに向かって思い切りぶちまけてやった。
憎しみの対象。復讐を果たすべき、絶対的な敵。
その姿は、キャンバスの中央、どういうわけか水を弾いた部分に現われて、ヘドロのように汚れた空の真ん中に優雅に浮かんでいた。
外ではしとしとと糸のような雨が降り続いている。
(おわり)
★ ☆ ★
『くらいよる』
彼女は闇夜に照らされていた。
太陽も沈み、紺とも紫とも見てとれる空に覆われた宵の口のこと。東の空に輝き始めた明星を見上げながら、僕と彼女は無人駅のホームで到着の遅い電車を待っていた。
「夜が暗いと安心するよね」
ぽつりと、唐突に彼女はそう口にした。一瞬独り言かと勘違いしてしまったほど小さな、脈絡のない一言だった。
「まあ、そう思うこともあるかもしれないね」
努めて、ぼくはできるだけ明るく話にあわせた。
「うん。わたしは暗い夜がすき。うんと暗いのがいい」
「でも、最近は街灯とかたくさん増えたからな」
「そうなの。あまり暗い夜がなくなっちゃった。やおおあり危険なのはよろしくないんだよね」
「なんだよ、それ」
僕は軽く笑いながらそう言った。いつもどおりだ。そう安易な気持ちで考えながら。
「安心するけど危険なんじゃあ、暗い夜って矛盾してるじゃないか」
「そうでもないよ」
突然声の質が変わったような気がした。なんと表現したらいいのか、ぬめり気を帯びたというのか、急に艶かしく、纏わり突くような響きを持ち始めたのである。
どうしたのだろう。不思議に思い、僕はそっと首を動かしてみた。少し離れた場所に立つ横顔を盗み見る。彼女はじぃっと線路に視線を落としていた。注意深く観察を続ける研究者のように。わずかな変化さえ見逃さない管制官のように真剣な眼差しを浮かべて。
「安心することと危険であることとはまったくの別物だから」
「べつもの……」
「そう。別物。よく戦場から帰還した兵士なんかが云うじゃない。銃撃の鳴り止まないあの荒野こそが俺の居場所なんだって」
ぶぅーん……、と頭上の蛍光灯が振動している音が聞こえてくる。知らない間に静寂が耳に痛いくらいになっていた。さっきまで風に揺られた葉っぱが擦れる音が響いていたというのに。
いま僕たちの周りには完全な静寂が深く腰を据えている。
「暗いとね、安心するの」
彼女はそう繰り返した。
「わたしがここにいていいんだって、ここがあるべきばしょなんだって、そう思うことができる」
「……わかるような気がするよ」
「本当?」
「ある程度なら。たぶんみんなそう思っているんじゃないかな。強弱はあるにせよさ」
「強弱はあるにせよ」
彼女は僕の言葉を復唱した。一字一句つぶさに確かめるように。妙にはきはきした言い方だった。
「そういうものなのかな」
「そういうものだよ」
「そうかな」
「うん。きっとね」
そうして僕はさっきからずっと彼女に聞いてみたかったことを口にした。
「ところで、線路の上になにかいるの。それとも、なにか見える?」
ゆっくりと僕に向けられた視線と、そこに浮かんでいた無表情と、それから漠然と彼女の背後に立ち込めていた暗闇とを目の当たりにして、僕は確かに思ったのだ。
“彼女は闇夜に照らされている”。
その日以来、彼女は学校に顔を出さなくなった。連絡もとれない。数週間たった頃に聞いた話に寄れば、どこかしら精神に異常をきたしてしまったということらしかった。あるいは他の噂に寄れば、どこかに失踪してしまったらしい。どちらも真偽の程は定かではないけれど。
とにかく、僕の登下校は、また貴重な話し相手を失ってしまった。
ひとり、薄暗い無人駅のホームに立つたびに、あの日の彼女の横顔を思い出してしまう。そして考えるのだ。彼女があのときなにをみていたのかについて。そして安心するといった暗い夜の正体について。
そっとホームの端から暗い線路を覗きこんでみる。
ざわりざわりと蠢くモノが、今日もじっと見つめ返してきていた。
(おわり)
“手紙”というツールは物語の中で非常に強烈な意味合いを持っているのではないかと思うのです。要は過去からの告白であるわけですから、決して対応することができないし、突きつけられた当人にしてみれば鳥肌が立つほどに恐ろしことではないでしょうか。
時間の不可逆性は非常に強力です。その内容がいかなるものであろうとも、相乗的に力を内包して目に飛込んでくる。
まあ、当たり前のことなのでしょうけれども。
手紙を用いた掌編をふたつ投稿したことに関連して書いてみた次第です。
それではまた今度。




