『コンクリー〜(1)』『尿道から〜(1)』『空から降っ〜(1)』『台風が来〜(1)』『猫の~(1)」』
サブタイトルが長くなってしまったために省略しました。見苦しくてすいません。
一つ目はなぜか詩です。二つ目は変なお題を貰ってしまいました。三つ目はちょっとダーク。四つ目はにゃーにゃーです。
『コンクリートキッズ』
廃墟のビルからクツクツケタケタ
子どもの声が聞こえくる
光も途絶えるビルの中
広がる落書きビールの缶
居場所をなくした若者たちの
最後の最後の隠れ家だった
ビルの奥からクツクツケタケタ
嘲るように笑い声
ある日闇から聞こえてきたのは
こっちへおいでと誘う声
若者たちは怖がるが
一人の少年踏み出した
クツクツケタケタ子どもの声が
クツクツケタケタケ響く闇
一人奥へと少年は
勇気を持って踏み出した
闇の外から待つ仲間たち
叫び声を聞いたんだ
クツクツクツクツ……闇の声
クツクツケタケタ……響く声
ケタケタケタケタ……廃墟のビルに
コンクリート・キッヅは潜んでいる
(おわり)
★ ☆ ★
『尿道からビールが出た日には』
寝ぼけ眼で便器に立つと、なんだか妙に便器の中が泡立っていた。しゅわしゅわしゅわしゅわ。炭酸が弾けるように。俺はしょんべんを放つイチモツを眺めた。泡が付いていた。
「わ、わわわ」
驚いて数歩後じさった拍子に転んでしまった。尿が宙を舞い、俺に降りかかる。最低だ。思ったのは瞬間だった。
「これは、ビール……か?」
運悪く口にも入ってしまったしょんべん。その味はまさにビールそのものだった。
しょんべんがビールの味になってる!
衝撃的事実に、俺の目は一気に覚醒する。同時に俺は、恐怖を覚えるよりも妙に納得していた。
やっぱり一日で三百本はよくないよなぁ……。
いまだ垂れ流し状態のビールの感覚を感じながら、俺は目頭が熱くなるが分かった。
ああ、もうここまできちまった……・
情けなさに、頬を涙が伝った。
禁酒しよう。
リストラのショックを乗り越えるために、まずはトイレの掃除をしようと思った。
(おわり)
★ ☆ ★
『空から降ってきた少女』
空から少女が降ってきていた。青い服を着た、三編みの少女だ。少女の胸の上は遠目からでも分かるくらいに明るく、青く光っていた。
そんな不思議な光景を僕はじっと見ている。駆け出すこともなく、ただここに立って見つめている。
青い少女はゆっくりと落ちていく。不思議な少女。下には大きな穴が開いている。
僕は動かない。少女は落ちていく。
青い光は、暗い大きな穴の中へと沈んでいった。
(おわり)
★ ☆ ★
『台風が来る前にすべきこと』
風が強くなっていた。
木々が揺れる。葉をざわざわと暴れさせながら、大きくしなっている。台風はもうすぐそこまで来ているみたいだ。
車の中で時折とぶラジオを聴いていた私は、刻々と変化する台風情報に集中していた。過去最大最高の勢力を誇る台風。二日後には列島をすっぽりと覆ってしまうらしい。
全く対したでかさだ。そして何とも都合のよい台風である。
ガタガタと、車は舗装されていない山道を進み続ける。石を踏んで車体は大きくはねあがる。
そうさ、出来るだけ山奥がいい。山奥の地盤が緩んだところが最高だ。
なあ、そうだろ。そうは思わないか?
私は後部座席に横たえた妻をミラーごしに見つめ、思わず頬が緩んでしまった。
きっと山全体がお前の墓標になってくれるさ。
妻の腕が力なく垂れ下がった。刺し傷がいくつも刻まれていた。
(おわり)
★ ☆ ★
『猫の集会』
満月が煌々と夜空を照らす深夜。街外れの小高い丘に、たくさんの猫たちが集まっていた。
「にゃー」
騒いでいた猫たちを、丘の一番高いところに座る猫が一喝する。会場は急に静かになった。
「にゃ、にゃにゃにゃ、にゃー」
高いところの猫がそう鳴く。するとあちこちから猫たちが鳴き始めた。
「なーご」
「にゃにゃーにゃ。にゃーにゃー」
「ふーーーーっ!」
「にゃーーお」
「にゃーにゃー」
「にゃーにゃにゃ。にゃーなー。にゃーー」
「にゃにゃ? にゃにゃーにゃーにゃにゃ」
「にゃー」
「にゃーなにゃ」
丘に猫の鳴き声が木霊して、今日も夜は更けていく。
(おわり)