おっさんと出会う
「すいませーん」
僕が声をかけると男性二人は槍や剣に手をかけて、僅かに重心を落とした。
僕も習い事で武道やらされていたこともあったのでおもったが、男性二人は喧嘩慣れしていそうな雰囲気がある。試合とは違う慣れを二人から感じる。まあ、そんなに僕は強くはないけれど、相手の力量を計るのは師範に唯一褒められていたことだ。今は関係ないか。
距離を取りながら僕は改めて声をかけた。
「すいませーん、街はどちらでしょうか?」
そういえば、声がちゃんと出るようになっている。けっこう良い声をしているな。
僕が声をかけた男性二人は疑った様子で、剣に手をかけながら話し合っていた。
「街?― つうか、なんでガキがこんな森に?」
「それより、あんななりだ。化かそうとしてる魔物じゃないのか?」
「人間に化けるとか、んなにヤバい魔物が砲弾虫以外に出る森なら、この先の村はとっく無くなってるだろ」
「だよなぁ」
なんだろう、魔物とか言われてる。
ていうか、魔物とかいるの?
RPGみたい。
ていうか、男性二人はひそひそ話しているつもりのようだが、距離があるのに聞こえまくっている。いい大人なら気をつけてほしいものだ。
「あのー?」
「なんだ、嬢ちゃん」
男です。
男性の一人、顎髭を生やした剣に手をかけているほうが答えてくれたのでそちらに話をふることにする。
「変な丸いのに襲われて森に迷い込んだんですけど、人里に行きたいんです。知りませんか?」
とりあえずの指針である。
所詮は夢だが、森の中なんて、さ迷いたくない。
人がいる場所に出たら場面も展開するかも知れないし、出てくるのが男だけなんて夢は悲しい。
出来るだけ、にこやかに男性へ話しかけたのだが、二人はまだまだ警戒した様子である。
「ニヤニヤ笑ってんなぁ。どういう神経してんだろうな。やっぱ魔物か?」
「見てくれは綺麗だがな…………。どうする?ちょっと刺してみるか?」
槍を持ってるおっさんが怖いこと言ってる。
「やめとけ、上級の魔物だったら命がねえよ」
「確かに、とりあえず話してみるか。嬢ちゃん、丸いのってのはどんくらいのだ?つーか、どっから来た?」
だから、男です。
男だよね?
まあいい。
「えと、水のあるほうから来ました!丸いのは凄く大きかったです!」
ジェスチャーも交えて、大きさを伝えるために身体を大きく使って説明する。
水のあるほうといったのは、川か湖かもわからなかったからだ。
「湖のほうからだってよ。王国からとか信じられん」
「いや、あっこならありえるだろ。おまけにあの容姿に話し方だ。結構、良い家のやつなんじゃ?」
「亡命中に襲われたんじゃないか、だから服も品は良いけどあんなんだ」
暫く、二人で話していて放置されたが槍を持ったオッサンが声をかけてきた。
「おい、嬢ちゃん!」
もういいか。
「この先に村があるついてこい!」
おお、なんだ良い人じゃないか。
ようやく距離をつめて二人に近づく。
だが、二人とも武器を構えたままだ。
1メートルほど距離を残し。
「そこで止まれ!」
髭のオッサンが、剣をかまえて何かを投げた。
革袋のようだが、口をつけるような部分が見える。
「飲め」
飲み物らしい。
拾って口をつける。
苦い。もの凄い顔をしている気がする。
その様子を見てようやく二人が武器を降ろした。