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ギルドでも揉める

「おい、ガキども。とりあえず、銭と素材。俺達に預けな」


「ガキが持つには多すぎるもんなぁ」


僕達の前には筋骨隆々の男が二人。

漫画やアニメでみたことのある光景が目の前にあった。槍や髭のおっさんのように山賊風のファッションに身を包んだ中年が子供に迫る映像は、どんな風に周囲に見えるのだろうか。


*


ウィーグさん達の詰問から逃れ、ドロテアの街へとやってきた僕たちは、冒険者たちが集まるギルド会館という場所に来ていた。


関所もあったのだが、クロさんの社交モードで難なく突破できた。ウィーグさん達の時と違い、同情した門番の方に宿から、ギルド会館までの案内まで、いたせりつくせりの内容だった。


「これ以上はしてやれないが、挫けないでがんばれよ」


そう言って貰い、ありがたさで目頭が熱くなる勢いだった。


そして、ギルド会館である。

ここには三人で足を運んだ。

流石に見た目お子様が二人で入れないだろうとのニナさんの判断である。クロさんは不服そうだったが、ニナさんにはあまり反抗しないのだ。

歳はクロさんが上のはずだが、不思議だ。


それはさておき、ギルドである。

ギルド会館にきた理由は身分証の発行と素材の買い取りが目的である。

今回街に入るときに通行税がとられたのだが、その額が通常より高かったらしいのだ。

身分証を持たない人間に対する処置らしいのだが、これから長旅をする身としては出費はなるべく減らしたい。

門番のおじさんに相談したところ、冒険者ギルドでの登録を勧められたのだった。


「冒険者や商会ギルドは国に関係無く点在していて、それぞれが連携してるから。身分証にするなら、もってこいだ。君ら、冒険者って感じはしないが持っていて損はしないだろう」


これも親切な門番のお言葉である。


三人でギルド会館に入ると立て札を読んで、クロさんが進んでいく。勉強中のニナさんと僕は、まだ文字をすべて読めないので、それに続いた。

酒場が併設されているようで、柄の悪そうな人達がお酒を飲んでいる。昼間から酒とは、他にすることはないのだろうか。


市役所の窓口みたいなカウンターに、化粧っけのないお姉さんが座っていた。ここで登録するようだ。そのお姉さんが、一瞬びっくりしたように見えたのは気のせいだろう。


「登録がしたいのですが。ここでいいでしょうか?」


クロさんが外交モードで話しかけると、わたわたと慌ててお姉さんが準備を始めた。意外と新人さんなのかも知れない。


「ご登録は初めてですか?」


「はい、妹たちも登録したいと思っています」


ニナさんとは人種も髪の色も違うのだが、姉妹で通すらしい。

僕も妹に入れられているのだろうか。


「では、マルス銅貨3枚です。この書類に名前、性別、年齢をお願いします」


「はい。ほら、あなたたちは自分の分を書きなさい。勉強だと思ってがんばるの」


書くのも勉強中なのだが、クロさんはスパルタだ。ニナさんとあくせくしながら、書類を仕上げる。それを受付のお姉さんに渡すとクロさんが銅貨を三枚渡した。

お姉さんが紙を魔方陣の書かれた台に置くと、魔方陣が光だした。そのまま紙が燃えていき、透明な石が三つ残る。

それをプレートにはめると僕らに渡してくれた。

改めてみると、やはり魔法には驚かされる。

僕の表情が面白いのか、お姉さんは少し得意気に言った。


「これで登録は完了しました。これからは魔物の討伐や、依頼をこなしていけばランクが上がっていきます。詳しい説明は必要ですか?」


「いえ」


僕は少し聞きたかったのだが、クロさんが素早く答えてしまった。

確かに冒険者として有名になるのは目的ではないが、残念だ。


「それから、魔物から剥いだ素材があるのですが売るにはどうすれば良いでしょうか?」


そう言って、クロさんが僕の方をみた。

実を言えば、かなり大きなリュックサックを僕が担いでいる。ニナさんも荷物を持っているが、大きさが違う。先程は、それにびっくりしていたのかも知れない。


「はい、ではいったん外に出ていただいて右側の建物へ。そちらの作業場に買い取り口があります」


「ありがとうございます。では、これで」


僕が口を挟む間もなく、登録は完了した。

社交モードのクロさんは頼りになる。

ずっとこれでもいいのだが、クロさんに目に見えて疲れが現れ始めている。

ずっと維持は出来ないのだろう。

後で、肩でも揉んであげよう。


そう思いながら、ギルド会館を出て隣にある作業場に向かう途中で。


「おう、お前ら、待てよ」


と。

声をかけられたのである。



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