打ち上げられた砂浜
「ぐっばぁ!」
良くわからない声だ。
自分自身、こんな声を出したことがなかったが生きるか死ぬかだ。仕方がない。
砂浜を這うように進んで、息を整える。
水を飲んでしまってむせたが、生きていることに感動する。
結構な高さから落ちたはずだが、怪我もない。
かなり、痛かったのに。
しかし、全身びしょ濡れだ。不思議と寒くないが、プールを出たときは何故か暖かく感じるものだから、そんな感じなのかも知れない。
我ながらよく助かったものである。
腕や足の力を抜き、身体を大地に預けて息が整うのを待った。もしかしたら、誰かが通りかかれば助けてくれるかも知れない。
だが、人生都合良くはいかないようで車の音や、人が通る気配もない。身体に改めて力を入れて、顔を上げると辺りを見渡した。
「どこだよ…………」
目の前には、木々が連なる、ジャングルのような景色が広がっていた。
立ち上がり、辺りを見渡すも木々と海原、砂浜だけが視界に広がる。文明の影はまるで見えない。
これは、遭難したということかも知れない。
船は陸地に沿って運航していたはずだ。
コンビニや道路なども見えない場所に流されたのであれば、僕は相当な時間を流されていたことになるのではないか?
そうすると気を失っていたのか。
やはり、都合うんぬんよりも自身の強運に感謝する。溺れて死ななかったことに感動しながら、次の行動に移すことにした。
まず、大声で人を呼ぼうとしたが喉をやられたのか掠れたような音しか出てこない。
まずいと思い、森には入らないようにしながら砂浜を歩くが、いくら歩いても見えるのは海原と砂浜で景色が変わらない。
進路を変えようかと思ったが、森はかなり大きな木が育っていて、とても日本の景色には思えず不気味であり近づく気にはならない。
砂浜に足跡だけがついていく。
しかし、ここで違和感を覚えた。
足をみると靴が脱げていた。
素足だ。流された間に靴下まで脱げたのかとも思ったが、不自然だ。足を止めて、改めて身体をみる。そこでようやく、服装がおかしなことにようやく気がついた。