すごく驚かれる
「痛ってぇぇぇえ!」
右腕を押さえる。滅茶苦茶に痛い。
だが、骨が折れるどころか右手には掠り傷ひとつなかった。なんだこれ、超合金?
超合金が何かは知らないけど。
痛みが薄くなったところで、後ろを振り返ってニナさんとクロさんの様子を確かめる。
結構、衝撃が強かった気がする。
するとそこには呆然とした様子の二人がいる。
クロさんは地面に降ろした時の状態で、ニナさんは地下室から頭だけを出して固まっていた。
ちょっと面白い。
もう一度正面を向くと線と丸の魔物が、鎮座している。破裂したように背中側が吹き飛んで、風穴が空いていた。改めて見ると、とんでもない光景だ。アニメ映画で、こんな風景があったな。
「シロ」
「はい」
「今の魔法はなに?せいごん、いちげき?何で、門も開かず魔法が撃てるの?ていうか、身体に魔方陣でも彫ってるの?どこよ?みせな?」
魔法を撃った覚えがないのだが、クロさんにはそう見えたらしい。ていうか、動かないと言っていた体で這いずりながら、こちらに向かってきている。
ちょっとやめて、怖い。
さっきの魔物じゃないんだから、やめてほしい。
「クロちゃん、無理しちゃだめよー」
それを止めたのは、いつの間にか地下室から出てきたニナさんだった。少し、足をひきずっている。足を怪我しているといったのは本当だったようだ。
「シロちゃん凄かったー。なにものー?」
這いずっていたクロさんを抱き起こしながらニナさんがいう。その最中、ニナさんの首輪がゆっくりと外れた。
「あらー、首輪、壊れちゃったー。みんにゃ死んじゃったみたいー」
ニナさんは自分の事を奴隷だと言っていた。主人が死に、それによって自由になったのだとすればオッサンたちは誰も助からなかったのだろう。
「安もんだったのねー」
はずれた首輪を拾いぷらぷらと揺らして、ニナさんが笑う。彼女にしてみれば、予定より早くに自由になれたのだから、良いといえば良かったのか。
僕としては、素直に喜べばいいのかわからず複雑な気分だった。
それよりも複雑な表情で僕を見ているのはクロさんだ。
色々と納得のいっていない顔をして、僕を見ている。
僕だってよくわかっていないので、話はまた後にして貰おう。
「クロさん」
「……なに?」
「文字、教えてくださいね」
「…………!」
彼女の顔が赤くなる。
何か恥ずかしいことでも話したろうか?
不思議だ。
でも、美少女の照れって、いいよね。
クロさんをニナさんから受け取って抱える。
「とりあえず花畑にいきましょー」
ニナさんの言葉に従って、歩き始める。
もう寒気はない。
おそらく、もう大丈夫だろう。
そんな気がした。