誓言一撃
この体の違和感をあまり考えないようにしていた。
違和感といっても、悪いものはない。
遠くのものも、どんな視界も見えて、夜目もきく。
空から落ちても、石で殴られても傷ひとつつかず。
最低限のエネルギーで行動可能で、毒も効かない。
なによりも、力が強い。
ただの力じゃない。
強靭な力。
内側にある。
それを感じている。
だからこそ、立ち向かえる。
あの魔物に。
僕ではない、僕。
シロならば、立ち向かえる。
魔物はすでにこちらに向かおうとしている。
逃げることは間に合わないだろう。
ならば、立ち向かおう。
腰を落とし。
左足を前に出す。
武器はない。
『ただ、ぶん殴る』
魔物の膨張が止まる。
そして、姿がぶれると同時に前進する。
だが、見える。
魔物の姿が。
力を集約する。
魔物が迫る。
まだ、足りない。
それを補うために。
叫ぶ。
これは、尊敬する男から与えられた。
相手を、一撃で、倒すための宣言。
「誓 言 一 撃 」
足から脚へ。
脚から腰へ。
腰から肩へ。
肩から腕へ。
拳へ。
向かい来る魔物へ。
振るう。
直撃。
衝撃が走る。
右腕が軋む。
だが、僕の身体は揺るがない。
魔物の線と丸がひしゃげ。
その体の向こう側が吹き飛んだ。