始まり
初連載。
稚拙ですが、よろしくお願いいたします。
スローモーションだ。
僕の眼球がとらえているものを理解したのは、当然の事だったのかもしれない。
僕の視線の先で、信じられないものをみるように三人の男の子と一人の女の子が僕を見下ろしている。
空が遠くなる感覚。
信じられないのは僕のほうだ。
修学旅行だった。
二日目のナイトクルージング。
三日目の目的地に向かい、そのまま船で一泊するという洒落た内容だった。
仲の良い友達と離れて、景色をみていた。
それだけだった。
そこにたまたま、去年僕をいじめていたグループが通りかかった。いじめといっても殴る蹴る、金銭を求められるなどはなかったが、とにかく彼らは僕を馬鹿にするのが好きだった。
ジジィじゃん!まだ、生きてたのかよ!
と一人がいうとグループがケタケタと笑う。
僕は白髪が多い。
遺伝的なものらしいのだが、去年からは特に多くなった。
それをみて、彼らは僕をからかうようになったのだが、多少なら僕としても生まれ持ったものだから気にしないのだが、明らかに見下されては気分も悪い。
クラスが替わってからは、なるべく関わらないようにしていたのだが修学旅行で浮かれていたのか、油断していた。
そして、浮かれていたのは勿論僕だけではなく。
彼らも一緒だった。
いつものような白髪いじりが始まり、どうしようもないと判断して僕がその場を立ち去ろうとした。
普段はそれで終わりだ。
だが、今日はそうではなかった。
つれない態度するなよ。
だったか、彼らはそう言って僕の脚を持った。
そして、そのまま宙吊りにされた。
海に向かってだ。
彼らは笑っていた。
こっちは怖くてそれどころじゃない。
声を出した。降ろせ、戻せ。
降ろしていいのー?
と女子が言った。
良いわけないだろ。
でも、それがフラグだったのかも知れない。
脚から一つ、手の感触が消えた。
嘘だろ?
だれかがいった。
違う、間違っている。
それは僕の台詞だ。
彼らは手を滑らせて、支えられなくなって僕は落ちた。
遠かった空が遠くなる。
冷たい波の音がして、潮の臭いが僕を包む。
痛い。
苦しい、苦しい、苦しい。
苦しい、苦しい、苦しい、苦しい、苦しい、苦しい。
苦しい。
そして、いつの間にか苦しくなくなる。
真っ白になった。