六話 回復薬
パァッン!という音が森林の中で木霊した。
赤色のスライムは同族であるスライムを一瞬で倒すと、目を閉じて木にもたれかかっている少女?に声をかけた。
「もう大丈夫やで、お嬢ちゃん。」
赤色のスライムがそう言うと少女?はゆっくりと目を開けた。
わいは今、スライムや。この今、ちゅうんが重要なんやけど。じゃあ昔はなんやったかっていうと・・・なんと俺は人間やったんや。つまり、転生ってやつやな。これでも結構転生前はいけてたんやで〜。なんせ、有名なボクサーやったんやからな。
まぁ、それでも流石に車に轢かれたら死んじまうわな〜。そんでわいが天国みたいなところにいったときに、神さんが転生させたるいうから転生したんや。それは良いねんけどなぁ〜・・・転生したら迷宮スライムやって。しかも、外に出られんのが一ヶ月ちょいといったところや。でも、世界がどんな風になっとんのか見たい、っちゅうのが人情やんか。それでとりあえず、周りの探索を始めとったんやけど。わい、始めて見たわ・・・スライムに殺されそうになっとる子。まぁ、女の子やけん体弱いんかもしれへんけど・・・。
それにしてもあの子すごいべっぴんさんやな〜。あんな可愛い子殺されるわけにはあかんな。助けよ。もしかしたら、めっちゃ仲良くなれるかもしれんし。
そうやってわいは下心ありきで助けに行き、相手をびっくりさせないように、できるだけ優しく声をかけた。
「もう、大丈夫やで、お嬢ちゃん。」
ゆっくりと目を開けた俺は目の前の光景にただただ驚愕していた。だって人間が助けてくれたと思ったから目を開けたのに、目の前にいたのは真っ赤なスライムだったからだ。俺がいつまでだっても声をださないことに不審がったのか、しきりに声をかけるスライム。俺は目の前の生物が魔物だとはいえ、助かったことは事実なので誠心誠意を込めて、礼を言う。
「あなたのおかげで助かりました。ありがとうございます。」
「そ、そんな畏まらんで良いでぇ〜。わいは当然のことをしたまでなんやから。」
目の前のスライムはとても謙遜的であまり恩に着せる気はないようだ。
とりあえず、この話はここで終わりだな、と思って立ち上がろうとしたとき身体の骨やら内臓やらが悲鳴をあげるのを感じた。さっきまで緊張状態にあったので痛みを今、感じ始めたということだろう。にしても、緊張状態になると痛みを感じないということを身体をもって知らされることになろうとは・・・。
俺がどこか安全なところを探そうと思って立ち上がろうとしたのを、赤色のスライムが止める。
「いくらなんでもそんな傷だらけの状態で歩くんは危険やで〜。せめて、身体がよくなるまではじっとしといたほうがええちゃうんか?」
そんなことを言われても、ここでは雨風もしのげないし、魔物に見つかる可能性がある。最弱に負けるような俺だ。次はないだろう。だが、このスライムの言うことももっともである。さて、どうしようか・・・。
「まあ、こんなときに迷宮にあったような薬草があればいいんやけど・・・、わいじゃあ見分けつかんしな〜。」
スライムのそんな独り言を聞いて、俺は思った。俺が真眼を使えば見つけられるんじゃね、と。
よし、善は急げ、だ。まず草の効能を知ることができるか確認する。
雑草:大体どこにでも生えている草。用途/今のところ特に無し
いける!いけるぞ!あとはここら辺にあるかないかだが・・・まあ、一本ぐらいは生えてんだろ。
俺は急いで薬草を探し始める。いきなりテンションが上がったり、目をギョロギョロし始める俺に軽く引いていたが今はこの時間が惜しいので、後で、説明するとしよう。
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ん?、今どっかに重要な物があったような・・・HP回復草、これだ。
HP回復草:HPを回復させる草。ただし、とんでもなく苦い。 用途/水で薄めて飲みやすくした回復薬
「スライムさん!、すみませんが、あの草を取ってきてくれませんか?」
「ん?、まあ、ようわからんがとってくれば良いんやな。ほい!」
スライムが疑問に思いながらも触手みたいなものを伸ばしながらとってきてくれる。マジでありがとうございます。
俺は採ってもらった薬草を意を決して飲み込んだ。苦ぇ。うぇっ、と吐きそうになりながらも必死に飲み込んだ。そして、俺はそのまま気を失った。最近、多いなこういうの・・・。
主人公はまだまだ強くなりません。