三話 ルール
目を開けるとそこは木々に囲まれた、森の中だった。
俺は今後の予定をどうするかを決めるために、まず、自分の持ち物を確認する。俺の持ち物は、いつも肩に提げている黒いショルダーポーチに、身につけている制服と、その制服の胸ポケットに入っている手帳のみだった。何気なく、手帳の1ページ目を開けてみると、そこには見知らぬ文字で、こう書いてあった。
【題名】《異世界のしおり》・・・って、修学旅行かよッ!!こっちはまじめにやってんだよ、そっちもまじめにやれ!
《すいませんでした、まじめにします・・・って言うと思った(笑)》
え!?、何これ⁈ もしかして、今、書いてんの?
《うん、そうだよ〜。今から、説明したりなかったところとかを書いてあげるから〜。》
まあ、それは正直いって助かる話だ。何せこっちは、この世界の一般常識を何も知らないのだから。
《まずね〜、ルールとして、2つ守って欲しいことがあるんだ。1つ目はそれほど大事なことじゃないんだけど〜。出来るだけ目立たないで欲しいんだよね〜。出来る?》
出来なくはないが、何か理由があるんだろうか?
《勇者を助けるうえで、出来るだけ迅速に動けるような状態じゃないと困るんだよね〜》
なるほど。確かに、国のお偉いさんにでもなって一々書類を通さないと動けないような腰の重さじゃあ、助けられるもんも助けられなくなっちまうもんなぁ。なんだかんだいって、まじめなやつじゃないか。
《2つ目はね〜、これは絶対なんだけど〜・・・》
そ、そんなに大事なことなのか?
俺はゴクリと唾を飲み込みながら、次の言葉を待った。
《リア充になんな。》
俺は何度も見直した。ハ?リアジュウニナンナ?これは何かの新しい単語なのか?こういう単語が今、神界で流行ってんのか?
《もう、しょうがないな〜。簡潔に言うと、女と付き合うなってことだよ。》
へ?なにソレ?それも、今回の依頼に関係があんの?
《うん、ちょっとね〜。しばらくの間独り身でいて欲しいんだけど、大丈夫かな〜?》
そ、そんなぁ。俺の唯一の異世界の楽しみになるであろう、鈍感系主人公の異世界ハーレムがこんなところで崩れ去ろうとは・・・
《でもね、これは僕のせいじゃないんだよ〜》
いや、お前以外で誰が悪いって・・・
《魔王さ》
ま、魔王。
《そうさ。僕がこんなメチャクチャな依頼をださなくてはならなくなった原因であろう、魔王さ。》
そうか。魔王のせいで俺はこんな目に・・・
《そうそう。憎いだろう、憎いだろう、君をこんな目にあわせた魔王が。》
ああ、憎い。魔王が憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。
《じゃあ、今からその憎っくき魔王を倒す方法を教えてあげよう》
ほ、本当か?
《うん、ステータスオープンという言葉を熱き想いを込めながら、叫んで!》
わかった。
「ステータス、オーープゥゥゥゥゥン!」
俺は憎き想いをその言葉に込めながら、叫んだ。