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決戦の前に

俺は真っ白な世界に立っていた。

壁なんかどこにも無いのに、全ての音が反響している不思議な世界。


ここがどこかなんて考えるつもりはない。

考えても答えが出るとは思えないし、

なんとなく予想はついているからだ。


……多分夢の中。

さっきまでダンジョンにいたのを覚えているんだから間違いない。

いくら何でもワープしてるってことはないはずだ。

もしそうだったら理不尽すぎるし。


にしてもなんで俺はこんな夢を見ているんだ?

せっかくの夢なら、もう少し面白いものをを見たかった。

こんな真っ白な場所で何をしろっていうんだ。



「何もする必要はない。この世界はお前が見ている夢でもあるが、儂の見ている夢でもあるのだからな」


……お!?誰だあんた!!

周りを見渡すが人影はない。


「ふむ、ダンジョンの中などという特異的な場所で寝たから繋がってしまったのか」


おいコラ!質問に答えろよ!


「煩いぞ。ここで名乗らずともいずれ現世で会うことになるのだから構うまい」


構うわ!俺の脳内存在のくせに……え?

現世で会うの?お前実在してるの?


「無論だ。お前をこの世界に呼んだのも儂なのだからな」


………………は?

頭がフリーズしかけたのを振り払う。


どういうことだよ!

お前が俺をこの世界に連れてきたのか!?


「会ったときに教えてやる。それまで待っているんだな」


おい、質問に答えろジジイ!


「む、もう時間切れのようだな。会うときを楽しみにしているぞ」


おい!答えろよおい!おい!


「しばらく先になるだろうが、いずれは会える……」



-------------



「おい!」


「え!?」


最早見慣れてきた石造りの壁と床。

……夢から覚めてしまったのか。

起きてもなお、ハッキリと覚えている。

あのジジイは一体何者だ……?あいつが言っていたことは多分事実だと思う。

俺の脳内登場キャラにしてはリアルだったし、生意気だった。

何よりも直感がそう告げている。


「お兄ちゃん大丈夫?」


寝起き早々に考え事に耽っていた俺にセラが心配そうに駆けよってくる。

急に大声上げながら起きたせいで驚かせてしまったな。


「すまん、大丈夫だ。2人ももう起きたのか?」


「体をほぐしてくるって言って一回りしに行ったよ」


そうか、俺も……イテテ。

立ち上がろうとすると体が軋む。

硬い石の上で寝たから強張っているんだな。

こりゃ俺もほぐしに行かないとまずい。


「俺もちょっと行こうかな。一緒に来てもらっていいか?」


「うん!ボクもずっと座ってたから体動かしたい気分なんだ!」


俺が寝たままだから、ついていかずに留守番してくれてたんだな。


……つか、セラの肌がツヤツヤしてないか?

石の上とはいえ、ちゃんと寝た俺よりも体調も良さそうだ。


「若いからか……?」


「え……。そんなにボクの胸小さいかな……」


……今の発言をどう捉えたらそうなるんだ。

ここまで来るともう作為的なものを感じるわ!!

別に胸を見て言ったわけじゃないし!


「いや、そういう意味じゃなくてだな……」


そりゃ、アルマと比較すると小さく見えるが、それはアルマが基準としては常軌を逸しているせいだ。

そもそもセラの胸の慎ましさは年齢的に仕方ない。

……まだまだ成長途中なんだから今後に期待しよう。

貧乳だって需要はあるしな!


「なんで真剣な顔で考えてるのかな……?冗談だったはずなのに悲しくなってきたよ……」


「え、なんだって?」


「何でもないよ!!早く行こう!」


怒られた。

今回は失言は無かったはずだよな……?

これ以上泥沼になるのも嫌だし、とりあえず放っておくしかないな。




少し行ったところですぐに2人を発見できた。

こっちは会話の間がもたなかったし、早い段階で合流できたのは僥倖だ。

丁度帰り際だったようで、もうほとんどの魔物は倒した後らしい。

ボス前に少し実戦をしておきたかったが、

元々魔物の少ない層だったのだから仕方ないな。



「ボス戦で普段と違うことって何かあるか?」


「えと、一度行くとすぐには戻ってこれないという話なら聞いたことがあります……」


「というと?」


「ボスフロアへと繋がる転移魔法陣は一度起動させたら、再度の発動までに少々時間がかかるらしいんです」


偵察とか、魔法陣を使ったヒット&アウェイを防ぐための仕組みだな。

行ったからにはしっかり戦ってこいってわけだ。


「他には?」


「思いつく限りでは特に……」


ふむ。

この世界の常識と俺の常識には食い違いがあるから、

挙げられなかった以外にもまだ何かあると考えておいたほうが良さそうだ。

アルマが常識だと思って言わなかったものが俺にとっては予想外ってことがこれまでにも多々あったからな。


結局は自分の目で確かめるしかないのだ。


「ボスとはいえ、やることは同じや。前衛は近距離になって壁役、後衛は援護を兼ねながら火力で押す。ええな?」


頷く。

強くなったかと言われれば怪しいが、場数はそこそこ踏んできた。

活躍を目指すつもりはない。

ただ、前衛としての仕事をやり抜けばそれでいい。

固く握りしめた拳を開いて剣を握った。



魔法陣を皆で踏む。

いつもの白や青の涼しげな光ではなく、

真っ赤な光が俺たちを包み込んだ。

眩しいが目は瞑らない。

僅かな時間も隙を作るわけにはいかないから。




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