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最初の村

……目覚めるとそこは森の中だった。


「ここ、どこだよ……?」

虫の鳴き声以外に返事はない。


俺は……轢かれたんだっけ?

で、ここはどこなんだ?

周りを見渡しても木ばっかり。


これはアレか、異世界に来たのか

夢の中のどっちかだろう。

……悪くない。

どっちにしたって、ここはリアル日本じゃないわけだ。

ちょっとワクワク。

そして歩けば歩くほど俺の五感は告げてきた。

ここは異世界なのではないかと。


1分もしないうちに森の外に出た。

「あれは……村か?」

近くね?普通はもう少し森の中をさまよって、

誰かに助けてもらうとか、

そういうものじゃないの?


だが、だからといって、

ピンチを待つわけにはいかない。

現実はシビアだ。

ピンチになっても助けが来なければおだぶつじゃないか。


そんな賭けをしたくない俺は村へと近づいていった。

それは木の柵に囲まれている小さな集落だった。

門番らしい人がいる。


入れてくれるかな?

まずは情報収集から入るのがお約束なんだが。


「すいません、村へ入れていただけませんか?」


門番はジロジロと俺のことを見てくる。

あれか、これが舐め回すように見るってやつか。

なんか新しい感覚に目覚めそうだね?

……嘘ですって!

正直あんまり良い気分では無いです、はい。


「お前は冒険者か……?いや、それにしては軽装だな」

門番が訊ねてきた。

おお、ちゃんと言葉通じるんだな。

言葉通じなかったら一気に難易度がエクストリームだからな。

第一関門クリアだ。


「冒険者っちゃ冒険者なんですが、ちょっと訳ありでして」

無難な返事を返しておく。

ボロの出る返答は良くないだろうと思ったんだが、

違和感なかったかな……?


「うーむ……。まあ盗賊には見えんし入れてやろう」


少し考えた素振りを見せたが、

入れてくれるらしい。

よしセーフ。


「とりあえず村長の元に案内する。ついてこい」


言われた通りに門番の後をついていく。

身長170後半の俺より頭1つ大きい。

これが平均だったら嫌だなーなんて思いながら。


周りの建物はほとんど小屋ってレベルの建物ばかりだ。

異世界感があっていい感じだな。


村長の家があったのは本当に真ん中あたりだった。

村長の家っていっても、

一回り大きいだけの小屋なんだな……。


門番がノックをすると、

中から「どうぞ」と声が返ってきた。


戸を開けて入った先には……女?

村長だろうか。

しかも割と若い。

老人ってイメージあったけど年齢は40代ってとこだろうか……。


「冒険者と名乗るものをお連れしました」


「……ほう、こんなところに珍しいですね。私が引き受けます。あなたは下がってください」


なかなか穏やかなおばさんだ。

村長の器ってやつなのかな。


「しかし、身元不明のものと2人っきりにするわけには……」


「大丈夫ですよ。それに盗られて困るものもありませんし」


そう村長が返すと、

不承不承という感じながら門番が出ていった。


「さて、コルタニア村へようこそお客人。村長のリムナと申します」


「あ、千堂と申します。冒険者です一応」


「センドウ……。東方の方ですか?」


東方……?よく分からん。


「ええ、一応東方の出です。ちょっと説明しづらい事情でこちらに来ているのですが、地理が分からず困っていまして」


…………?

村長の返事が返ってこない。

むしろマジマジと俺を見ている。


「あぁ、申し訳ありません。話には聞いていたものの東方の方を見るのは初めてでして」


いや、俺は東方の人じゃないんだけどね。

東方の人を間違えて覚えさせちゃってるけどいいんだろうか。

本当の事情を説明するわけにはいかないからどうしようもないんだけどさ。


「お気になさらず。それよりここはどこの国なんでしょうか?」


「ここはゼムナント王国のスターク領です。その中でも辺境にあるのがここコルタニア村です。ほぼ国境沿いと言っていいぐらい端っこなんですよ」


スターク領ってことは貴族制かなんかだろうか。

世界史をとっていたら分かるのかもしれないが、

受験に使わない科目だからとってなかったんだよなぁ。


他には……町の方角でも訊いとくか。

いずれは町の方に行くときが来そうだし。


「一番近くの町はどちらにあるんでしょうか?」


「一番近くとなるとエスニアですね。スターク男爵が住んでいる町で領内では一番大きな町なのですが、1〜2週間程度の距離になります」


1〜2週間だと……!

電車もない世界だと仕方ないのかもしれないが、

何の装備も金も食料も無いまま行ける距離じゃない……。


「もしやエスニアに行きたいのですか?それなら、明日の朝に私の娘と村の商人が向かう予定です。同行してはいかがでしょう?」


願ってもない申し出だ。

出会ってすぐの人に随分と迷惑をかけることになって心苦しいが、

これを逃す手はない。

というか、不用心な気がするけど……。


「是非ともお願いします」


そのとき俺が入ってきたのと同じ戸を開けて女の子が入ってきた。


「アルマ、いいところに帰ってきたね。今、町に行きたいという客人が来ているんだけど連れていけるかい?」


「お客様ですか……?私は大丈夫です。ウィルも気にしないと思います」


可愛い。

大きい目。ややウェーブがかった金髪のロング。

柔らかそうな唇。

……そして大きな胸。


なんとも絶景、世界遺産に申請したら通るだろうか。

これは世界的に貴重な文化だ!

とか言っちゃってな。


「千堂です。よろしくお願いします」


「センドウ……。聞きなれない響きですね……」


「ああ、センドウ殿は東方の出身だそうだよ」


東方ってそんなに馴染みの無い場所なんだろうか。

おかげで色々と知らなくてもそういう設定に見えるから助かってるけど。



もう暗くなっていたので

夕食をご馳走になってしばらくは簡単な雑談をして過ごした。

それだけでも随分と色々なことを聞けたが、

やっぱり違和感を持たれないように情報を得るのは難しい。


寝床は小さな部屋に布団が敷いてあった。

が、慣れない空間ではなかなか寝つけない。


「向こうはどーなってんのかな……」


勿論日本のことだ。

事故にあった俺の体は向こうでは病院にでもあるのだろうか。

それとも肉体も全てこっちに送られて何も残ってないんだろうか。

家族は?友達は?

正直、そこまで未練があるわけじゃないけど、

やっぱり向こうが気になる。

戻る方法が分からない以上どうにもならないのだが。


あれだけ異世界に飛びたいと思っていても、

来てみたら元の世界のことが気がかりになっている。

おかしなものだ。


とりあえず帰り方を探してみよう。

帰るかどうかは別にしても、

手段は確保しておきたい。

それを見つけるのが当面の俺の目標になるのかな。


そんなことを考えてるうちに俺は深い眠りについた。



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