戦場へ
団長の教えてくれた裏道を通ってるおかげか、
俺たちは大して敵と会わないまま、
移動できていた。
あれだけ進めなかったさっきとは大違いだ。
「おい坊主」
「あん?」
「名前、なんて言うんだ?」
おっさんのくせにモジモジしてやがる。
気持ち悪い。
「センドウと呼んでくれ」
こんなおっさんに名前で呼ばれたくはない。
「それはテメェの名前だろうが!テメェの名前知って何が楽しいんだアホ!あの娘だよ!」
「あぁ!?本人に聞け変態!」
なんておっさんだ。
つか、なんで俺の名前だと……?
ああ、東方の響きってことか。
ちなみにアルマは俺とおっさんの速さについてこれず、
少し後ろをついてきている。
遅れ始めてからは大分スピード落としたんだけどな。
「……恥ずかしいだろうが」
キモっ!キモ過ぎる!
何でシャイなんだ!
何で乙女っぽい反応なんだ!
誰得の光景!?
「……いいから自分で聞け」
走りながら気分悪くなってきたぞチクショウ。おっさんがペースを落としてアルマの隣に並ぶ。
「大丈夫か?嬢ちゃん」
「ペースを落としてもらったおかげで大丈夫です。ありがとうございます」
大丈夫とは言ってるが、
苦しそうに走ってるな。
「ところで嬢ちゃんの名前教えて貰ってもいいか?」
「人に名前を訊くときは自分から名乗るものですよ」
お前実は余裕あるだろ。
このタイミングで普通それ言うか……?
「お、おうすまねーな。俺はビリーだ」
「私はアルマです」
……………え、終わり?
おっさんが悩んでるんだが。
戦場で話題探すのやめてくれ。
「……趣味はなんですか?」
お見合いしたいの?ねぇ?
なんで急に敬語なの?
「ジン、あとどれぐらいですか?」
やめろよ、思い浮かばなかったからって無視したら可哀想だろ。
おっさん涙目じゃん。
「団長の言った通りなら、あと5分かかんないと思う」
「そうですか。ならペース上げて大丈夫です。呼吸も整いました」
おっさんも一旦諦めたのか走るのに集中している。
アルマも大丈夫と言うし、
ペース上げるか。
走り始めたときと同じぐらいまで上げてみたが、
今度はついてこれてる。
さっきすぐに息を切らしてたのは戦闘直後だったのもあったのかな。
どちらにしろもうすぐそこだ。




