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部下

フランシスはジンたちと別れてから、

持てる限りの全力で来た道を引き返していた。


残してきた部下は騎士団の中でも特に腕の立つ面々だ。

万が一にも負けることはあり得ないとは思うが、

だからといって、まだ戦いは続いているのに

むざむざ体力を使わせるわけにはいかない。



結果として北西戦線はほぼ壊滅してしまった。

生き残りがいただけでもマシだったとは思うが、

戦力の低下は否めない。

自分がもう少し早く気づけたなら、

もう少し早くたどり着けていたならと後悔が襲ってくる。


だけど後悔に割く時間はない。

後悔は決着がついてからでもできるのだ。

今は少しでも多くの味方を救うために働く義務がある。

騎士団を率いる団長として、

この戦いの大将として。


帰り道は来るときに減らしたからか、

ここはもう戦力を配置する必要がないと思われたのか、

敵兵の姿はほとんど消えていた。


逆にいえば、

他の戦場に敵戦力が集まっているということだろう。

一刻の猶予もない。

早く部下と合流し、

自分も向こうへ行かなければ……。



そんなとき、路上に不審な物体が落ちているのをフランシスは発見した。

そう、あれはいつも見ている騎士団の鎧……。

自分の目を疑った。

あれはここに落ちているべきものではない……。

疲れゆえに見間違えたのだろう。

そう自分自身に言い聞かせるが、

頭ではハッキリと理解していた。


あの鎧は残してきた部下たちの死体だ……。

……しかし、誰が?


確かに並の戦士なら、

フランシスが帰ってくるまでの時間を持ちこたえられないということもあるだろう。

が、残してきたのは騎士団の上位メンバー。

魔法が施された高い防御力を持つ鎧に身を包み、

厳しい訓練を経てきた精鋭だ。


引き際を見誤る素人でもないし、

1人だけならまだしも、

全員がやられる状況など想像ができない。


フランシスでもこの時間で4人共を倒せるかと言われると自信が持てない。

いや、おそらく無理だ。


だからこそ、もしも4人を倒す方法があるとしたなら、

それは逃げる間もなく屈強な騎士全員を仕留められるほどの化物。

予想外の何かがあったことも勿論あり得るが。


それならばせめて予想外の何かがあったことを祈りたい。

騎士たちが敗れ、

自身も疲労と負傷が蓄積した今、

そんな化物を倒せるだけの戦力はもう残っていないのだから。




部下たちを丁重に葬ってやりたかったが、

きっと彼らは戦いの最中に手間をかけさせることを望まないだろう。



騎士団長は動かなくなった戦友たちに黙礼し、

互いの総力が集まった戦場へと走り始めた。


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