丸投げ良くないと思う今日この頃 11
縛られた状態で胡座をかきながら話終えた男は肩の荷が下りたと一言言って目を閉じた。
本当に肩の荷が下りたのか魂が抜けそうなほど脱力している。
だが私は今一番気になることを聞かないといけない。
それは━━━
「事情は分かった。そして今一番重要なことをききたい」
「━━━、何だよ」
語って疲れたのか少し力の抜けた声で返事をする男に問いかけた。
「藍苺にやたら村人が好意的だったのは何で?」
「━━━━は?」
「━━━ん? ちょっと、レンさん?」
男は今日一番の驚き顔で信じられないものを見るように私を見た。藍苺は「え?今それを聞くの?」とい訝しげに見てきた。
私にとっては重要なことです。
「気になるものは気になる。大体、私を睨むのは今の話で分かった。貴族だと思ったから塩対応だったんだろ。でも藍苺は?私と行動を共にしているのに何で藍苺だけは歓迎してた。料理も豪華で、あ、ネロも手厚く歓迎されてたね。ねぇ、どうしてなの?」
男の表情は驚きから呆れ顔に変わったがそんなの今の私には関係などない
「そもそも人形を吹っ飛ばしたり投げ飛ばしたりしたのは一人と一頭。私は2、3人程度。敵視するなら人形を傷つけかねない暴れた方だよね? まさかと思うけど藍苺に下心があるとからな命の保証はしない。返答次第で━━━むぐむぐっ」
「ストップ!ストップ!!落ち着け何言ってるのか分からなくなってきてるぞ!」
白黒はっきりしようと男に畳み掛けると藍苺に後ろから口を手で塞がれた。失敬な、私は自分の言っている事はきちんと分かっている。
男の話を聞いている間にさっきから感じていたモヤモヤとドロドロした感情は何かと考えていた。そして気が付いた。
「いや、話を聞いててやれよ」
「もしかして聞き流されてたのか?」
そこは抜かりない。ちゃんと話は頭に入っている。そして問題解決の糸口も見つけた。それは男にキチンと聞くことだ!
「いや、だからお前が聞いてやれよ話を」
「お前は藍苺に異性としての好意を持っているのかズバリ答えろ」
「━━━えぇ…さっきまで真面目な話をしてたよなおれ」
私も今の今まで真面目な話をしているが?
「どこがだよ。それは俺の十八番だよ。ボケは俺でお前がツッコミだろ!」
「ボケもツッコミもないだろ。コントじゃあるまいし」
「ウガァァァ!! 真面目なヤツがボケ始めるとツッコミが追い付かない! お願いだけらツッコミに戻って!後生だから」
さっきから失礼な。私は真面目に本気だ。
頭をグシャグシャとかきむしる藍苺に真面目に答えると何かを懇願された。よく分からないのでいつも通りと答えても藍苺は頭を抱えたまま踞ってしまう。
あと男ははからずもさっきの話のプロトタイプムキムキ人形の顔と同じになっていたとここに記しておこう。(・_・)これ
それから暫く、男が
「いや、あの怪力を見て人外の血を引いているのかと思って仲間意識から優遇しただけ。馬の方は、馬だし、貴族じゃないし、馬だし」
つまり異性としての好意ではなく仲間意識からの親切心からの待遇の良さだったと。ネロは馬だから馬でした。
「でも蹴られたり投げ飛ばされて嬉しそうにしてたのは?あんたの趣味?父親の趣味?」
「やけに鋭利な質問だな。おれもあれには驚いている。まさか人形たちが被虐趣味の趣向だったなんて」
“一生で多分一番の疑問と驚きだ”と男は後にこう言っていた。
「あの人形は自立型ってことだよな?何で今は動かないんだ?」
あ、それは私も気になる。自立型なら少しの魔力で動けるように作られているからあの人形の中に今たまっている分でも動けるよね?違うのかな?
「あぁ、アレは自立と操作を切り換えられるんだ。今は操作になっているからおれが操れない今はただの木偶人形」
ほほぉ。切り換えて機能付きとは恐れ入った。
「そもそも人形は自立時は頭の天辺にある魔石の魔力で動くんだ」
「でもレンは術者の魔力を隠す為に魔石を使っているって」
「それは操作に切り替わっていたからそう思ったんだな。でもよく気が付いたな。親父の呪いは巧妙に隠されているからおれでも見分けられないのに」
「隠してあるのもがよく見える体質なんだよ。で、自立時は魔石の魔力で動かして同時に術者の魔力を隠すの?」
男はそんなことまで分かったのかと驚いている。今日は何度驚いているのだろう。
「そうだ。操作から自立に切り換えても僅かに魔力が残るから魔石で同時にな」
「でもあの魔石小さいだろ。宝珠でもないのにどこから出力出てんの?」
「藍苺、多分大気中の魔素だよ」
「あんた何者なんだよ。何でそんな短期間で解明するんだよ。本当に貴族のボンボンか?」
ボンボンかどうかは知らんが一応貴族ではある。貴族(母親は女伯爵)出身で私自身も子爵。
さて、どう説明しようかと思っていると
「なぁ、頼む・・・おれも人形たちも国に何かする訳じゃないんだ。ただ静かに過ごしていたい」
「国がそれを許すかは私の一存では決められない。そもそも村人が一人もいないなら廃村になる」
「・・・やっぱりダメか?」
「絶望的だと思う」
男は俯いて動きを止めた。泣いているのだろうか?
同情はするが、私にはどうすることも出来ない。精々が王に直接報告せずに殿下にすることしか出来ない。殿下ならお人好しだから悪い様にはしないだろう。ここの領主はどうにも出来ないが、この村をしっかり管理出来ていなかった領主は罰則は免れないだろうが。
殿下なら秘密裏に領主と取引してどうにか出来そうだな。
「私は報告する義務がある」
「なぁ、レン。どうにか」
「私は殿下に報告する。その後どう動くから殿下が決めること。━━━いい?私は報告するだけ。後は自分で交渉なり何なりしなよ」
「・・・」
「私の上司は愚か者じゃないからある程度条件も有るだろうけど、悪い様にはしないよ」
殿下ってお人好しだけど義務を放置する無能には容赦ないからなぁ━━━この村の事情を知ったら、
「ここの領主生きてるかなぁ・・」
「いきなり領主死んでるの!? 何があったお前の頭の中の領主」
「お前の上司に殺されるのか?」
「あり得るね(領主が)。抹殺されるかもね(社会的に)」
私の言葉に男は受け身もとれずに後ろに倒れ動かなくなった。生きてはいるが気絶してしまった様子。
少しの意地悪し過ぎたかなぁと微笑みながら男を見ていると
「やりすぎだぞレン」
「からかいすぎたね」
「そんなに・・お前って嫉妬深かったか?」
呆れ顔で嫉妬深さを認識した藍苺であった。
ごめんね殿下。この件については丸投げします!
でも貴方の白の王の不茶ぶり聞いてるのでどうにかして下さいとしか言えません。
・・・・あれ?そういえば私達何しにここまで来たんだっけ?
押し付けられた領地開拓はまだまだ先な紅蓮なのでした。




