丸投げ良くないと思う今日この頃 9
いやー森林浴って何でこんなに気持ちのいいものなのだろう。
「マイナスイオンが出てるからじゃね?」
それに青い空にあの変な形の雲なんて面白いよ。山に帽子みたいに乗っかってて。
「あれ昔レンが言ってたレンズ雲じゃね。天気が荒れるって雲だったよな」
鳥も囀ずっていて動物の声も聞こえて賑やかだし。
「鳥の声は警戒音だって言ってたよな?この動物の声も唸り声だろ!」
そして今どこかで太鼓のような音ときれいな光が・・・・
「それ雷鳴ぃ!! そんで稲光ぃぃ!!お願い戻ってきてレン頼む後生だから現実戻ってきてぇ!!!」
(´・―・`)
「お願い!本当におねがい!!戻ってきてぇぇぇ( ノД`)」
・・・・あ、ども。紅蓮です。
今私達は森の中を歩いてます。いやー森林浴って良いですねぇ。ふぃとんちっと?ってやつですねぇ。日々の心の疲れが洗われるような爽やかさですねぇ。
都会の石畳か敷かれ整備された場所は街路樹が申し訳程度に植えられている程度━━━━
「本当に、本当に戻ってきて!!ねぇレン!!?」
━━━はぁ、わかりましたよ。現実に戻ればいいんですね。
今度こそ本当に今日は。現実に無情にも引き戻された紅蓮です。今の状況を説明しますね。
死屍累々
以上。
「レンさん!?」
━━━村人、私殺そうとした。私反撃。村人返り討ち。村人倒れる。慌てて脈確認。し、死んでる!
以上。
「うん、ありがとう後は俺が説明するからもう休んで。休んでてくださいオネガイシマス」
私の顔は始終(´・ー・`)な顔だったらしい
▽△▽△▽△▽△▽△
紅蓮ことレンが放心状態なので俺、藍苺が簡単に説明する。
あの妙に気持ちが悪い━━俺的には作り物みたいにニコニコしてて変に見えた。あと殴ったりしたときなんか土嚢を殴った様な感じがしたのも変に感じる━━村人に空き家を借りて眠って起きた次の朝。
案の定少し力を入れればバキッんと音がして扉は簡単に開いた。勝手に鍵かけて閉じ込められたのだから遠慮なんてしない。特に問題ない風を装って開けるとそこには・・・・
「扉を開けるとそこは屍の山でした」
「まだ死んでない。気絶してるだけだよ」
レンが結界に防犯機能をつけていてらしく見事に掛かったようだ。マヌケにも何人も挑戦したらしい。何でこんな大人数が倒れても扉に近づいたんだ?
それはレンも不思議がっていた。レンの予想では警戒されて武装した村人達に囲まれていると思っていたらしい。
それにしても見事な人数が伸びてるもんだ。あとレンが予想したような武装は見られないな。そういえば昨日の襲い掛かってきた村人達も基本素手だったな。村なら農具くらい有るもんじゃないのか?
「藍苺見てこれ」
「何々」
俺が昨日のことを思い返している間にレンは村の中を一通り見渡していたらしく気になるものを見つけたようで俺に話し掛けそれを指差していた。
レンの指差していた方向にあったものはボロボロに錆びた鍬と思われる錆びた金属片と木の棒だった。多分家の壁に立て掛けられていたのだろう。それにしてはボロボロになりすぎている気もする。
「ここまで錆びるなんて。何年も雨にさらされてもここまで錆びるには最低でも10年はかかるかも」
そういってそれに近付いて錆びたものを摘まんでみる。レンの指に触れたそれは本来の金属の光沢もなく赤い錆びがポロポロと零れてただの錆の粉になってしまった。
「これ10年なんてもんじゃないよ。もしかすると30年は経過してるかも」
そういって次は側の木片を摘まむ。こちらもボロボロと形を保てずに崩れてしまった。
この世界では農具に使われる木はとても丈夫で腐りにくい物を使うらしい。日本でもそうだったかなんて俺は知らないけど、この世界には理解できない様な摩訶不思議な事が数えきれないほどあるので疑問に思うだけ無駄だと学習してきた。
なのでレンの説明曰く、鉄よりも雨風にさらされていてもここまで朽ちるには相当の時間が経過しないと可笑しいらしい。
まだ起きることのない村人を横目で確認してから俺も村の中を見渡してみる。
だがレンの様に何かを見つけることは出来なかった。
なんの成果もなかった俺の隣でレンが鋭く短い口笛を吹くと
『ぶるるるるるっ!!!』
少し遠くでドカッ、バキッっと何かを壊す音の後に雄叫びのように嘶くネロが爆走してこちらにやって来た。
口笛で呼べるってなにそれ羨ましい。
「ネロは間違えなく無事」
「ネロって時々中に人が入ってるんじゃないかと思う時があんだけど」
「それはネロだからだよ」
もう俺はネロのことに関しては突っ込まないぞ。
もう一度村人が起きそうにないか確認してみるが、見た感じ起きないだろう。俺もレンも何かよく分からないけど近づきたくないのだ。なんでだろうな。だから目視で確認。
あれかな、不自然な見た目だからかな。顔はヒョロイのに体がムキムキだけら少し違和感を感じるんだろ多分。
ここには居ない村人に見つかるのも嫌なので隠れながら気配を探りながら━━俺じゃなくてレンが━━辺りを探索する。やはり他の家の壁の近くに農具の残骸らしきものが散らばっている。
それにしても異様に静かだ。俺の足音とネロの蹄の音以外聞こえない。レン?レンは論外。だって気配も無しに獲物に忍び寄るハンターだぜ?普通なら分かんなけど今の状況で足音消すだろ。
俺たちの足音でバレるけどな。
隠れて進んでいると言ってもネロはでかいので隠れていない。むしろ目立つ。目立っても関係ないのはあの扉に群がって気絶している村人以外に村人が居ないからだ。
あれから30分は村を回っているが誰一人とも遭遇していない。
不気味に感じて背中に悪寒が走った。レンは何かに警戒して辺りを隙なく見ていた。
本当は直ぐにでも村を出るべき何だけど、例の領地にここは近いので何か調べておかないと後々大変になるからってレンはまだ調査する気らしい。でも顔には「今すぐに帰りたい」と書いているようだ。
「・・・・おかしい」
「それは分かる。今更だ」
「・・・おかしいんだ、藍苺。」
どうしたんだ改まってと言おうとした俺はその一言が出てこなかった。
何故かって?
レンによって足払いをされて仰向けに倒れたからさ!
その後は怒濤の展開で俺は何も出来ないまま、レンに担がれネロに乗せられあれよあれよと村から森へとあっという間に逃げてきた。
後ろを見ると首が変な方向に曲がったまま走ってくる村人の姿が!
恐かった。B級ホラーな見た目だけど現実で見ると洒落にならないくらい恐かった。
首が変な方向に曲がっている村人は5人。その他にも後ろにムキムキ村人が追いかけてきている。ざっと見ても昨日より数が多い気がするが、レンに聞こうと思っても舌を噛みそうなので聞けないでいる。
「何も口に出すんじゃなくて念話で話せばいいでしょ?」
「・・・(その手がありました!)」
念話で聞いた説明では俺に足払いをかけた後、俺が頭を打たないように片手で背中を受け止めて流れ作業のように俺の後ろに現れた村人の首を空いているもう片方の手で手刀を繰り出し意識を刈ろうとしたが首が変な方向に曲がったらしい。
レンは俺とは違って手加減を間違えるなんてヘマはしない。悔しいが俺より対人は慣れている。
驚く暇もなくレンは俺をネロに乗せて村から脱出を計るも、追手四人が進行方向から来たので仕方なく一人のど手っ腹に蹴りを入れて吹き飛ばしたらしい。すると先程の首が曲がった村人の時に感じた違和感と同じ感じがしたそうだ。
特に感触が違ったらしい。・・それを知ってるレンに少し闇を見た気がするが今は頭から遠ざける。仕事内容がアレだからな。
村人の首を手刀で曲げたときは「圧縮した砂の様なものを殴った」様に感じた。骨があるような感覚がなかった。首だよ?骨がないなんてあり得ないよ? 人外ならあり得るかも知れないけど。
蹴ったときは手刀の時とは違って「固い金属の塊を蹴った」様だったらしい。痛そうだ。レンは全く痛くなさそうにしている。俺だって金属の塊を凹ませたり割ったり出来るだろうけど━━出来るとは断言できない━━レンは何の違和感もなく平気な顔している。どういう鍛え方していらっしゃるのる?
そして他の3人も蹴り飛ばし投げ飛ばし、追い付かれそうになって少し強めに蹴ったら首が曲がり、計5人程の村人が首が曲がった状態になってしまってらしい。
追いかけてくる村人は昨日のように叫んだりせず一切無口で余計に恐い。
どうやら結構森の中を走っていた様でレンはこの村人を完全に敵と認識したようでマジなトーンで終わらせると言っている。
レンって敵と判断すると途端に容赦無くなるよな。
そして冒頭に戻るわけだ。
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犯人は「まさかこうなるなんて思いもしなかった」などと供述しており、被害にあった村人は40人にのぼり、5人は首が曲がり歩行困難な状況で━━━
「もういいから。レン、現実を見ろ。死んでないし、最初から生きてないしコイツら」
「気分的に罪悪感がね、半端ないんですよ」
「お前の基準俺さっぱりわかんねぇーわ」
説明しよう!
森の中を逃走中に何故だかイラッとしてきたので追いかけてきた村人(人ではない)に反撃。すると何と全員動かなくなってしまった!脈をとると脈も息もしてなーい。
あ、何だコイツら生き物じゃないジャーン♪━━━
は?
ムキムキ村人は人形でした。
ま〜た面倒事の予感がする…




