表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/87

丸投げ良くないと思う今日この頃 8

 人って二階建ての高さまで飛ぶんだね。落ちてもピンピンしてるなんて凄いね。漫画でしか見たことなかったよ人形に空いた地面の穴なんて。


 うぁ~人身事故多発してるね。馬に踏まれて吹き飛ばされて何でピンピンしてるの?何なのこの村。



 この村はラスダン手前の最後の村ですか?最果ての村です?そうですねきっと魔物を素手で捻り潰すなんて日常茶飯事なんですね絶望します。



 現実逃避って周りが騒がしいと出来ないものなんだねはじめて知ったよ。


 どうも紅蓮です。目の前で繰り広げられる非日常を眺めて過ぎ去ってくれないかと薄い希望を願ってみるけど無理そうなので現実に戻ります。



 ━━━説明必要だよね。したくないけど、します。




 村に入って最初の第一村人は腰の曲がっていないお爺さんって見た目のムキムキお婆さん。

 ・・・え?間違えてないよ。ムキムキのお爺さんみたいなお婆さん。

だってね甲高い声で「きぇぇぇえ」って叫んでいたし・・・まぁ人は見た目じゃないって言うけどこの人は見た目通りでした。


 こちらに気がついたお婆さん━━もうムキムキもお爺さんみたいなってつけるの面倒━━は一瞬で距離を詰めて出会い頭に殴りかかってきた。

 避けた。ビックリしたけど全力で避けた。藍苺は顔に出てたけど私は顔に出さずポーカーフェイスで避けた。でも実は驚きすぎて表情を出す余裕がなかっただけなんて言えない。


 ネロは華麗に避けてお婆さんに後ろ足蹴りを繰り出し吹き飛ばした。


 それを皮切りにワラワラと村人達が襲ってきたので吹き飛ばした。ネロが。



 そのあとはもう私は見ているだけだった。たまにこっちまで来るムキムキ村人━━半分以上がムキムキに普通の顔の異様な姿━━を相手の力を利用して投げ飛ばしはするが、大半はネロと藍苺か暴れてブッ飛ばしている。


 そう、藍苺もである。


 いつから戦闘狂になってたの?え?結構前からだって?



 ━━━━そうだったかも。一人で討伐依頼受けてるのすっかり忘れてました。そうね、そうだったかもね。



 ネロは巧みな回避で翻弄しつつ隙をついての後ろ蹴りに前足による体格を生かした踏みつけに相手に普通の噛み付いて放り投げるなど多彩な技でけちらしている。


 対して藍苺は鞘に入ったままの剣で縦横無尽に大立ち回りを繰り広げている。


 もうねあの一人と一頭だけで良いんじゃないかな?




 大乱闘村人ブラ━━━じゃない、けど大乱闘は間違っていない━━━を始めること一時間ほと経過しました。漸く決着がついて藍苺は高く積み上げられた村人の屍(まだ生きている)の山の頂点に足を組んで偉そうに座っていた。ネロは余裕そうに欠伸をして生えている草を食んでおります。

 現実を見るってある程度覚悟がいるって本当だね。何してるの藍苺さん?村人やっつけて良かったの?攻撃してきたから正当防衛?過剰防衛に見えるけど?━━━立ち上がってまた襲い掛かってくるから伸した。━━━━ならいいか。




 もう私は考えるのを止めたい




 藍苺を屍(しつこいけど生きてます)の山から藍苺を下ろしてジト目で見ると少し罪悪感があったのか目を逸らされたのでそのまま見つめていると正座をしようとしたので止める。

 うん、今しなければいけないことは正座じゃないよね?ネロも無関係って顔してるけどあの山の村人の頭についた蹄の跡見えてるからね。目を逸らさないでくれない?



「すいません」

「━━━1日中ネロの背中で退屈だったのは理解できるし、体を動かしたいのも分かるよ、分かるけどね。これはないと思うんだ私」

「誠に申し訳ありません・・」


 藍苺の後ろで呑気に草を食んでいたネロが不穏な気配を察知したようで私達から離れようとしていたので


「ネロ?まだ話は終わってないからストップ」


 何故ばれたし!な顔でこちらを見るけどその後はなにも言わずににっこりと微笑んでおいたらビクッと反応して少し怯えた様にもとの位置に戻った。


「藍苺、きみは手加減が苦手なんだから無闇に人をブッ飛ばしたりしてはダメって、私言ったよね?」

「はい。何回も口を酸っぱくして言っていました」

「それで?」

「山を築くほど大乱闘の大立ち回りは駄目でした」

「そうだね」


「━━━ネロ動くな」


『━━━ぶるるっ・・・』



 懲りずにまた逃げようとしたのでそちらを見ずにネロを静止させたが今度はまだ止まらなかったので目だけそちらを見るとネロは固まって返事をした。ついでに藍苺も固まった。



「どうするの?この山」

「━━━一先ず山を崩して一人ずつ寝かせようか?」

「━━正直言っても良い?」

「どうぞどうぞ」

「どこから崩せば安全に運べそう?」


 絡み合って重なっているゾンビの様な村人崩すだけでも一苦労だろう。しなくてもいい苦労をするはめになったので少し減なりした私であった。




 日が暮れて空に一番星が輝くころ。



「まさか起き上がって自分で家に帰っていくなんてね」

「やっぱりこの村人可笑しいぞ」

「きみが言うか」

「俺は混血ですから」


 私達は村人に空き家を借りて休んでおります。私には布団も用意されてないけどな。



 時は少し戻り


 村人たちは目が覚めると自分で立ち上がりゾロゾロと藍苺とネロの前にずらっと並んで土下座し始めた。さながら王に膝を折る家臣の様だった。そして私は睨まれた。何で?



「儂ら村人全員を倒すとは。感服致しました。長として認めます。さあ、家にご馳走も用意しておりますので・・・」


 一際ムキムキな村人が話を切ると一斉に頭を下げていたムキムキ村人がこちらを見て「さあさあぁ!!」と大合唱を始めたので少しドン引きしてしまったのは仕方ないと思う。


 そして私は睨まれた。しばらく私を睨んだら興味を無くしてのか藍苺を見つめて目を離さなくなった。居心地が悪くなったのかネロが私の肩を唇で軽く噛んだ。甘えて頭を押し付けたり落ち着きがない。ネロの後ろを見るとこちらにもムキムキ村人がネロをキラキラした目で後ろ足にしがみつこうとして蹴られてる。


 馬の後ろは危ないから皆は真後ろには立っては駄目だよ。


 そしてネロが私に甘え始めたらまた睨まれた。


 藍苺はこの事態をどうしているかと隣を見ると青ざめて絶句していた。声もでないほどだったらしい。



 若干白目を向いていた気もする。



 黙って見ていると藍苺の足元に村長?がすがりついていたので正気に戻った藍苺に蹴り飛ばされていた。そして恍惚の顔で戻ってくる村長は気持ち悪かった。そしてやっぱり私は睨まれた。


「━━お連れ様も一応・・おもてなしさせていただきます。どうぞ我が家においでくださいませんでしょうか?」


「「「どうか、何卒!」」」


「・・・どうしたい? 俺は居たくないけど・・」

「どうしたいって、私歓迎されてないから」

「俺はお前が居たくなかったら出ていくことに俺は躊躇しない」


 藍苺のその言葉にまるでこの世の終わりの様な顔をする村長(もう村長で良いよね)と村人達。そしてまたもや睨まれた。もう不思議に思うことはない。こいつら私が気に入らないのは理解した。理解すると睨まれる都度イラッとする。


 後ろに居る村人に更にイライラしているネロが慰めて~と顔を頭に押し付けてくるので馬特有の長い顔を撫でる。するともっと撫でて~とネロが甘えてくる。本当に可愛いなぁ。癒される


 ネロに構っていると藍苺がくっついて来た。右にネロの顔、左に藍苺が腕に絡まって来たので身動きがとれない。

 それと、どさくさに紛れて腰に腕を回さないでくれます藍苺さん。暑苦しい。あと、また懲りずにネロの足にすがり付いてくるのいい加減止めてくれません?


 

 腰に回された腕にこれ以上引き寄せられない様に手の甲をつねる。それでも手は離さなかった。そこまで執着するのか。



「なあ、やっぱり帰ろ?ここ居心地悪い」

「━━帰してくれる様に見える?」

「━━━━(やっぱり息の根止めとけばよかった?)」


 ボソッと藍苺かなんか言ってたけど聞こえない。


 話が進まないので警戒しつつもお呼ばれに預かることに。ネロは牛舎が有るそうなので一応屋根のある場所で休んでもらおう。疲れ知らずなネロだけど今日は走りっぱなしだったので丁度いいかも?


 案内されたのは村でも大きな多分村長の家。もてなしに大量の料理が運ばれて来ては食べろ食べろと薦められる。勿論藍苺にだけ。

 私はかなり離れた場所に案内された。

 私の前には水が入った木のお碗と粟が大量に入ったご飯。梅干しがあったら良かったなぁ。出して食べていいかな?


 梅干しを取り出そうかと考えていると隅っこでワラワラしていた村人と村長辺りがザワついていたので何があったのかと見てみると藍苺が案内された場所からこちらに来ようとしていて止められていた。

 止められはしたが強引にこっちに来てしまい私の隣にドカッと座った。


「座布団いる?」

「お前には座布団も用意されてないのに?」

「いや、梅干しを出すついでに座布団出そうかと」

「何でそんなに冷静なの・・・」


 いや、悪意はないからねこの村人たち。敵意は私だけ向けられているけど、排除しようとしてないし?それに料理には毒なんて入ってないし。まだ慌てる段階じゃない。用心はするけど。


 それに出されたものは差が有るけど出されるだけマシ。異世界を放浪していた頃は理由もなしに毒を盛られることなんて結構あったからねぇ。それに比べれば天国じゃない?


 なんて念話━━予め設定すれば念じるだけで会話ができる便利な魔術━━で話したら呆れて



「(お前のそのおおらかさって諦めなのな)」

「(そんなことないけど?)」

「(いや、絶対可笑しいぞ)」


 心で会話しながらもやはりくっついてくる藍苺に苦笑いしながらも座布団と梅干しを出す事は断念した。出されたものに何かかけて食べるのは失礼なかって


「(いやいや、格差が激しいもの出されて感想がそれ!?)」

「(だって粟もきびも嫌いじゃないし)」

「(最後には「体にいいし」もつけるんだろ。お前はもっと欲を出していいと思うぞ俺は)」


 そんなことはない。出来ることなら1日中ゴロゴロしたいし、なーんにも考えずに寝ていたい。でもそれは今は許されないことだからしてないだけで、欲はちゃんと人並みにあるとおもう。



 藍苺が私の隣に来た辺りから村人の反応は凄かった。何がなんでも私から離したいのかあの手この手で釣ろうとしていた。でも藍苺は無視し続けている。その強情さも凄いが村人のしつこさも凄いと変なところで感心している私がいた。




 そして結局私も藍苺も一口も食べることなく今夜の寝床である空き家に案内された。寝床に案内される時も案の定離されそうになったが藍苺が断固拒否したために離されることなく同じ空き家に案内された。そして私の布団はなことも最早お約束。別に屋根と壁があればどこでも眠れるから良いけどさ私。



 さて、空き家とは言ってはいるがこの窓も格子戸もない、おまけに扉は鍵が掛かっている家からどう出ようか?



「完全に閉じ込められたな」



 呆れたように藍苺は言う。けれど焦りは全くない。



 それもそのはず。扉に掛けられた鍵は南京錠の様なもので藍苺が少し力を入れれば簡単に壊れる。ムキムキの人間を一時間近くも投げ飛ばし続けるスタミナと怪力があるのだから当たり前だとおもう。

 それなのに村人はこんな簡単に抜け出せる場所に閉じ込めるなんてどういう意図があるのか。それとも頭の中まで筋肉が詰まってるのか。



「で? ここで寝る?寝るなら俺と布団共有だから」



 布団に入り「バッチ来い」と言いたげな顔で布団を捲ってバフバフと自分のとなりを叩いている。が、無視する。



「村人達の意図が分からない。何故閉じ込めるようなことをするんだろう」

「え!スルーするの━━━━何でって、何かあるからだろ」


 傷つくなぁと言う目で見てきたので少し睨むと真面目に返答してきた。


「そもそも何のためにあんな豪勢なおもてなしをしたの?」


 その疑問に藍苺は顎に手を添えて考える。


「そもそもが俺がアイツらを伸したのが原因なんだろ?」

「確証はないけど多分」

「なら、強いやつをもてなしたいとか?」


 成る程? それなら私を睨むのは筋が通っているかな?


「ほらレンは完全に傍観決めてて流れ弾が来たら対処するってスタンスだったから強いと思われてないんじゃないかと」



 そう言われてみれば、私以外は皆は積極的に闘ってた。



 でもだからって閉じ込める?



「うーん。昔話では旅人を獲って喰う化け物集団とか出てくるけど。この村も特殊とか?」

「特殊なら地図には注意書されてると思うけどなぁ」



 この地図国が出してる信用出来る物なんだけど。もしかして意図的に隠されてた?もしかして人喰いの村って隠されて私嵌められた?いやいやそんな訳ないだろ…


 でもあるとしたら誰に?・・・・・駄目だいっぱい敵がいるから特定できない。


 いやそもそもが人喰い村ってのが早とちりの場合がある。私たちを食べる気ならもっと私にも好意的なはず。なのに私には塩対応。これは人喰いの線はないとおもう。



「まぁ、一先ずお互い離れずいた方がいいって。さあ寝よう」

「・・・そのワキワキと動かしている手を止めてくれたら寝るよ」


 今の藍苺の顔は両頬を思いっきり引っ張りたくなるほどニヤケている。あれだ「殴りたいこの笑顔」な顔だ。

 考えても確かに今の状況は仕方ないと諦めて藍苺の隣に体を滑り込ませる。すると自分から誘った癖にあたふたしている藍苺を無視して目を閉じた。


「えぇー。もう寝るの。俺のドキドキを返せぇ」


 煩い声を意識の外に押しやって眠る。



 勿論対策はばっちり。扉を開けようとすれば電流が流れて意識を強制シャットアウトする結界を掛けておいた。侵入者に悩むことなく眠れるだろう。これ遠くに封じた何かの記憶の知識ね。



 次の日の朝、扉前に屍の山がまた築かれているとはそのときの私はまだ知らない。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ