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丸投げ良くないと思う今日この頃 6

のんびりしてると思う

 風は清々しく清涼感のある瑞々しい緑の匂いを運んでくる。揺れる木々や草は楽しそうに音を奏でる。

 遠くで鈴虫か何かの声が聞こえるが姿は見えない。


 高い木々の隙間から澄んだ空色が見える。そして風に乗っても小さな雲が見え━━━━



「現実逃避は充分か?」

「駄目だまだ足りない」



 門をくぐるとそこは指定された場所でなく・・・



「何処だろう」

「俺が聞きたいよ」

「どこなんでしょうね~」




 どうしよう



 はぁ、またですか?なんなのホント。何で次から次へと・・・



 先ずは現在位置の確認をする。高い場所から見れば場所も分かるかと一番高そうな大木の天辺まで登り辺りを見渡す。



「なにか見えたかー?」


「うーん、あ、見えた見えた。」


「見えたならここがどこか分かれば良いけどな〜」



 現在位置は予定位置から少し離れた場所のようだ。良かった、これなら問題なく出発出来るだろう。藍苺にも教えた。


 何故予定位置がずれたのかは分からないが一応母さんには連絡しておく。何が原因か分からないので用心のためにね。


 それにしても良かったよ。知らない場所に出たときはどうしようかと思った。転移門は出口から出たら消えてしまうからね。一方通行なんだ。私有地とは言え誰も居ない場所に入り口用の転移門は置けない。防犯面でもメンテナンス面でも物理的に門を置く事は避けたい。結構メンテナンスは頻繁にやらないといけないからね。精密機械と同じで。


 今回の事ももしかしたらメンテナンス不足だったのかも。ここの門最後に使ったの何時だっけ?



 まあ、今は報告して私達は目的に行くことにする。もうかなり時間をロスしてるのでそろそろ先に進みたい。




 山小屋と地図を照らし合わせて道を探す。目的地は道がないが途中までは道があるので活用しない手はない。まぁ、途中から面倒になって空飛ぶだろうけどね。


「太陽の位置が━━━だからこっちが東。で、道が━━あれだね」

「もうネロで飛べば良いんじゃないか?どうせ道がなくなったら飛ぶしかないだろ?」

「そうなんだけどね。できれば宝珠は温存したいし・・・」

「あ、そうか。最近は忙しくて作ってないんだったな」


 空を飛ぶときに使う『姿を隠す』宝珠は手持ちが少ないのだ。元はもっとあったのだが、最近は作らず消費ばかりしていたのを昨日思い出したのだ。完全な見落としである。


 なにも空を飛ぶときに絶対に姿を隠さなとダメなわけでない。気分の問題だ。でもたまに喧嘩を吹っ掛けられら事があるから隠したほうが安全というだけである。


 誰に喧嘩を吹っ掛けられって? 人間にも魔物にもだよ。


 王都を離れれば山賊も居るし魔物は当たり前のようにいる。何より交通手段が馬車が一般的な世界なので襲いやすいく、山賊も魔物もよく旅人や行商人の一行をカモにしているのだ。


 魔物は忌避薬を持っていないと寄ってくるし、山賊は弓矢や魔術何かで落とそうとするやつもいる。


 しかし、飛べる様な騎獣━━動物ではない特殊な獣を調教して手懐けたもの。魔物と変わらないほど強いものもいる。ネロも馬ではなくこの部類━━に攻撃を当てて落とすなんて余程の手練れ以外は無謀な手段なのでただうざいだけである。



 が、かすり傷は負うこともあるので姿を消すのが私にとっては基本かな。今回のような遠出は今まで無かったけど、異世界では用心するに越したことがないと学んだのだ。


そういえば藍苺は討伐で遠出もしてるはずだろって思ってたけど、遠出しない近場の依頼ばかり受けてたんだってさ。本人曰く「ある意味職権乱用だからいい顔はされないけど」って伏せがちに言ってた。

まぁ、身分的にも降嫁したとはいえ元王女にはあんまり危険な依頼は出来ないよな。ダメなんだろうけどね。


さて、唐突だけどこの国の説明を少しだけしよう。


 白の国は周辺諸国から見たら大国だ。

一番古い国は黒の国だが、建国して数千年は経っているらしく正確なことは分からない。世界で二番目に古い国だと言われている。

 そのため道はしっかりと石畳に舗装されていて道幅も広い。どのくらいかと言うと日本の公道三本分かな?ね、広いでしょ。これが延々と広い平原や森をまーっすぐつづいているのだ。

 何時間もブッ通しで馬に揺られていれば居眠りして事故るレベルに真っ直ぐ。



「この道って国全体に広がってるんだろ?」

「そう。全てこの目で見たことはないけれど、地図を見た限り太いこの道を主軸にして枝分かれしてるんだよ」

「道に迷いそうなほどごちゃごちゃしてるなこの細い線」


 私の後ろで地図を見ながら細かい線で書かれた道に文句を言っている藍苺は地図に気をとられ過ぎて少しバランスを崩すが自力で元に戻る。手放し運転は車も馬も危ないから止めた方が良いのだが聞いちゃいくれないので放っておく。前にも落ちたのにぴんぴんして懲りもしない。諦めも肝心だよね。



「時速何キロか分かんないけど車より速いんだから落ちないでよ。」

「んー。分かったよ。レンの腰に腕を回す作業に戻る」

「作業って・・」


 たまに言動が怪しくなるよね藍苺。地図をしまって掴まるのは良いのだけど、お腹辺りに回した手をワキワキするのをやめなさい。痒い。後背中に頬擦りするなら。何か嫌だ。スンスン鼻を鳴らさないで。匂いかがないでよ


「落ち着く背中。でも気持ち的には逆に抱きついて貰いたい?」

「はいはい」

「ほら、男なら抱き付くよりも抱きつかれたいって願望があるし。今は女だけど」

「よく分からないです」

「適当に無視しないで寂しい(泣)」



 何か変なスイッチ入ったみたい。こうなるとメンドクサイので適当にあしらっておくと寝始めるので放置。案の定人の背中を枕に寝始めた。

 これ普通に危ないから真似しないでね。

 この藍苺さんこんなところでチートを発揮して絶妙なバランスを保っています。


 それにネロの走り方はその見た目からは想像できないほど軽やかでほぼ浮いていて滑るように走るのだ。なのでとっても快適な乗り心地。でもこれに慣れると普通の馬もや騎獣は乗れなくなるのが難点かなぁ。



 まだ王都の近くということで道を通人達は疎らにいる。今私達が走っている道は騎獣専用の道で進む方向も決められているため正面衝突などの事故は少ない。たまに道を強引に入ってくる馬車や騎獣が事故る程度。


 どんなに広くてもルールがあっても事故は無くならないって事だね。



 真ん中の道は騎獣など速いもの専用道路で両端が歩行者や遅い荷馬車等の道。進行方向は左側等日本と共通点が有るが歩道はなく馬車と共用ってのが違いかな。勿論白線は無いので道と道の堺には溝がある。荷馬車が入るのを防止するためだ。この溝のせいで荷馬車の車輪が壊れたりするがこれがないと事故が増えるなんて皮肉なもんだと父さんは言っていた。




 勿論、人と馬の人身事故が起きるだろうが、日本と違って街道を歩くなんて事はあまりしない。距離もあるが大体は馬車と護衛のセットで旅するからだ。どれだけ日本とは平和だったのかと思い返す。路上で酔っぱらいが寝ていてもこの世界では警察が面倒も見てくれない。警察は居ないしいても兵士が詰所の床に転がしてくれれば良い方だ。命まで取られて棄てられる事なんて珍しくもない。



 おっと、なんの話をしていたっけ。道の話から随分と離れたね。酔っぱらい話になるなんて。



 何かを見ると直ぐに日本と比較する癖は治らないみたい。ああ、日本ならって思うことが多いけどこの白の国だって周りから見ればとても恵まれているのにね。



 もう少しすればもっと速度をあげる事ができる。そうそう。この道にはね制限速度が一応有るんだよ。一時停止とか優先順位とかは曖昧だけどね。まぁ貴族は我が物顔で割り込んだりするけど。


 王都とか大きな街の近くの街道は馬車と馬の駆け足以上は原則禁止。騎獣は本気の走りは禁止だけど騎獣の個々の速さが違うので曖昧。でも本気で走らせていなければ良いよ。でも事故ったら自己責任ねって投げやりな決まりなんです。


 だから一応今は抑えて走っている。少しネロさんはご立腹だが決まりだからね、後でリンゴあげるから許してね。




 そして予定よりも早めに森を抜けて草原に出た。見渡す限り平地。まるで北海道の道路の様な風景。広さ的に言ったらアメリカかな?兎も角すごく広い。

 さて、森から出るとスピードをあげても問題ないエリアに入った証拠だ。ネロの本気はマジで速いので藍苺を起こす。落ちたら回収が面倒━━━怪我したら危ないもんね!



「藍苺、藍苺!そろそろ速度を上げるから起きて」

「むにゃ、むむむぅ~・・・ん?もうそこまで来たの?」



 人の背中で気持ちよく寝ていた藍苺は涎でも垂らしているような様子で口を拭きながら目を覚ました。幸いまた背中に頬擦りをし始めたのでヨゴレてはいないようだ。汚れてると頬擦りしないからね。紅蓮おぼえた。



「ムニャ、んー、俺どのくらい寝てた?」

「一時間弱かな」

「あ、結構寝てたのね」



 それはもう気持ち良さそうに寝てました。



 後ろを向けないので察するしかできないが頭を掻いて照れくさそうに笑っているようだ。散々頬擦りしたり人のお腹を触ったりしてたのに今更恥ずかしいの?

 昔から謎なんだけどキミのその羞恥心のツボはどうなってるの?



「結構遅くに出発したからもうすぐお昼頃だけど、もうとっておく?」

「それも良いかも。俺寝てただけだけどね」


そうですね


 藍苺も了承したので人が通行人が居ないことを確認してから道の端に逸れる。本当は森の中で休憩するのが理想だけどネロの足だと直ぐに抜けてしまうためこの草原の真ん中辺りでの休憩となったのだ。足が速いのも考えものかも知れない。


 今日のお昼は簡単にとれる様にサンドイッチ三種と蜜柑。サンドイッチの具は定番のタマゴサンド。藍苺のタマゴサンドは普通のではない特別製。卵を甘い厚焼きにして白いパンに挟んだものだ。私のは茹で玉子を潰してマヨと塩コショウで味付けしたよく見るやつ。ハムサンドは二人とも共通でパンにバターを塗って水気を弾くようにしてから取れたてのレタス、少し厚目に切った自家製ハムを挟んだ。実はハムサンドが一番手間が掛かっていない。凝り性な人はハムとレタスの量なんかも手を抜かないそうだけど私は少し適当だ。手抜きでも許してね。

 あ、でもレタスの上に少しマヨを塗ると美味しいよ。カロリー高いけど。

 最後の具は迷ったがリクエストでリンゴサンドに決定した。


 リンゴサンドを知らない?うん、知らなくても不思議じゃない。何せ私が勝手にそう読んでいるだけで大層な料理って訳でもない。焼いたパンに薄く切ったリンゴを挟んだだけのものだ。

 作り方は簡単。トーストしたパンを二つに折って半月切り?━━よくリンゴを食べるときの切り方。勿論種は取ってね毒だから。皮はおまかせ━━を薄くスライスしてずらしながら並べて挟んで出来上がり。簡単でしょ?トーストはバターを塗っても塗らなくても良いかも。私は塗って二度焼きのカリカリとバターでしっとりのどちらも好きだけど。挟むのはしっとりの方が簡単かも。量もお好みだけど挟みすぎは食べ辛くて溢しやすいよ。


 まあ、食べたたら胸焼けは覚悟した方がいいね。




「この甘い卵も好きだけどそっちのも頂戴?」

「言うと思ったから多目に作ってきたよ」

「やったー!!」


 口一杯に頬張って食べる姿はハムスターだと思ったとここに記しておく。


「ハムサンドもうまい。でも昔に作ったレタスの変わりにキュウリを挟んだのも旨かったなぁ」

「今度作る?」

「うん。作って」


 勢いを緩めずに頬張っているのに何故か会話が出来るなんて器用だなぁ。あとあのキュウリ挟んだハムサンドはパンが水っぽくなるのが難点なんだよなぁ。時間停止の巾着に直ぐに入れれば解決かな?

 今度作るときに覚えとこ。



「これこれ。簡単なのに何故か嵌まるリンゴサンド。カリカリの二度焼きと酸味の強いリンゴがマッチして━━━旨い」

「私は二度焼きしっとり派だけど。難点はバターがたっぷりだから胸焼けがね」

「この前のピザで胸焼けしたけど、その価値はあると俺個人は思うんだ」

「胃腸薬用意しとくね」

「モグモグ━━━うん。」



 最後に蜜柑を剥いて食べた。酸味も甘味も良いバランスでとても美味しかった。やっぱり蜜柑は小さめが美味しいと個人的には思う。


 私のは倍のサンドイッチをお腹に収めて満足げな藍苺を横目にネロにリンゴを渡す。ネロ用のお昼ご飯の飼い葉はもうすでに食べ終わっていたのでデザートのリンゴをあげた。


 この後は少しの休憩をしてから出発しようと思う。食べてすぐはネロでも体に悪いし、藍苺もあの満腹状態では辛いだろう。背中に戻されても嫌だしね。









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