狐火のカンテラ
次回から不定期です。
あれから幾日かたった。薔薇くんは快く・・快く使役に応じてくれた。クラウドさん?何の事かな?
因みに名前は八重にした。女っぽいのは仕方ない。八重咲きの薔薇だから安易に考え付いてしまったんだ。仕方無し。
そして白杉村に行く前に訪ねてきた駆け出し冒険者を覚えているだろうか?
彼がまた訪ねてきた。
いや、厳密に言えば彼を連れて中堅冒険者が店に訪ねてきた。
何でも全く才能の無い彼が灯火の魔法を使えるようになったことが気になるようだ。気になるも何もそれは彼のたゆまぬ努力の賜物であって、特別な事は教えてもいないし、特別な道具もあげたわけではない。
が、納得いかない中堅冒険者の女性は自分よりも弱い立場の彼を引き摺って(本当に引きずられて)ここまで来たのだ。
とまぁ、ここまで来たのはご苦労なことだが、私には「彼の努力の結果」としか言いようがない。実際そうだし。教えたこともイメージと魔力調節が大事か教えただけだ。あと呪文書を売ったことかな。あれだってギルドで買えるものだし。特別って訳ではない。
「こんな才能なしでも使えたんだ。アタシもドデカイ魔法を使えるようになるはずさ!さあ、教えてよ!」
「や、やめろよ。店主は本当に普通の事だけ教えてくれたんだ!」
「うっさいよ出来損ない。いままでアンタについた師たちはみんな匙を投げただろ。そんなお前が明かりにしかならないとは言え魔法を使えるなんて何か特別な事があるに違いないんだ!」
ウーン、特別な事と言えば彼が灯火の魔法がどんなものか理解するまで実演して説明した事とか?でもそれなら普通に教えてくれるだろうしね?
「おれの師匠達は攻撃系の物しか教えようとはしなかった。けどおれは気付いたんだ、魔法の系統でも初級の補助魔法なら何とか出来るって。だからこの人は何も特別な事はしていない。強いて言えば、根気よくおれが理解するまで教えてくれたくらいだ。
・・・・前の師匠達は見て覚えろだとか、理論を積め込ませてやってみろとか・・理解力が悪いおれには理解出来なかったんだ」
うん。自分が出来ることを他人が出来ないとどうして出来ないのか失敗したことがない人は分からないって言うし。一度で理解できる人よりも努力して試行錯誤して失敗を繰り返した人の方が人に教えるのがうまいって聞いた。一発合格した大学生よりも一年浪人した人の方が自分の失敗から教訓かなんか得て教えるのがうまいとか。真実はしらん。でも、わからない人の気持ちは理解できると思うよ。
私も「何でこんなことも理解できないんだ」って言ってくる教師よりも「そうそう、ここが難しいんだよなぁ」って共感してくれる人の方がいいもの。何か勉強のモチベーションが違うよ。
まぁ、人各々だけどね。




