威厳に身長は関係ない
間違えて違う作品に投稿してました。m(_ _)m
防水性も保温性も良い魔物の革で作られたテントは地面にしては寝心地はまあまあだった。多少固くても寝違えるなんてヘマはしない位には慣れている。
レンはもう起きて朝御飯の仕度に取り掛かっているのだろう……外から肉の焼ける匂いが漂ってくる……朝から肉はキツいが仕事の方がキツいのでかえってありがたい。スタミナとか諸々に。
村の人々ももう起きている頃だろう……多分今は6時……俺としてはとても早起きだ。
暖かな布団から出たくないが、遊びに来た訳ではないのでさっさと着替えを済ませてテントから出た。外はまだ春の訪れがみられず相変わらず息を白くさせる程寒い。寒がりなレンにとっては早起きして外で料理するのは堪えるだろう…と思いながらも寝坊助な俺は何も出来ないのであった。
それにしても肉を何処から調達してきたのだろうか?
俺達と一緒に運んできた物資は保存の効く乾物だったり、豆や穀物類と申し訳程度のジャガイモ位のはずだ……
ま、昨日「肉喰いて」ッ!!とかとどこぞの麦わら帽子の船長並に発言していた奴も居たことだし、誰かが獲ってきたのだろう。ここに居るギルドメンバーなら雑作もないだろうから。
レンを手伝おうかとも思ったが、元々料理の方の才能は……うん、良くないので――決して悪くない…けど、間が悪かったりとツイてないだけ By紅蓮――いかない方がいい。また何時ぞやのように皿を割ったりしたらそれこそ邪魔になる。
遠くから眺めているのも手持ち無沙汰だが、レンの後ろ姿を眺めているのも悪くないかも。リズムよく刻んでいく包丁の音は心地がいい。
今日の朝御飯は皆共通でご飯(粟、稗、麦など混ぜた物)、味噌汁(レン曰く自腹)、さつま芋の茎の煮物(干したさつま芋の茎を煮た物まんま)、鶏肉の照り焼き風(何の肉かはあえて聞かない)と結構充実していると思う。
あ、そうそう。味噌汁に使ってる味噌な、里芋の茎を使ってるんだよ。いや、茎で味噌作る訳じゃないぞ。皮を剥いた茎を味噌で煮込んで乾燥させて……使うときには適当なサイズに切って味噌として入れるんだってさ。元々は昔日本であったものなんだって……よく知ってるなぁ。
非常時に無い無いでは済まないから一応保存食は備蓄してるんだと……いやぁ……お見逸れしました。他にも諸々用意はしてたとか。
そんなに大事なものを出してきていいのかと言ったら――――
“ああ、まぁ…消費期限があるのもあるし、使う時が来たら構わず使う方が良いんじゃない?”
――――だそうです。
うん。そこまで考えてるのか。
「藍苺~。殿下達呼んできて?」
「おー。分かった~」
あれま、やっぱり気付いてましたか……お前の背中には目でもあるのか?
言われた通り殿下とその護衛達を呼びにいく。因みに殿下達の食事も皆と同じだ。殿下曰く「貴重な体験だ」だとか。
……何と言うか……一応世間では兄に当たる人なんだが……危機感とか王族としての威厳とか薄い気がする。
※紅蓮コウレンから見れば現白の王の方が影がうす…げふんげふん…
ま、何事も体験するのは良いこと?なのか?
味噌の食欲誘う香りに空腹がピークだが、殿下よりも早く食べるわけにもいかない。村人や仕事で忙しい(俺だってこれから忙しいよ?)兵士達はもう食べ始めている。殿下も一々そんなことでヘソを曲げるほど心は狭くない……それに貧乏暇なし。村人は朝日と同時に起きて夕日が沈むまで休みなく働いているのだからこんなことで腹をたてるのはどうかと思う。
ま、抜けてる殿下も威厳は無くても(顔は少し怖いけどな。慣れるとそうでもないけど)気配りは人並みに出来るし……って、これ不敬罪にならないよな?
そして、
殿下呼びに行って
髪型のボンバーさを指摘されて(寝癖がな)
朝御飯食べて(普段関わりの無い騎士達と顔を合わせて食べるのって辛い…)
で、今は……
「ですから……」
「説明は不要……魔物の肉を食べさせるとは、何を考えているのだ!」
「害があるものを食べさせるとは思いますか?」
何の肉か判明してレンが騎士達に囲まれてます。対する殿下は「……成る程、家畜を〆る訳にもいかないので魔物で代用したのか……旨いな(ニコ)」とか暢気にまだ食べてます。王族って基本的にゆったり食べるのか……今生の母はそうでもなかったぞ?
「今直ぐに影響が出なくても今後出たらどうする気だ」
「我々の職務にも支障が出でもしたら一大事だぞ?」
「出すなら一言断ってから…」
「言えば食べないでしょ?」
ごもっとも。
確かに好き好んで食べたりはしないだろう……貴族なら尚更に。ギルドに所属する傭兵にとっては別に珍しいことでもない。
子供の頃にレンや麗春さんが編み出した安全に魔物を食べる方法をギルドでは率先して教えている。もしも一人はぐれることになっても生き残れるようにと魔物を食べることは慣れさせておく。
確かに独特の臭みや筋っぽさがあるモノも中にはあるが、レン曰く「調理の仕方で美味しく食べることはできる」そうで、実際に俺も食べたが旨かったと言っておこう。特に豚の魔物の豚腹とんぷくと言う魔物が美味かった。普通の豚肉と大差無かった。それに何処にでも居るし、殖えるし、弱い方だし(ただし一般人にはキツい)。
「私自身も魔物を何年も食べてますけど、何事もなく生きてます。」
「それはお前は純粋な妖怪だからだろう」
「ええ、まぁ。妖怪の中でも頑丈ですけど……」
「殿下に少しでも危険なものは食べさせるな」
「ギルドでは誰でも通る道です」
「……ギルドはやはり野蛮だな」
「否定はしませんよ。魔物を狩るのが主な仕事ですからね」
ちょっと聞き捨てなら無いが、レンの邪魔をするのもどうかと思うのでまたも傍観している。
だが、殿下の安全を考えるなら今食べている殿下を止めるのが先だと思うのは俺だけか?
それに毒味をしたのはレンと俺だってこと忘れてない?妖怪云々が問題なら端から自分達でやればいいのに。
それに、白の王族は毒に対する耐性があるから下手な一般市民より頑丈だぞ? それこそ昔レンが盛られた位の猛毒じゃないと死なないって。
ま、守る側としたらどんな危険も排除するのが仕事なんだろうけど……あ、殿下全部食べ終わったぞ。
「うむ、美味かった。城では味わえない料理と言うのも食べてみるものだな。気に入った……特にこのてりやきと言うのか美味かったな」
「あ、で、殿下…」
「食べてしまわれたのですか?」
「まぁ、美味かったもんな…」
「うん。紅蓮よ、よい働きであった……魔物も食べられるとお前に聞いたが……これなら村人達も受け入れるだろう」
「お口に合った様で何よりです」
「あぁ。それにしても、ここまで普段食べている肉と変わりがないとは……」
「あの、殿下?話がいまいち見えないのですが?」
「あぁ、すまんな。つい美味しさの余り……」
何でもレンと殿下は村につく前から魔物を食料にすることを考えていたそうだ。殿下も先遣隊や村人を労う意味で中々食べれない(家畜は大切な労働力なのでおいそれと〆られないそうだ)肉をどうにか持ってはいけないか……とレンに相談してたそうで。
それでレンも「なら魔物は以下がでしょう?」と答えたわけだ。
勿論素人が魔物を獲るのも危険だし、毒があるものもいる。そこでこれからこの村を立ち直らせる為にも村人に食用に適した魔物の捕り方、さばき方見分け方を教えるらしい。
レンは休む暇もないくらい忙しくなるそうな。大丈夫か?これ……
「そう言うことはもっと早く仰ってください」
「私はてっきり殿下に聞かれていると思ってましたよ?」
「すまん、反応が面白そうだったからつい黙っていた」
あ、今明らさまにレンが半目になった。怒ってるけど押さえてる感じ。
目が笑ってなく半目になったレンは「からかってるのかこの能天気は……」と言っている様な目で殿下を三秒ほど睨んだが直ぐに元の無表情に戻り今日一日の予定を大雑把に確認して後片付けに行ってしまった。
そう言えば人前に出るときはあいつ何時も無表情だけど……わざとか?
そして後片付けも終わったのかあれから直ぐに戻ってきた。聞けば手の空いた御婦人方が粗方片付けてくれていたらしい。仕事が早いな。
さて、ようやっと俺の活躍の出番か来た。お待ちかねの狩りの時間だ……と思ったのもつかの間
「私も狩りに同行してもよいか?」
と、殿下が言ってきたのでさあ大変。
護衛の騎士達は猛反対。だが殿下は引かなかった。ここでの殿下の仕事は無いと言っても良いらしい。所詮はお飾りだと皮肉混じりに笑っていた。ならなんでここに来たし。
「お言葉ですが…」
「何だ紅蓮?」
「血を見ても、誰かが怪我を負っても取り乱さない覚悟はおありで?」
「自分の身は守れるぞ?」
「いえ、殿下の腕を疑っているわけでないんですよ。貴方の軽率な行動で護衛に欠員が出でも毅然としておられる覚悟はあるのかと聞いたのです」
何時もより厳しいレンの顔と声に騎士もギルドメンバーも表情が固くなる。殿下は相変わらず引き下がる。
「見ておきたいのだ……この期を逃せば……もう見る機会など訪れないだろうからな」
あ、そうか。殿下は王太子として今まで以上に城に縛り付けられる生活を強いられるのか……うん、殿下達には悪いけど俺は城から出れて本当に良かった。
「はぁ……騎士の皆さんは殿下御自身で説得なさってください」
「勿論そのつもりだ」
「少しでも怪我などしたら即刻帰ってもらいますよ…城に」
「あぁ……いや、城には勘弁してくれ」
「遊びではないので……ねぇ?」
ここで漸く殿下が誰を敵に回しているのか気が付いたようだがもう遅い。レンを敵に回せば例え王族だろうと現白の王だろうと関係なく、容赦なくズケズケとものを言うからな。相手が悪かったよ。
「さて、ギルドの皆さんには各自で食べれる魔物と野草を収集してきてもらいたいのですが…
「おう、任せとけ。下積み時代からやってることだお手のもんよ」
「じゃ、一人で闘える人は森の方を…戦闘が苦手な二人は……」
「ワシ等は村人の怪我を見ておくよ。昨日から頼まれてたんだ」
「怪我人や病人の把握は任せてください」
勿論事前に怪我人や病人の把握はしてある。先遣隊がちゃんと調べていた。
戦闘職以外の二人を除いてギルドメンバーは散り散りに食べ物を探しに行った。行動力のあるメンバーだ。
「さて、殿下の護衛で忙しいでしょうが、二人程にしてくださいね。後は村の警備ですよ」
「仕方ないか……」
渋ってはいたがテコでも動かない殿下に皆折れたようだ。あれ?殿下ってこんなに自己主張激しかったか?
勿論俺もレンについていくつもりだ。それはレンも分かっているのかなにも言わない。
俺達に付いてくる騎士は白騎士と黒騎士の二人。赤騎士は張り切っていたようだけど、煩いからとバッサリとレンに切られていた。青騎士は赤騎士のストッパーに置いていくとして、気配がある程度消せそうな白騎士と黒騎士にきまったのだった。
「勿論、殿下の護衛でなく仕事として食料調達は今後してもらいますけど」
「でもさ、騎士の大半は貴族だろ?大丈夫なのか?知識的に」
「さあ?出来ると言ったのですからするんじゃないですか」
う~ん……レンまだ期限悪いらしい。
それと、どうもレンは殿下に対して腹をたてたいるわけではないらしい……どうにもキナ臭い…ような?
俺の悩みも何のその……レンは準備をすでに終えて殿下の準備待ちだ。あ、俺も準備だけは朝飯の前に終わってたぞ。何時も準備はご飯前にしてたしな!
「でもさ、良かったのか?殿下……足手まといになるんじゃないか?」
「それは本人も分かってるよ」
「分かってて?」
「うん、分かってて」
やっぱり何かあるな……
殿下は動きやすい格好(さっきまでヒラヒラした衣装で動き辛そうな布面積の服)で、所謂イケメンな狩人って感じがした。イケメン(強面)だか王族には見えない……髪も目立つ銀髪から軽めの茶色にしていた……ホントに何かあるよなコレ…
「準備はできたぞ」
どこかワクワクしてらっしゃいます殿下。あれ?キナ臭いと思ったのも俺の早とちり?
ちょっと腑に落ちなくてレンの顔を見ると…
「まぁ…殿下も浮き足立ってるんじゃない?自由の無い生活だったし」
「あ……うん?そうだなぁ……?」
何かはぐらかされた気がするが気のせいか?
そして
「うりゃぁぁぁぁ!!」
ザシュ…と勢いよく仕留めた猪系の魔物が大きな音を立てて倒れた。俺の得物は大剣だから一撃が大きいが……その分動きが遅い。敵の動きが速ければ避けられるし、その分反撃される確率も上がる…が、大剣を使うのは止めない。
「大剣って浪漫だろ?」
「はいはい、ロマンロマン…」
「(´・ω・`)」
こんな反応をされる始末……。
そして俺が日ごろ受ける依頼の殆どが動きの遅いデカイ魔物が多い。てか、全部デカイ魔物だ。
ここは白杉が自生する場所なので、白杉の性質上凶暴な魔物は比較的居ない。要るとしてもデカイい四本前肢がある熊とか、頭に牛みたいな鋭い二本の角が生えた猪くらいだ。そ、この今倒した猪系魔物な。
「流石ギルドの精鋭……重い一太刀だ」
「迷いの無い一太刀は見事」
「何時も噂は聞いているぞ藍苺」
「ま、それだけだけどね」
「何でレンは素直に誉めてくれないの?(グスン)」
この頃俺に対して風当たりが強い気がしますレンさん。俺何かしましたか?
「厳しすぎるのではないか?」
「重い一太刀なら武器さえ持ち上げられれば出来ますし、迷いがないのではなく降り下ろすしか考えていた無いんですよ。精鋭としての噂より外見の噂の方が多いですし…」
ジト目で俺を見るレンに言い返せない俺だった。
うぅぅ……少しくらい天狗になりたいよ俺も。
「ホントの事だけに言い返せない…」
「まぁ…その、何だ……」
「すいませんね~。皆が右を向くと左に向きたくなるんです。そういう性分なんで」
でもさらっと誉めてくれたりアドバイスしてくれたりするツンデレ何ですね分かります。
二人っきりの時は割と甘いよなレン。
と言うことは公の場合はずっとこの態度なの?それは少し……寂しいなぁ
「後方注意!!」
言うが早いか術が発動するのが早いか、俺たちの後方で火が爆ぜた。おうっ!?いつの間に後ろに魔物居たの!?マジビビったぜ……
「ありがとなレン。やぁ…ビビっ――」
「反応が遅い。周囲の警戒も常にする!」
「は、はい」
怒られちゃったよ……トホホ…良いとこ見せたかったのに逆に情けないとこ見せちゃったぜ。
確かに俺って厳しく言われてた方が良いのな。
「…………!?」
「後ろに居たのか……ふむ」
いや、殿下、ふむ……じゃないから!
ほら、護衛の騎士二人よ…殿下のテンションが可笑しいぞ! それに白騎士よ、お前の存在が薄れかかってるぞ。リアクションしろよ?居るのかも忘れられるぞ?
(メタ発言は控えなよ嫁さん?)
(あ、はい。ごめんなさい…!)
うん、テレパシーで心読まないで旦那さん。
(いや、読んでないから……駄々もれしてるよ。私限定に)
え?マジですか? 俺からは出来ない筈なのにおっかしいなぁ~。
「それにしても……この地域は魔物が少ない筈なのですが……減るどころか周りから感じる気配が増してますね」
「え?」
え?レンさんいつの間にそんな広範囲の気配を察知する能力持ってたの?俺知らないけど?え?
(あ、これ?前から持ってたよ)
うっそ…初耳……どういう仕組みだよソレ
(後で教えるから今は……)
「どうやら何かがこの辺に魔物を引き寄せているようですね」
「やはり……あの件か?」
「恐らくは」
多分だがあの件とは―――
「考えるのは後で!来ますよ!」
ドドドドッ!……と地響きを立ててまた魔物が近付いてきた……あの不意打ちしてきた魔物も猪系魔物だったが今度も同じなのかな?足音的に……
と、思ったが……いや、間違えてはいなかったのだけど…
「でかいな…」
「殿下!感心されてないで下がってください!」
「あれはここら一帯の主か何かか?」
「オ〇コトヌシ……」
「タ〇リガミ……」
レンと同じ様な感想を言ったが冗談抜きにでかすぎる猪(+2角)が小さな(十分大きいです)子分をゾロゾロ引き連れて飛び出してきた……
「『石壁』」
「!?」
「「!?」」
「……」
いや、飛び出してきたと言うよりは突進してきたの方が正しい。そして難なく初級の防御術『石壁』で防いだ。
………少し違うようだ。
よく見ると石壁は俺達に向かって突進してくる大猪の進行方向をずらす為に発動したらしい。斜めにすることで脆い部類の初級術でも攻撃を回避させられるのか……猪突猛進だから急に止まらないだろうし、面と向かって石壁で防いでもあの巨体の突進は唯では済まないだろうな。
「『障壁』」
子分達が石壁にぶつかる前に中級の術『障壁』を詠唱し終わり発動する。掛かった時間わずか10秒弱……身体能力も凄いけど魔術(レンは妖怪だから妖術)も王宮魔術師に引けを取らないよな。
「ボヤッとしない!」
「悪かった」
「『光よ』!」
「『深淵よ』」
「…………………………」
白騎士は自分の剣に光属性を付ける術を、黒騎士はその闇属性の術をそれぞれ唱えた。騎士と言っても術は使えるのか……エリートだからか?
バチンっ!バチンっ!と音を立ててぶつかる子分猪に中級とは言えびくともしない障壁に安心したのも束の間、大きく後ろに剃れていた大猪が戻ってきた。唯突進するだけの子分とは違いゆっくりと此方を伺っているようにも見えた。
「不味い……アイツ…敵の出方を伺うだけの知恵はあるようだ、厄介な」
「確かに……小さいのは突進だけだが…あれは頭が良い行動だな」
不味いぞ。そりゃ不味い。俺たちの後ろには闘い慣れていない殿下が居るし、一緒に闘い慣れていない騎士も居るんだぞ……いつものように何て闘えない……
やっぱり殿下には留守番してもらってた方が良かったな……今更だけど
「殿下、この際ですから動かないでください」
そう言ってレンは懐からお札をコレでもかと貼られた鞘に収まる小太刀を取りだし殿下に持たせる。
曰く、簡易結界を短時間だが発動させられる代物で、時間内なら飛竜の突進でもびくともしないとか。ソレを持たせ騎士と一緒に村に戻るように言った……
「逃げるなど騎士道に――」
「逃げると言う行為は生きているから出来るんですよ。それと騎士道も」
「お前の敗けだぞ……紅蓮殿に口で勝つにはまだお前は若い」
「………」
「……紅蓮…勝算はあるか?」
「勝算のない賭けはしない主義です」
うん、賭け事には強いのに賭けは余りしないよな。……あぁ、負けそうな賭けはしないから負けないのか? でもトランプとか未だに俺全敗だけど……俺が弱いの?
(今考えること?)
はっ!……あぁ、ごめん
詠唱に10秒もかかるのかと思われますが、一般的な術の発動まで30秒がざらの世界です。かなりのスピードなんです。




