表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/87

王宮とギルドの仲の悪さは周知の事実

 まだまだ続くよ連日投稿

 古今東西、ギルドと王宮の争いというものは付き物だ。例えトップ同士が仲が良くても下の者にとっては関係など無かった。



 片方は「女なら大人しく守られていろ」と言い、もう片方は「貴族なんかに任せておいたら埒が明かない」と言う。



 何が言いたいかと言うと、どちっちもどっちと言うことだ。




「ふっ、これがギルドの精鋭だと?片腹痛いわ。女子供を出してくるとは……ギルドも大したこともないな」


「ふん、口先ばかりの近衛騎士が調子に乗るな。女だからとて油断すると痛い目見るぞ」


「止めないか二人とも」


「騎士は引っ込んでろ!」


「熱血は静かにしてろ!」


「バカばかりだな」


「私もそれに入るのですか?」




 この有り様……ギルドと王宮(と言うよりも近衛騎士)は仲が悪い。これ常識。


 近衛騎士のなかでも常識人を選んだのだが、これは例に漏れず仲は最悪だった。あれ?人選ミス?



「気にするな。あの男は口が悪いが、言っていることは心配しているだけだ」



 この青騎士の鋭い面の人はヘキ  静嵐セイランさん。名前の通り静かな嵐の様なお人。怒らせたら最後、静かに怒り続ける……執念深いとは敢えて言わない。

 普段は温厚で面倒見の良いお兄さん(独身)。でも毒舌を無意識に吐く。



「お、俺が悪いのか?」


「馬に蹴られれるよりはマシだろう」



 喧嘩を止めようとしたのは赤騎士のお人好しな熱血漢の 炎珠エンジュさん。見ての通り熱血漢のお人。空気は若干読めないときもあるが人当たりも良い。が、恋愛に関しては全く空気読めない。



「あいつら幼馴染みだもんなぁ~。喧嘩するほど仲が良いんだな」


「んなわけあるか!!」


「そんなわけあるか!!」


「ほらなぁ、息ピッタリ」



 近衛騎士とギルドメンバーの一人の喧嘩を傍観しながら煽ってあるのは黒騎士のこの中では最年長のおっとり系のゲン 瑪瑙メノウさん。

 このメンバーで私と藍苺を除いて唯一の既婚者。結婚10年目にして今でもラブラブ……すいません今回選んでしまって。


 叩き上げの黒騎士隊には珍しく実力で入った貴族。今は彼の兄が家を継いだことによって氏を自分では名乗らないみたい。資料には書いてあったからそのままの言ってみた。



「気にしてないよ?」



 そうですか、腹黒何ですね奇遇ですね話が合いそうです。



「殿下の御前でいつまで羞恥を曝すつもりだお前たち」


「あ、」


「ぐっ…」


「おぉ…」



 一言で喧嘩を止めた彼に拍手。そして炎珠さん、声に出すと……ほら、睨まれた。口に出したらダメだって。その人今凄く機嫌が悪いんだから。


 今喧嘩中の二人を一喝したのは白騎士のハク 木蓮モクレンさん。

 彼の家は王家から分家した一族でなんと公爵様です。それでも鼻にかけるようなことはせず、公平なお人です。

 このメンバーに必要なストッパー役なので重要何ですよ。


 殿下とは親戚なので顔見知りなのもありますけど。



 さて、では王宮組の紹介は以上で……あぁ、彼の事を忘れてましたね。初っぱなから喧嘩を始めた彼です。


 彼は昨今の腐りかけの近衛騎士には珍しく実力(本人は他の隊を希望していた)で近衛騎士に選ばれた逸材で、礼儀正しく、忠義心もあり、騎士の鑑!とは言われているが、実のところ近衛騎士の中ではマトモだというだけ。名はカイ 才誇サイカ。男だよ。


 他の隊のメンバーに比べれば短気で偉そうに見える。



 が、



 静嵐さんの指摘通り言葉をよく考えると彼の本心が見えてくる。



 先程の喧嘩中の言葉をきちんと訳すと



「女は家で大人しくしていろ!怪我をすれば嫁の貰い手はつかないぞ!」


 ――は、


「女性なんだから危ない事をするな。怪我が心配だ。嫁に行けなかったらお前大変だろ?」


 ―――らしい。



 まぁ、口が悪いが心配しているのは分かった。ホントに口が悪いし、男尊女卑ともとれる言い方だが、心配して言っているのだけは分かった。



 つまりはツンデレ何ですかそうですか。





 なんだろ。誰かに感化されている気がする。




 ま、いいか。次は我らがギルドの精鋭メンバーの紹介でもしますかね。



 先ず一人目、さっきから我関せずを決め込む――いつもの事なので無視しているらしい防具は胴だけの前衛、嫁さんと同じ大剣使いの男、慈焔ジエンさん。得意属性は名前の通り炎系。バリバリの前衛の割りに動きが鈍るからと胴しか防具着けないので打たれ弱い。攻撃は随一と言われている。とりあえず他の部分の防具をつけろよと思う。



 二人目はさっきの喧嘩中のもう片方の女性。勝ち気で喧嘩っ早い実は貴族令嬢の明明と書いてミンメイと読む。ミンメイさんは貴族のいざこざに嫌気が差して単身家を飛び出しギルドの門を叩いた女傑。得意の素早い動きで敵を翻弄して双剣で敵を切り刻むらしい。私自身間近で闘うところを見たことがない。藍苺と同じく単独で狩る事が多い。得意属性は風。ジエンさんと同じく前衛で防御力は低い……おい、人選ミス!壁役は?タンク居ないと辛いんだけど!?




 ――取り乱した。



 三人目は治癒士の妙齢の女性。色んな男にアプローチされてるけど今は一人娘さえいればそれで良いらしい。シュシュさん。再婚は考えてないドライでクールビューティ?な女性。回復術に関しては白の国で五本の指に入る逸材。攻撃術もお手の物。得意属性は水。



 四人目も治癒師。此方は男性。カイタツさん。治癒士と治癒師の違いは厳密には無いが士よりも師の方が力は上。

 好々爺で彼の回復術に関しては最早伝説。何でも一度に50人の人々を癒した……とか。眉唾ではなくきちんとギルドに記録されてた出来事だ。



 五番目は補助専門の術師。名前は……あぁ、レインだったね。異国からの旅人さん。最近はこの国に腰を落ち着けようかと思っているらしい。下町に家を探しに来ていた。男性。穏やかな性格と精密な魔術のコントロールは尊敬する。が、日常生活力は皆無と言って良いほど無し。得意属性は風と炎。攻撃補助系と素早さ補助系が得意。



 六番目も補助専門。同じく男性。名前はスヴェン。こちらも異国からの旅人さん。レインさんとは違う国の出身だが文化は似ているらしい。

 若干の神経質ではあるがキッチリ仕事はこなす。防御補助と命中率補助の術が得意。今回の防御力不足のギルドメンバーの要。回復術も出来る。

 得意属性は地と水。



 さて、残るギルドメンバーは二人。一人はわかってるよね?



 七番目は男性。今回は父さんの推薦で入った。名前はルルト。そう、前にも出てきたルルトだ。

 お調子者の外見とは裏腹に面倒見がいいお兄さん。婚約者の尻に敷かれ気味ではあるが本人は幸せそう。

 今回の防御力のもう一人の要。あだ名が壁役。防御力は低いが仲間を庇う事にかけては追随を許さない。そして怪我をして婚約者に怒られる。

 防御力は低いが前者たち二人には勝る。得物は片手剣と盾。得意属性は風。本当は前衛向きではないらしい。異国の王族の血を引いてるとか。



 そして最後のは我らが藍苺。説明は必要だろうか?


 ま、次いでだししておこう。



「俺の扱いが酷い…」

「だって今更…ねえ?」



 もう皆さん知ってるって。え?王宮組知らない?


 ならば説明しましょう!



 最後の一人はトウ 藍苺ランメイ。女性。得物は大剣使い。馬鹿力から繰り出される斬撃は一撃必殺……当たればね。防御力は平均値。それを防具でカバーして単独での依頼をこなす。基本力押し、猪突猛進。弱点は野菜(苦いもの)

 得意属性は氷?

 後衛なんて出来るわけもなく物理で殴る派。



 ま、こんなもんなか。



「俺に対する扱い……」

「嘘は言ってない」



 他の致命的な弱点は言ってないし。




「ふむ、自己紹介も終わった。出発しよう」


「はい、殿下」


「所で自分の紹介はしないのか?」



 脳筋……いや、ギルドの脳筋が話し掛けてきた。



 え?私?それこそ今更でしょ。



「紅蓮、次いでだ」



 ちっ、殿下を見方につけるたぁやるじゃないか……夜道には気を付けな脳筋。



 私は今回の王太子殿下の付き添いで同行することになったトウ 紅蓮コウレン。グレンではない。白の国では珍しい(皆さん隠してるだけ。名乗っている辺りが珍しい)純粋な妖怪。九尾狐と窮奇キュウキという虎の大妖、白の国の象徴白龍の血を引いている白龍だ(ホントは全部備わってるけど)。

 今回は護衛としてではなく秘書的な立ち位置で同行するので戦闘は参加しないつもり。

 得物は秘密。得意属性は炎と後は秘密。




「―――以上です。」

「秘密多いな…」

「まさか全て手の内を明かすバカいませんよ~」


「………」


「ま、まぁ、紅蓮はこの様な性格だがとても頼りになるんだ……」


「殿下……お労しや…」



「相変わらずだな」


「あれでホントに殿下に仕えてるのか?」


「さぁ?」




 忠義心は一応あるけど?






 さて、紹介も済んだことだし、旅の予定とかもろもろ話し合わなきゃ……ホントはね、前以て話している筈だったんどけど、皆忙しくて……時間がとれ無かったという世知辛い理由がありまして。



 皆この旅で仕事が出来なくなるのでその穴埋めに錯綜してました。



 あ、私は日頃からそういう事には対処してたから割りと早めに準備出来てたよ。仕事柄不規則で予測できないからね。


 特に王族の皆さんからの仕事は……突然が多いから慣れたんだよ。




 で、ギルドメンバーの前衛が進行方向の護衛に、騎士隊は殿しんがりを務める事になった。

 そして後衛組は殿下の周りを堅め……何故か木蓮さんと藍苺が殿下の側に付くことになった。



 私? 私は秘書的な立ち位置だから殿下の横に居るけど?



 この旅は公式とはいえ、穏便にしたいとの王と殿下のご意向で本来の公式視察の3分の1にも満たない護衛の数なのでゆっくりするつもりがない。

 殿下と私と高齢のカイタツさんと旅慣れしていないシュシュさんは馬車に乗り、その両脇を騎獣に乗った木蓮さんと藍苺が固める。


 木蓮さんが乗っている騎獣は白琥ハッコと言って元は獰猛な魔物だが、人に馴れると頼もしい相棒になる。見た目白い巨大な虎。嫁さん曰く「レンの方が触り心地と抱き心地は良い」らしい。試したのか嫁さん……


 嫁さんが乗っている騎獣は厳密には騎獣ではない。だって兎天だし。まぁ、一般的には騎獣の部類なんだろうけど。実家ではもう立派な妖怪扱いだよ。喋れるし、強いし。後は人の姿をとれれば妖怪として名乗れるね。

 見た目某ゲームのマスコットキャラの黄色い鳥の色違いだからね~。垂れたウサミミみたいな飾り羽無かったら……うん、後ろ姿そっくりかも。




 で、闘いの要の援護組は馬車の運転をしてもらう。何かあったら直ぐに前衛組に援護出来るようにと決めた事だ。ま、ぶっちゃけると雲の上の存在の殿下と同じ空間で長時間居られる自信がないらしい。いつボロが出るか心配な様です。そこまで殿下厳しくないよ……まぁ、これが一般的な考えなのか…うん。



 後の前方と殿の前衛組の騎獣の説明は割愛。だって皆似たり寄ったり……ではなく、ギルド組はギルドで管理している騎獣・駿馬シュンメという色とりどりのカラーリングの馬だし、騎士隊は共通の龍馬リュウマ(リョウマじゃないよ)だし、説明要らない気がして……


 ま、ここまで言ったんなら説明しましょうかね。



 駿馬は足の速い馬って意味じゃなくてこの世界では歴とした騎獣。まぁ、大人しい魔物だね。体毛が普通の馬に比べて奇抜な色をしていたり、心臓が二つあったり……まぁ、見た目は馬だよ。

 馬よりも速くて丈夫だけど騎獣としては下位に位置する。最上級に比べれば遅いし弱い。

 だけど、頭は良いし、人に馴れやすいのでよく街で見かける。その反面臆病で神経質な個体も居るけど、よく訓練された駿馬は主人に忠実で戦場でも臆することなく敵に突っ込む。馬より速く、頑丈さが売りのひとつ。



 対して騎士隊の乗る龍馬は馬系の騎獣で馬とは違い体毛ではなく強固な鱗で覆われた馬だ。鬣や鱗の色は育った環境に左右され個体毎に違う。上位の騎獣に部類される。

 人に懐き難く、人嫌いが激しい反面、馴れれば命を賭して主人に尽くす健気なヤツ。攻撃力も強いので単身主人を探して戦場を駆ける物語で有名。頭に生えた2本の角で突かれたら並みの鎧は歯が立たない。

 白の国では王にその実力を認められた者以外乗ることはできない。王宮の厩舎で手塩にかけられ大切に飼育されている。



 以上。



 あぁ、それと殿下の乗っている馬車を引いている騎獣も紹介しておく。

 種族名は鈍馬ドンバ。決して足が遅いわけではないが、他の馬系の騎獣に比べると遅い。遅い反面丈夫で太い足と自分よりも重い物を軽々と引っ張ってしまうほどの怪力で馬車を引く事に関しては騎獣の中でも最適。

 その頑丈さと馬車を引く力が強いため馬車が悲鳴をあげるほど……鈍馬に引かせるなら頑丈な馬車ではないと直ぐに壊れる。冗談じゃなく壊れる。「適馬、適車」という言葉があるほど……



 さてと、村につくまでは本当に暇なのでどうして暇を潰そうかと見た目は普通の馬車の窓越しに景色を見ながら考える私であった。



 あ、嫁さんが兎天の首の羽毛をもふり始めた……








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ