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*2**

 少しホラー回。



 ※注意※


 少しですがグロ表現が今後出てきます。そこまで露骨ではないとは思いますが注意してください。

 何か得たいの知れないモノで覆われでもしたのか全く妖気を感じない貴族の館に、ここに来たはずの嫁さん探して弁当片手に潜入中……


 玄関から入ったにも関わらず誰一人姿が見えない。覆っている“何か”は私達の侵入を拒むこともなくすんなりと侵入出来た。


 中は先程も言った通り誰もおらず、外よりも湿気が充満していた。日本の夏よりも肌に纏わり付く様な湿気だ。それに至る所にキノコが生えて、木製の調度品は腐りかけていて何とか形を保っている程ひどい状態だった。某赤い帽子の配管工に出てきそうな白い水玉模様の赤きのこ……1UPするよりダウンしそう。


 運が悪けりゃあの世行きな気がする。




(キノコでも栽培する気かよ…)


《喘息人には喉に良いでしょうか?》


(下手に湿気多くても人によっては悪化するよ)



 特にストレスでなる人には……こんな場所でリラックスも何もない。ストレスが溜まる一方だ。



『主、私の鼻も効きません』

『自分には過ごしやすく感じても良いのだが……この湿気は異様だ。主殿、私も何も見えません』

『先程から藍苺様に付いている奏と連絡がつかないのです主様!』


《私も先程からスキャン出来ません……一体何が…》




 考えられる可能性としては、この館一帯の地域はすでに何者かによって掌握されている……だ。


 何年もかけてじわじわとこの土地に何か仕掛けたなら私も気がつきにくい。すでに妖気で満ちている場所に入ると何も感じなくなることもあり得る。


 特に生粋の妖怪にはよくあるらしい。



 長年その場でじっとしていた妖怪の居た部屋に入ると感覚が鈍って鈍感になる事はよくある。けれどもそれはある程度密室でないと無いことだ。こんな辺り一体……少なくとも私が館の前についた辺りからもうその一帯に入ってしまっていたのだろう。



 隠れるのが上手くて、気が長い相手なんて、相手したくない妖怪top10に入るよ。



「これは……敵の術中にすっかりハマったかな?」


《暢気なことをいってる場合ではありませんマスター!》


『まぁ、落ち着け。』


「………久し振り、引きこもり予備軍」


『おい、その言い方はないだろう。折角助力しようと思って出てきたのに…』


「……で?これはなに?」


『主?』

『誰とお話ししているのですか?』

『誰か居る……のか?』



 久し振りの登場、白神。引きこもり予備軍のネットサーフィンが好きな神様だ。色々と助力してくれるのは有りがたいが、多分本体は今頃お菓子片手に某笑顔の動画でも見ているのだろう。



『いや、見てないからな。少なくても今は見てないぞ……さっきまで見てたが』


「……要点、早く」


『はい、分かりました。オッホン……この妖怪の正体は……茸入道だ。』



 茸入道? 聞いたことないよそんな妖怪



『当たり前だ。(作者が勝手に産み出した妖怪なんだしな)――ええと、茸と同じように胞子で殖える妖怪でな。根を張ってから500年程掛けて成長する気のながーい妖怪だ。』



 元々植物系の妖怪や魔物は成長に気の長くなる程時間のかかるものもいる。それは知っているが、こんな風に辺り一帯ひ被害を及ぼすモノは知らなかった。私もまだまだか。



『いや、ここまで酷いものは中々無いぞ。余程この家の住人達は誰かに恨まれているらしい』


(詰まり誰かの差し向けた……刺客?)


『いや、どちらかと言えば呪いだな。それも気のながい妖怪が一族もろとも根絶やしにするほどの』


(そんな妖怪を怒らせたここの貴族が悪いのか…はたまた呪いを掛けた妖怪が悪いのか…)


《どっちにしても迷惑ですね》


(うん。全くもってその通り)


『その妖怪もすでに死んでいるがな』


(………)



 死んでも続く呪いって……いったい何をして怒らせたのか。知りたくないが知らないといけないのか。



 ま、呪いってのは何か根が深ければいつまでも残ってたりするもんだしね。


 何か憑代にしているモノがあるはずだ。それを探してみよう。これだけ影響を与える位だ、湿気が一番高い所にあるのかもしれない。



『主、私たちも助力します』



 ポチの言葉を皮切りに家に残してきた二人以外の全員が姿を影の中から姿を現した。でも皆もう少し小さくなってくれない? デカすぎて廊下で羽が突っ掛かってますよポチさん? 夜夢はアナコンダサイズだからまだ良かったけど、兎天さん、あなたは馬よりも体格デカ目何だから考えてサイズ決めてちょうだいよ。ほら、足踏みしたら夜夢踏みそうになってるし……





(影に潜んでならお願いするよ)


『お任せてください!』



 勢いよく兎天は影に潜んで走り去った。



『蛇は隠密行動は得意です』



 本当に静かに闇に消えていった夜夢。あれなら私でも気がつかないかもしれない。



『匂いで探ってみます』



 本当は一番大きな本性のポチが何気に一番静かだった。経験の差か?




《私も久方ぶりに自らの足で探してみます》



 皆に感化されたのか別行動を取ると言い出すクラウド。うん、たまには引きこもりがち何だからそうしたらいいと思うよ。いつも私の影に隠れてるからね。



 さて、眷属たちは皆それぞれ探索に行ってしまったので珍しい単独行動だ。いつも影には誰かいたのでとても新鮮だ。



(さて、妖怪特有の血の契りで嫁さんを探そうかね……)



 何だか中二病な響きの名前だけどこっちは至って真面目だよ。それに私が考えたわけでもないんだ。昔からある妖怪が伴侶と交わす契約みたいものもで、互いの血を交換(口径でも傷口からでも可能)することによって色々と共有できるようになったりする。


 例えば考えの共有。勿論全てが共有出来るとは限らない。長年夫婦をしてると「あれ取って」で通じたりするのに近いと思う。勘に近い。



 あと、脳内通信――念じるだけで意思の疎通ができたりもする。が、今のところ藍苺からの通話は無理です。昔から妖力の扱いが下手でどうやったら出来るのか分からないらしい。私の場合は本能的な何かで出来ているので自分でもよくわからず出来ていたりする。なのでアドバイスも出来ないのだ。



 で、その脳内通信で私から呼び掛けてみる。



 まぁ、結果は分かりきってるのだけど。



 クラウドのスキャンも無効なのだから無駄だろうと思ったさ……でもしてみないと……ね?



 脳内通信が出来ないなくても“絆”を感じ取る事も出来るので……うん、こっちの方は何とか気配を辿れそう。良かった……。




 本来なら呼ばれれば互いの居場所を知ることもできるはずなのだが……どうもここは妨害するモノが多いようで……


 ならば匂いで……とポチと同じように探ってみても所々途切れていたり、他の臭いが強かったりして探れなかった。所詮私の感性は人間寄りで警察犬の様に匂いを頼りには出来そうもない。


 匂いを辿ることは出来そうだが、何だかここの空気はあまり吸っているとよくない気がする。頭が少しボーッとしてきた……もしかするとそこらかしこに生えているキノコは有害な胞子でも出しているのかもしれない。これはますます早く出ないとヤバイかも。



 自分の直感と嫁さんの行動を予測して(直感が大半だけど)入り組んだ迷路のような屋敷を奥へと進む。試しに嫌な感じのする扉を開けると胞子が充満していて速攻で閉めた……紫の胞子って見るからに危険でしょ!?



「……嫁さんなら絶対迷ってどんどん最奥に行きそう……」



 変なところで方向音痴な藍苺はここぞと言うところで帰り道に迷う。そんな時に限って出口とは逆に進むのだ。わざとやってるんじゃないかと思うほど。けれど本人は自覚がない……帰巣本能が欠落しているみたい。




「………」



 匂いはそこらかしこからするが、肝心の本人の姿が見えない。歩き回っているのか、はたまた私が検討違いの場所に来ているのか……多分前者だと思う。迷ったらドンドン進んでしまうのが藍苺クオリティだ。迷子になった時の「その場からあまり動くな」を子供に言い聞かせていた本人がこれでは説得力もない。



 全く、手のかかる……




 だがこの場所で動いていないと何やらヤバイと嫁さんも勘づいていたのかもしれない。大きく息を吸い込むと噎せるし、頭が痛くなる……いよいよ本気で危険だ。



 どのくらい探索しただろうか?



 単身探索に出ていた皆も帰ってきた。収穫は無し。そして皆一様に吸い込むと咳き込む、頭が痛いと言っている。特にポチとクラウドは完全にダウン寸前だ。鼻が良いのが仇になったか。



 平気そうな夜夢(それでも頭は少しボーッとしたらしい)以外は影に入って休ませている。唯一平気そうな夜夢も親指程の太さに小さくなって(長さは30㎝程)私の着物の袖に入っている……君は暖かい場所が好きだよね。懐は遠慮してか入らないけど。



 かなり進むと大きな扉が目の前に現れた。


 比喩ではない。本当に急に現れたのだ。この屋敷空間が歪んでいるのか?それとも……この胞子で幻覚でも見ているのだろうか?


 妖怪でも高位のポチが体調を崩すほど……これは本気で危険だ……早く出ないと…




 その大きな扉は幻覚ではなく本物で、ノブに手を掛けて開けてみる……鍵などはかかてってはいなかったので容易に開いた。一応警戒して中を覗くと長い長い廊下が続いていた。



(どう考えても罠だよね?)


『罠だな……』



 夜夢も同じ意見のようだ。



 これって入ったら最後、何時までも続く廊下とか。向こう側の扉の鍵が掛かってるとか。


 ホラーなら後ろから来るかと見せかけて~の振り向き直って前を見てから足元から出てくるとか……扉ってホラーでは色々と見せ場だよね。閉鎖的な場所に閉じ込められて早く出たいと焦っていると……霊的なモノは脅かしてくるよね。



 が、妖怪の私にそんなことは通用しない。ホラーな展開なんて見飽きてます。


 もしかして嫁さん……ホラー好きが悪化して自分から入っていったか?



 あの廊下の向こう側の扉の先は体躯座りの坊やラスボスの女の子幽霊が徘徊する廃校か?それともストーカー気味に戦場に先回りしている少女だったり妙齢の女性だったりするお母さん?しかも弟が……あの顔が私敵にはホラーだよ。あのゲーム好きだけど。



 それともゾンビ溢れる洋館か?



 どちらにしてもこの世界の幽霊って物理が通用するから襲ってきたら返り討ちだけどね。血が出るってどゆことよ?



 ま、血が出るなら殺せる……は異世界共通なのね。




 閉じ込められるの覚悟で廊下を進む。だって嫁さんの匂いとうっすらと気配があっちの方からしてるのだもの。行くしかないでしょ。



『主のそんなところが男前だと皆が言っているのですね』


「どういう意味……?」



 夜夢には『そういう意味です』と返された。だからどこが男前なんだよ。






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