尻尾が9本あると色々と便利
間が空きまして申し訳ありませんでした。
コレからも不定期投稿ですのでご了承ください。
窮寄の姿で黒猫の縫いぐるみを抱っこして嫁さんに抱き付かれる状態に陥りドッと疲れた紅蓮です。下町では蓮で通っていますのでよろしく。
さて、今は何時ものように店番をしてますね。でも今日はいつもと少し違って誰も来ない日なんですよね~。
理由としては「家で家族と過ごす日」と国が決めた日だからです。そのお陰で今日は客は来ません。その代わり昨日は忙しかったですよ。客の数が倍でした。
そんな日ですが、嫁さんコト藍苺はギルドに呼び出され急遽仕事に出掛けてしまい……私一人残されました。だって魔物討伐だって言うからポチたち皆お供に出してしまったので一人なんです……寂しいなぁ……
父さん母さんは今日ばかりは家に居るみたいだし、誰が藍苺を呼び出す事を提案したのか……覚えとくからなどこの誰かさん?
「お手伝いしなくとも……私一人で出来ますので、」
「暇なんですよセバスさん。だって誰も居ないんですもん……掃除を手伝ってもお給金はそのままだから今回だけは勘弁して」
そして暇を持て余した私は貴族街の方の家に来ています。勿論家同士が扉ひとつで繋がっているのでベル一つでお客には対応しますよ?
あぁ、言ってなかったけどセバスさんってのはあだ名ね。ポチをポチって呼ぶのと一緒。本来の名前は勿論知ってるけど、何か見た目と一致しない……洋風の顔なのに……だからセバスさんと呼ぶのです。
「お給金はなくてもいいと……そんなに働いていては体を壊しますよ?」
そうよく言われるが、私が1ヶ月不眠不休で働いてもピンピンしてるって知ってるだろうにね。私の周りって優しいんだけど時々過保護って思うんだよねぇ~。
暇だから今回は多目に見てくれとセバスさんに言いながら九尾狐(人間+ケモ耳)になって尻尾でハタキキでパタパタ……掃除の時は重宝する。特に器用な尻尾は9本同時にバラバラに動かせる。
タコの足より器用だと私は思うんだよね。そう言えばタコってあの8本の足の付け根辺りにそれぞれ脳があるって聞いたことあるけど……本当かなぁ~
昔は能力をちゃんと制御出来なくて嗅覚や聴覚が敏感すぎてこの姿になることも簡単にはできなかった。煩いし、臭いが……色々と苦労しました。
でも今ならきちんと制御しているのでこの姿でも普通に生活できる。が、藍苺の餌食になるので絶対にしないだろう。ホントに私のこの姿にそこまで執着する理由が知りたい……いや、知りたくないや。
何となく知らない方が幸せな気がする。
「本当に器用ですよね……私には風切り羽根しか無いのでどうやって動かすのか検討もつきません」
「結構簡単なんだよ……意識しないと勝手に動くけど」
「ええ、意識しないと勝手に動きますね…」
セバスさんは鴉天狗だけど鴉の姿にもなれるんだよね。何処かのバカラスなんてセバスさんの爪の垢でも飲めばいいよ。だって主にそこまで依存しないし、結構ドライな性格だから迷惑かけないし。
うん、私って身内には甘いって気づいてるから。
「暇なときくらい好きなことを――」
セバスさんがそう言いかけた時、カウンターに置いてあるベル型のチャイムが鳴り響いた。小さいのにこっちまで聞こえてくるなんて、流石メイド・イン母さん。空間までも音が越えてきたよ。
「ハァ……暇がなくなった事に喜ぶべきかねぇ…」
「フッ……失礼」
他人事だと思って……ま、いいけどさ
暇を返上してくれたお客の応対をするためにいそいそと店のカウンターに戻る私であった。
どうせさ、何か厄介事なんだろうなぁ……なんて考えながら。




