実は自宅が二つあったりする
実は貴族ということを隠して下町で暮らしている紅蓮と藍苺。
下町に白熊君を住まわせる訳にもいかず……
我が家は一応貴族の位があって……体裁を繕う為に貴族街の片隅……ではなく、割りと中央に鎮座している豪邸があったりする。
一応此方が自宅で下町の方が別館……別邸と言うと何か嫌な響きになるのは何故かな?
まぁ、そんな訳で貴族の家の方にも居なければいけない……。でも、正直貴族街は息が詰まるので遠慮したいのが本音。でもそうもいかないので……
母さんお手製の便利な呪いと管理してくれる眷属を配置している。
白熊くんは一応“貴族の紅蓮”の家に厄介になっていることになっているので……白熊くんは帰るまでの大半を貴族の家で過ごしてもらうことになった。
『…………うわぁ』
「何を言いたいかわかるっスよ」
「何が言いたいの二人とも」
無駄に広い……ム・ダ・に!広い応接室を見たときの白熊くんと八雲の会話。確かこれを初めて見たときの八雲と同じ反応してるね白熊くん。
確かに……無駄に広いし調度品も無駄に豪華だよね。我が家には要らぬ長物……だけど一応……ね。
貴族って色々と面倒だよね……ハァ~
「ほら、ボスもこんな豪華な調度品も邸も欲しくなかったらしいっスよ……何でも藍苺様のお父上(白の王)…が有無を言わせず贈ってきたって話っスよ」
『………うげっ』
「うん、白熊くん言葉を話そうね。八雲は説明は後でやってね……私もここに居ると気が休まらない」
豪華と言っても流石は王族と言ったところなのだろうか、品があり下品な金ぴかではないのがすくいか。
八雲の言った通り白の王が贈ってきたので破棄したいのだかそうもいかず、悪乗りした王妃に母さん達も色々と手を加えて……侵入者対策何かは王宮顔負けのセキュリティ…… 母さんも力の入れ処が違う気がする。
ま、やってくれるなら有りがたいんだけどさ。
「ここには私達は住んでないから好きなように過ごしてくれて良いよ。勿論物を壊されると困るけど」
『そんなことデキナイ……』
「デスヨネ……」
「ここの管理は私の眷属のセバスがやってるから彼に色々と言ってくれたら良いからね。」
セバスってのは勿論私がつけましたが何か?
燕尾服が似合いそうなサラサラ黒髪に暗褐色の目をしてて長身……執事業が板につきそうならもうこの名前しか浮かばなかった……ゴメンねセバスさん。
「いえいえ、ここに置いてもらえるだけ有り難いですよ。」
優しげな雰囲気と見掛けに騙されそうだが彼は眷属なので当然妖怪です。
―――しかもかなりの力を持った妖怪で怒らせればそれ相応に恐い。
あれ?みんな恐いかも……うちの眷属たち。
ちなみに妖怪の種族は……悪魔じゃないよ。妖怪だからね。――種族は鴉天狗。変化を解いた姿は一番人に近い。和風の装いをした堕天使って感じ。いつもは燕尾姿だけどね。
『セバス…さん。まんまだ…』
「デスヨネ~」
「どうぞ何なりとお申し付けください」
でも見た目に騙されるなよ、彼は些細な誤解で――見た目的に悪党だと勘違い――やってもいない罪で討伐されそうになって計50人程の手練れを病院送りにしたお人だぞ……歳は……奏よりは年下らしい。それでも100年は生きてるとか……いったい奏ちゃんは何歳なんでしょうね?
で、その勘違いが幸い?して私が派遣されることになって今に至る。眷属では一番の新人さん。でももう数年は仕えてもらってる。
いやぁ~強かったわセバスさん。同じ羽根を持つもの同士だけど使い方のバリエーションがすごいの何の……年の功だね。でも少し抜けてるんだよね……誤解されても気が付かないとか……さ。
家事スキル、執事スキルは完璧なのに……天は二物を与えなかったのか?
「それにしても……中々起用なお手をお持ちですね。紅茶をこんなにも器用にお飲みになっていらっしゃる熊は見たことがありません……大変お可愛らしい」
『あ、どうも』
「男に可愛らしいと言っても流石に嬉しくないだろう……なぁ?」
「まぁ、ソッスネ」
「私も嬉しくはありませんね」
「………流石の藍苺も自分が可愛いと言われても喜ばないぞ」
『はい?』
「あぁ、此方の話だ」
我が家の事情を知らない人が聞いても分からないよね、ごめんごめん。
少しはセバスに慣れてきた白熊くんを邸に残し私は一旦家に戻る。
店番は分身の誰かに任せておけば良いのだけど、彼処に居るためには色々と……外見に気を付けないといけないから面倒なんだよね。
ほら、下町の雑貨屋店主のレンと下町の元締め貴族の紅蓮とは分けてるからさ。教師の皆さんを集めたときも一応会議の場として下町の雑貨屋を選んだって事になってるだけで、店主と同一だとは誰も気がついてないのよ……鈍いよね。
だって髪と目の色変えて着ている物を変えただけなのに……なぜ気がつかない。
勿論下町で皆を纏めている所謂幹部達には知られているけど。
そんなに変わるものだろうか?
《マスターは貴族として振る舞うとき少し近付きがたい雰囲気を出してますから》
(それはどう言うことだよクラウドさん?)
そして家に着くと……
「レン!!」
ガバッ……っと効果音が付きそうな勢いで抱きついてきた半泣きの嫁さんに若干引きながら何があったか聞いてみる。
「どうかしたの?そんなに泣きそうな顔して」
「今日はギルドの幹部皆が出払って仕事は休みだって……俺そんなこと聞いてないっ!」
「あぁ……」
一応藍苺はギルド内で五本の指に入る最上位の傭兵だ。勿論幹部と数えられるが、何かとハブられたり…今回のように何も知らされずに自宅待機はよくある。年齢や女性であることもハブられる要因だと本人は思っているが、幹部連中(両親含む)にとっては除籍してるとはいえ王の娘(実際は姪)を危険な目に会わせることは出来ないのでハブられるのだ。
勿論幹部連中以外では藍苺が元王族とは知らない。
私も一応幹部だと言われているが、店もあるので余程の事がない限りはギルドの仕事は余りしない。
ま、殿下方に依頼されればするけどさ。
「いつもの事だよね」
「冷たい…レンが冷たい…」
「で、今日は休み?」
「うん。」
嫁さんには悪いけど多分その幹部連中が忙しいのって私のせいだわ(笑)
きっと貴族の館に抜き打ち調査に手払ってるんだよ、王妃辺りから依頼があって。
白熊くんだけでは無いと思ったんだろうね。王妃様は一掃する機械を探っていたから。
「ハブられた……( TДT)」
「まぁまぁ……」
「………モフモフがあれば泣き止む」
「………え?私?σ(^_^;)?」
嫁さんが言うことにゃ、私にモフモフの獣の姿になれと。何れが良いのさ。
狐?虎?それとも白龍?
「虎」
「そんなキラキラした目で見ないでよ」
キラキラした目で私を見ないでよ……そんなにモフりたいの? でかい猫と戯れたいの?
********
「ムフフフフフ…♪」
「………」
根負けして窮寄の姿になりましたよ…それがなにか?
「でっかい虎に抱きつくのって夢だったんだよ~♪……あぁ、幸せ…」
「……ガウ…」
翼は邪魔だからしまっているけど、かなり今の姿でかいから部屋が狭く感じる。本当にでかいからねホントに。普通の虎でも三メートルくらいはあるらしいし……私が四メートル弱あっても不思議じゃないよね、妖怪だし。悪名高い窮寄だし。
「あぁ~フワフワモフモフ…ムフフフフフ…」
「ギャウゥ」
首に抱きつかれると首に嫁さんの全体重が掛かるが、流石腐っても窮寄、成長途中の私でも苦でもない。ここで説明すると九尾、窮寄、白龍の中で一番体重があるのが窮寄なんです。体格も桁違いに大きいしね。九尾も大きいし、白龍も尻尾を入れた全長は長いが、ホントに窮寄はでかい……口を開けただけで人の頭なんか……訂正、スイカを一口で食べれます。
血生臭いのは嫌いだ
「ブラッシングしてもいいか?いいか!?」
「……ガウゥゥゥ(もうどうにでもしてよ)」
断ってもする気満々だよね?
言うが早いか意気揚々とブラッシングを始めた嫁さんに呆れながらも大人しくブラッシングをされる私。別に嫌いじゃないし、ブラッシング。
自分では届かない背中とか結構好きなんだよね。
「艶々にしような♪」
「~~~♪」
う~ん……気持ちよくて眠くなってきた……
「あぁ……九尾も尻尾がモフモフ×9だから九尾も捨てがたいけど……天鵞絨の様に滑らかで……あぁ幸せだぁ……ムフっ」
「……(聞いてるとタダの変態だぁ~)」
ブラッシングから終いには濡れタオルで私の毛並みを拭き始めた……止めなかったらシャンプーもしそうな勢いだ。実際九尾の姿になって日向ぼっこをしていたら……「草が付いてる」とか「少し汚れてるぞ♪」なんて言って自慢の怪力で私を風呂場に引きずって行き身体の隅々まで洗われました……嫁さんじゃなきゃこの世からとっくにおさらばしてたよ。
「……シャンプー…は……」
「グァァッ!」
「ハイ、ゴメナサイチョウシノリマシタ」
気を抜けば直ぐにシャンプーに持って行こうとするんだよなぁ……。だからそんなことを言い始めたらグァッと口を開けて噛みつく様に意思表示している……すると素直に引き下がる。
多分これはお約束の言葉になってるので半分は冗談だろうね。半分は本気だろうけど。
「ほらピカピカだ」
「クゥ~ン(別にそんなに代わり映えしないって……)」
終わったら終わったでまた首に抱きつきスリスリし始める……もう好きにしなよ……はぁ~……
今日も藍苺のモフモフ好きは健在でした。
もう少しで白熊君は帰ります。




