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俺の夫(中身嫁)が恐いんだが俺はどうしたらいい?

 文字で表現するのが難しい恐ろしさ……?


 いえ、私の才能が足りないだけです。

 ――藍苺side――




 はぁ…、あのご令嬢って本当に何を考えているのか分からない。自分で身を守る術も無いのに面倒事やチンピラに喧嘩売ってるし……みんな伸したけど、俺が。



 それまでは世間知らずのご令嬢だと目を瞑っていた。だが、これだけは堪忍なら無い。



 あろうことかレンの仕事の邪魔になることをしようとしていた。勿論俺だってレンの役にたちたい。けど分は弁えている。俺が行ったところで対人戦は慣れていない俺に何ができると言うのか。

 足手まといになるなら行かない方がいい。それは俺だって分かってる……分かっているけど腑に落ちない。



 なのに……あのご令嬢は―――




「夫婦なら助けなくてどうするの!」




 ―――と、叫んで俺の制止を振りきって屋敷に向かってしまった。


 力加減を間違えて怪我でもさせないかと躊躇したのが間違いだった……あのご令嬢結構な力で俺を突き飛ばしたぞ。見かけじゃ判断できないと思ったよ。




 そして俺の制止を振りきって張り切って屋敷に入っていったバカ令嬢を連れ帰すために屋敷に俺も入ったんだ……そしてやっぱり案の定捕まっていた。

 グウの字も出ない。




「放しなさい!私を誰だと思っているのです!」



 うん、飛んで火に入る夏の虫だと思うよ。もしくはいい鴨。都合よく手に入った人質。



 レンはまだ来ていない様だ。さて、どうしよう。先にも言ったが俺は対人戦は苦手だ。未だに躊躇する。情けないがこればっかりは慣れだから……人と闘う事が無いに等しい俺にとってはどうにもなら無い。

 たまにレンと組み手したりするけど……それは所詮組み手……命の取り合いとは違う。



 レンが来るまでにこれをどうにかしないと……レンに迷惑がかかるだろう。それでなくても手間をかけさせた。

 俺たちが捕まりさえしなければもっと迅速に捕まえていただろう。

 それにさっき何故か大きな音もしたので何人かに気づかれたかもしれない。あのバカ令嬢何してくれとんじゃ。







 そして隠れる場所も無かった――あのバカ令嬢が叫んで俺の名前を呼んだ所為もある――ので直ぐに見つかってしまう。


 そしてバカ令嬢を盾に俺に触れようとした時、





「どうしてまた戻ってきた?」

「(うおっ!)!!……っ…ビックリした」





 昼間だと言うのに灯りがないと薄暗い屋敷の、しかし人がいれば分かるくらいの明るさにいきなり現れたレンに吃驚する。

 俺がレンに気がつかないなんて……どんなトリックを使ったんだろうか?





 それからのレンは速かった。そして恐かった。



 犯人が人質にナイフを突きつけて脅しても「どうぞどうぞ」と指をポキポキ鳴らしてニッコリ……例えはどっちを選んでもぶっ飛ばす気だ。

 レンはやるといったら殺る。


 あのバカ令嬢にはレンも大層ご立腹だろう。内心どうなろうといいと思っているかもしれない。まあ、そんなこと言ってても助けるんだろうけどな。

 レンは 自分で思ってるほど冷酷じゃないから。



 少し青ざめた犯人とレンの言葉に声を出せず唖然としているバカ令嬢は笑える顔をしていた。

 あ、ナイフを俺に投げてきた……終わったなコイツ。勿論俺だってこの程度避けられる。



 問題は……レンが寝不足何じゃないかって事なんだよなぁ。

 仕事で朝も帰ってこなかったところをみると寝不足でイラついている気がする。寝不足だと機嫌が悪いからな~……最悪死人が出るかもな。ご愁傷さま。



 危惧していた通りレンは寝不足で機嫌が最悪だった。

 俺が条件反射でナイフを避けたのとほぼ同時にレンが犯人の方に突っ込む。犯人も突然のことで反応できなかった様だ。そもそもナイフで人質を脅していたのになぜ投げたし。

 もう犯人の頭の足りなさに同情するレベルだ。




 その後あまりの悲惨な光景に気を失ったおバカ令嬢を担いで彼女の自宅へと届けた。勿論後々事件の事情聴取があるのでご両親には事細かに説明した。ご令嬢の無茶ぶりはギルドに報告してブラックリストに載せておくように言っとかないのな。俺がやらなきゃレンが殺るだろうけど……違った(違っていなかも)やるだろう。うん。





 何が恐かったって……笑顔で犯人にキャメルクラッチかけたり、その他何処で覚えたのかプロレス技を次々かけ、モザイク処理しないと見せられないよ!なちょっとグロテスクな場面を見せられたら恐い以外の感情があるだろうか?


 俺は恐怖感しか浮かばなかったよ。



 俺の今の心境は――何が起こったのか分からない(理解したくない)、ホラー映画とかゲームとか2次元的なそんなチャチなモンじゃねぇ…何を言っているのか分からないだろうがこれ以上直視すると俺のSAN値がガリガリ削りて…――だ。




 SAN値ってなにか? 説明は苦手なんだけど、確か正気を保っておける値を数値化したもの……だっけ? うん、分からなかったら各人ググってください。


 クトゥルフ神話とかそんなので聞いた……はず。



 まあ0になったら発狂してゲームオーバーってことだな。




 イガグリご乱心事件後のキッチンでの出来事を思い出したよ……あれはレンがヤンデレ疑惑が浮かんだ場面だったな。



 ごめん、ヤンデレは勘弁してくださいお願いします。






 そして場所は移って……



 ――ギルド本部・第3会議室――





「で?なにか申し開きは?」


「他に適任者が居なかったの!……その、まさかランちゃんが捕まるなんて…思わなかった」

「ホントにご免なさい。」



「無事で良かったけど……これは2トップの私達にも責任があるわね……」

「二人とも迷惑かけてすまなかった……怪我はないか?」


「―――まあ、私は無いけど……」

「俺も無いけど…」



 言えない……ご令嬢の意外な馬鹿力で尻餅ついて強かに尻をぶつけたなんて……そしてちょっぴり今も痛いなんて…恥ずかしくて言えない……




「……まあ今回はご令嬢が勝手な行動をとって嫁さんを突き飛ばして一時的にこっちから不利になった事だね。幸い誰も怪我しなかったから良かったけど。犯人のバカさ加減に救われたよ」

「…あぁ、人質とったのにナイフを投げたもんな」



「今度から依頼者の経緯も調べるようにしよう。元々調べる手筈だったんだが……」


「新人の教育のために手伝って貰ってたのが仇になりました……書類不備に気付かず判を押したようです……監督不届きは私の責任です」


「忙しさにかまけていたツケね。」




 そもそもレンが昔指摘していた。本部に仕事が集中しすぎだと……レンをよく思わない幹部は自分の支部に客をくれと言っていると勘違いしていたが、そんなことしなくてもウチは繁盛している。



 レンの指摘は、遠い村から態々(わざわざ)依頼に来る人が多くて、折角各地に支部を作っても此方に依頼が集中していては意味がない……という意味であって、客をこっちに寄越せと言う意味ではない。勘違いも甚だしい。


 確かに難易度が高すぎる――所謂最上位とか――依頼は受ける人が支部に居ないのだから仕方がない。だが、お使いクエストと呼ばれる最下位の依頼はギルドに登録していれば子供だって受けられる。ただし適性検査は受ける決まりがある。



 そこで今回、ようやくレンの指摘に皆が重い腰を上げることになった。





 まず、今ある支部に中級~上級の傭兵を何名か派遣すること。これは任意で選ばれる。後は目の届かない所に問題児を殺るわけにも行かないのでブラックリストに載っている者は除くらしい。当たり前か。


 選ばれた者は左遷ではなく、各支部で腕をあげてもらう為に派遣するという事もきちんと告げる。左遷されたと腐ってしまっては元も子もないからだ。


 そして新たな傭兵の公募も始めるらしい。


 各支部に公募を募り傭兵を育てる事も始めないと多分このままだと俺たちの寿命が疲労で縮む。





 それと今回はレンも王家から正式な依頼だったようで何やら約束事を取り付けていたらしい。その提案を実装するためにギルドの2トップの両親にも手加減なしな交渉を繰り広げていた……


 まあ、下町の為になるならいいか。





 レンの実現したい事はどうも下町の子供たちの教育らしい。確かに白の国は字を読めるあるいは書ける者が多いが、それは地方ののんびりした田舎町や王都に住む貴族や庶民位だ。

 元は移民や田舎から上京してきた人たちの祖先や、廃止され解放された奴隷たちを祖先にもつ下町の人々は活字率が頗る低い。


 勿論ある程度は読めるが書くのは苦手という人は大人でも多い。書けなくてもそんなに苦労しなかったらしい。それに子供たちも重要な働き手だ。勉強に費やす時間など食いっぱくれてしまわないように取れなかった。


 昔は仕事もあまり選べず、選べる仕事も活字など関係なかったのも低い原因かもしれない。




 ま、今は仕事は選び放題――ギルドの提供する低ランクの依頼とかetr――なのだが……文字の読み書きが壁になっている。



 レン曰く、“仕事はあるのに文字が読めない事を理由に仕事を断られた”という事が多くあり、また、根強く残る下町にたいして庶民が下に見る選民意識が残ってるのも問題だとも言っていたな。

 元々は他国から連れてこられたか、戦争や飢饉で逃げてきた人々の子孫と元から暮らしていた自分たちのどちらが偉いかなんて今でも大差ないと思うんだけどな。こればっりは色濃く根付いたものだから時間をかけて変えていかないといけない……面倒だよな。


 一方的に毛嫌いされている下町の人々は逆境を乗り越えてきた先祖を待ってるだけあって辛抱強く明るい人たちだ。中には頑固な人もいるけど、それはどんな集団でも居るんだし別に悪いことでもないよな?


 それにちゃんと下町がある事には意味があるんだし、本当の意味を知らないのは時間と共に記憶が風化していったからだろうね。





 さて、レンはどうやって活字を広めるつもりだろう。王だって念願の全国民が文字を読める様にと協力してはくれるだろうけど、無償でやってくれるとは到底思えない。だってあの王タヌキだもん。

 お金の問題はどうすんだ?時間の工面も教材も高い。王都の人工の半数を占める下町の子供のいる家庭にどうやって活字普及をするんだろう。



 うん。まあ、レンの采配を見ていよう。



 多分自分で無茶して頑張るんだろう。俺不器用だけど手伝えるかな?





 映像にしたらR20になるかもしれない。ちなみに死にそうになったら回復をかけてまたボコってました。恐ろしや紅蓮……




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