3
その頃あの人たちは……
牢屋の中からこんにちは。紅蓮の嫁・藍苺です。
どもども。ただ今とあるご令嬢と一緒に捕まって牢屋に閉じ込められてます。
言い訳としてはこの護衛対象のご令嬢が自ら捕まった感がするんだ。
俺が守ろうとするのに自分が前にたって逃げろ何て言うんだぜ?俺護衛、ご令嬢護衛対象。俺間違ってます?
いくらさ、俺が守ろうとしてもこれじゃあ守れないぜ?
このご令嬢が護衛無しに外に出してもらえない理由がわかった気がした。正義感が矢鱈と強い。周りが迷惑なほど……これなら護衛の方から放棄したくなるわな。
つまりは俺は体のいい生け贄ですかそうですか。
何か変だとは思ってたんだよ。特にこのご令嬢…厄介事に自ら突っ込んで行くし。その都度フォローに回るのに疲れたよ。
商店を見て回るだけなら楽なんだけど、目を話すと直ぐに路地裏入って行くし、ナンパには真面目に答えてるし……何だよ「運命の相手以外にはrn」だよ。メルヘンな頭してんだなぁ……夢見がちなご令嬢は屋敷で大人しくしててほしい。ホント。
さて、どうする?俺一人くらいなら無茶したら出られそうだけど……ご令嬢抱えて逃げれる程隠密とか脱出には向かないからなぁ……
最悪俺が暴れてご令嬢には脱出してもらうのもいいんだけど……絶対「見捨てるなんて出来rn」とか言い出すぜ……ああ面倒。
「ここから出しなさい!……」
「(騒いでも無駄だって……)」
「貴女も声を出しなさいっ!!」
「騒ぐだけ殴られるのが落ちです。ここは慎重に……」
「彼らはわたくし達を売り飛ばすつもりなのですよ。うかうかしていれば……」
そう言ってまたわめき始めた。こんな調子で牢に入れられてから元気に騒いでいる。
正直この元気を違うことに役立てればいいのに、と思う俺は間違っているだろうか?
「うるせーぞっ!!」
「きゃっ」
警棒の様なもので牢屋の鉄柵をガンガンと殴る。そうされると流石にご令嬢だからか怯えて大人しくなるが、また忘れてように騒ぎ始めるんだから学習能力がない。
ほら、さっきも同じ事して怒鳴られたのにまた………そろそろここから出ないと俺のストレスがマッハだ。主にこのご令嬢の金切り声で。お前はバンシーかっての。
えぇい、喚くなぁぁ!!
どうやってこのご令嬢を守りながら脱出しようかと手を考えていると牢屋の外――牢屋は地下にあるからその上の階――が騒がしくなった。
どうも誰か他の犯人が来たようだ。俺達のように捕まった人でも連れてきたのだろうか?
「――――だ。コイツはリストに無いだろ……」
「すみません……他国から来た様で」
「………ふん。まぁ良いだろう。見目も良い…さぞいい値で売れるだろう」
やっぱり捕まった人を連れてきたようだ。
もしかしてコイツらレンが追ってた連続誘拐犯か?しかも奴隷商人と繋がりも有りそうだし……チッ、何とかしてレンに伝えないと。
「それにしてもこんな上玉どうしたんだ」
「食うに困っての垂れてたので連れてきたんでさ」
あぁ、ムカツク奴等だなぁ……。
暫くすると一人の女性を連れてきた見張り役が俺達の牢にその女性を入れてさっさと出ていった。
新しく捕らえられた女性は長い薄い金髪の髪で俯せになっているので顔は見えない……。また守る対象が増えてしまった……いや、今外に出ていたら逆に人質に取られてこっちがもっと不利になってた。
焦らずにいてよかったと思っておこう。うん。
にしても……この人……なぁ~んか見たことあるような……いや、ってるような気がする。
「―――っと!…ちょっと!!何で今あの犯人を倒さなかったの?今チャンスだったわ――」
「(この調子で騒がれたら……ホントに確実にコイツ死ぬわ……どう切り抜ける?)」
こんな時レンが居てくれたら……弱気になるな。こんな時だからこそ……
「ねぇ……ねぇっ」
「ん?」
あれ?俺身元不明の彼女に話しかけられてる?
*******
ふぅ……こんなものか。
ギルドに巣くっていたバカ共はここに潜伏している頭二人以外は全て排除した。後はこの屋敷の何処かに隠してある証拠を集めるだけ……。
(そっちはどうだ?)
(あった。分かりやすい場所に隠してあった……犯人は馬鹿らしい)
(大体こんなことをすること事態が馬鹿なんだ)
((うん、確かにな))
おっと、俺は紅蓮の分身体の参だ。たまに店番をしてるのは俺。たまに一人称が俺から私になる時もある。言葉使いも変わるかな?
まぁ、どうでも良いよな。
さて、俺達分身は3人で手分けして証拠をかき集めている。捕まえたのに証拠不十分の無罪放免なんて洒落にならんからな。徹底的に潰す……その為には苦労は惜しまない。
ん?本体はどこだって? 本体はターゲットの確保を担当してるんだ。どっかに潜んでるだろ。
にしても……ターゲット達のバカさ加減にはホトホト呆れる。
机の引き出し(鍵付き)に隠された名簿、本棚に紛れ込ませた帳簿、厳重そうな如何にもな金庫……これはもう見つけてくださいと言ってるようなものだろ。
まさか罠……なことは無いか。無い、ナイナイ。ホントは色んな状況を想定しないといけないけど、これはない。
見つけた証拠の数々は眷属の兎天の首に下げてるカバンに詰めて王の所に届けてもらう。影に敵を引き込む事は出来なくても、影に入って移動できるコイツなら誰にも見られずに届けられるだろう。
余談だがの兎天の役目になったのは他の眷属が敵の刺客と間違われたことがあるから威圧感の無い兎天の役目になったというなんとも世知辛い事情があったのだ。
みんな見かけは怖いからな……良いやつらなのに
さて、俺達の仕事も終わったかな。
藍苺と紅蓮の分身・参視点でお送りしました。
多分明日もこの時間帯に更新します。