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 紅蓮以外の視点でお送りします。


 どうも、引き続き実況して参ります。マスターこと紅蓮コウレン様の眷属(情報処理・管理担当)の見た目はロシアンブルー……中身は万能型自立思考プログラム(能力だけ)……しかしてその実態は。



 いつもマスターの影に潜んでます、猫妖怪のクラウドです。




「(ネタ古くないか?)」

《そうですか?白神さんが登場するときにでも使えと言われてましたが……》

「(おい、どうなってんだお前の頭は……聞いてんのか白神っ!!?)」




 どうやら白神さんお得意の2次元ネタ(しかも古め)だったらしくマスターは白神さんに対して苦言を言っていますが当の白神さんはどこ吹く風にスルーしています。


 マスターも隠密行動しながら脳内通信で騒ぐなんて器用なことを良くできるものだと感心します。




 内心騒いでいても任務中――王家からの依頼なので立派な任務です――は物音を経てず、ターゲットに忍び寄っているマスターは本当に凄いです。白神さん風に言えば「紅蓮マジ冷静」?と言うと思います。今はマスターの怒りのお説教でそれどころではないので言わないとは思いますが。


 さて、今狙っているターゲットは犯人グループの中でも下っ端……あの侵入した部屋の持ち主です。元はとある貴族お抱えの護衛だったらしく、膝に矢を受けて引退……その後ギルドに入るも膝の怪我が思わしくなく下級止まり。


 日々の生活の糧を稼ぐためこんな事に手を染めたようです。




 人生を棒に振るいましたね彼。プライドから傭兵稼業から農夫になるのが嫌だったのでしょう。



 余談ですが、農夫と言っても種類があって、大地主なら下手な傭兵よりも、或いは商人よりも裕福です。土地を一から開墾してきた家系ならそれこそ貴族レベルに裕福ですね。


 人と言うのは目先のことしか見えないものなんですかねぇ。地道に田畑を耕すのがそんなに辛いことでしょうか?



 マスターの様に楽そうな反面、自分の命を危機に晒すような稼業よりもそちらの方が安全でしょうに。それに自然災害は有るでしょうが、そちらの方が確実でしょ?



 その日暮らしの危険な仕事に着くなんて……どうしてなんでしょうね?




 さて、マスターの動きを実況しましょうか。




 ターゲットに忍び寄り、後ろから首に手刀を入れてKO……鮮やかですマスター。因みに今はステルスは使ってませんでした。闇に隠れて……と言うやつですねカッコいいです。



 次に残りのターゲットの次々とKOしていきます。鮮やかすぎて惚れ惚れです。その時のマスターの心の声(チッ、ゾンビなら気絶なんてまどろっこしい手を使わないで「処刑」出来るのに……はぁ~面倒だ )と言っていましたが……「処刑」ってなんでしょ?



『あれだ、「テーレッテー」の曲とともに……』

「(それは処刑BGM……「処刑」ってのは傘って企業名の死神さんの一撃必殺の技のことね)」

『あぁ、あのドヤァ……ってやるやつか』

「(………2の辺りの番外編のヤツねそのドヤ顔見れんの)」




 お二人の話は昔から7割程理解できませんでしたが、今回は全く理解できないようです。なんですかね?ドヤァ……って。



 沈めたターゲット達を縄で縛り、私の能力「影隠し」でマスターの影に放り込んでおきます。逃げることも死ぬことも出来ないし真っ暗闇に気が触れてしまわなければ良いのですが……大丈夫でしょう。



 余談ですが、私がいつも待機しているマスターの影とは全く違う空間なので私とかち合う事は有りません。それと、マスターは眷属の能力を少しだけ使えます。


 例として、ポチ先輩の氷を操る能力等々。私達眷属もマスターの覚えている技や属性を使うこともできるようになりました。それでも得意不得意が有りますから使えるのは極わずかですけどね。




 白神さんのマスターがターゲット達を縄で縛っているときに『ドS』と言っていましたが、それは聞かなかったことにします。


「(最善の判断だね……なっ、白神!!)」

『………(やっぱドS)』




 何も聞いてません。見猫・言わ猫・聞か猫です。




 ・・・おっほん。さて、下っ端の犯人たちは捕まえました。固まってくれていたのは幸いでしたね。バラバラな所に居られたら手間がかかりました。どうやら彼ら犯人達はこれから犯行を行う予定だったと推測されます。実行部隊が伸した彼等なのなら、頭の方は高みの見物とやらを決め込むつもりでしょうか?


 またもマスターの怒りのボルテージが上がったのは言うまでもありませんね。






(相手は人質をとってる……下手には手を出せない……と思い上がってるだろうね)

『人質と言っても赤の他人……どうする?』



 犯人はマスターの両親の正義感や優しさを逆手にとって操ろうとしてます。人質は他人……しかし年端もいかない子供達。良心のある者なら躊躇するでしょう。

 ギルドを経営するには良心も必要でしょうがそれではダメなのです。



 そんな事をマスターは心のなかで呟いていました。




「(人質が誰であれ、私の家族に手を出したんだ……それ相応の報いは受けてもらう)」

《・・・ギルド内スキャン終了してます。ターゲットの位置は3階。マップを右上に表示てしてマークします》

『……まるで昔みたいだな』



 はい、そうですね。私と出会った頃と……まるであの頃と同じ様な事ができるなんて……これがご都合主義と言うものなんですね?



 マスターはどうやら残り二人の頭を少し泳がせる様です。何やら企んでいるようです……スイマセン、言葉を間違えました。とある作戦を思い付いたようです。上手く行くことを祈りましょう。










        ※※※※※※※







 ――藍苺ランメイside――




 予告通り紅蓮コウレンは次の日の朝帰ってこなかった。久々の独りでの朝食は8年前のあの出来事を思い出す……あの時の絶望感と虚無感は今でも鮮明に覚えている。

 一人とは言っても店のカウンターには八雲が店番をしているので厳密には独りではない。8年前も紅蓮もといレンの眷属達が居たので本当の孤独ではなかったが、



 それでもあの時の寂しさはハンパではなかった。




「今日の献立は……玄米の青菜ご飯と豆腐の味噌汁に鯵の開きに葱の酢味噌和え……とホウレン草のお浸し……か」


 ※青菜ご飯は塩、醤油に鰹だしで味付けした青菜とご飯を混ぜ刷りゴマ(白)をまぶしたもの。美味しいかは人次第。



 俺の嫌いなものと好きなものを混ぜてくるとは……流石に把握してるよ。それに弁当も作ってあるし……至れり尽くせり。俺は一生胃袋握られたままだな。


 醤油を掛けてホウレン草のお浸しから消去法で食べていく。嫌いなものから最後に好きなものを、それがレンの口癖だ。確かに最後に口のなかに残る味は好きなものの方がいい。

 それでも好きなものを先に食べたくなるのは……仕方ないと思う。


 速い話が俺は野菜が嫌いだ。特に苦くて癖の強い葉物野菜なんかは俺の天敵だ。ピーマンも嫌いだしニンジンも嫌いだ。臭みとか匂いもダメだな。

 これでも改善した方だ。昔はもっと好き嫌いが激しくて偏食だった。それを必死に直したのがレン。


 ま、あの時はベルって女性だったけど。俺たちは夫婦で子供も居た。もしかしたらもう少ししたらもう一人増えてたと思う。口に出してなかったけど、あの時すでに二人目も居たかもしれない……それはいまだに聞けないでいる。


 ま、前世は前世……なんだと思うようにしているんだ。



 それにしても子供に戻った所為で俺の偏食は一時期悪化したが、献身的なレンのお陰――他人から見たら虐めてる様に見えたらしい。決して虐めではない―でこ一応食べれるほどには改善された。レン様様だ。



 っと、次は葱の酢味噌和えだ。これはお浸しよりもまだ食べられる。その次は鯵のひらきだな。

 俺は基本一点食いだ。レンも好き嫌い克服の為に嫌いなものから食べるようにしていたら自然と一点食いになったらしい。

 確かにな。俺も昔は一点食いではなかった。



 鯵のひらきも食べ終わり、最後にご飯を食べて味噌汁を飲む。さて、あとかだ付けしたら久々の仕事に行こうとするか。







 あ、弁当の中身って何だろ?ちょっと楽しみだな♪









 片付けも済ませ八雲にも挨拶して仕事をしにギルド本部へと向かう。

 背中に背負った大剣が何だか何時もよりも重く感じたのは一週間も休んだ所為か?


 この中二心をくすぐる大剣は中二病を発症したから選んだわけではない。これしか使えなかったんだ……orz



 訳として、俺の馬鹿力にどの武器も合わなかった事だな。

 片手剣とかは剣の方が先に悲鳴をあげて折れる……、太刀の類いも同じ様に折れる……、槍なんてモロにバキッと折れた……、弓?俺仲間に当たるんだけど…良いの?

 こんな事情があるんだ。


 一時期はハンマーを使おうかとも思ったけど……それならリーチのある大剣の方が良いだろうとレンにこしらえて貰った。俺的には別に良いんだけど……大剣も大剣で消耗が激しいのが難点だよな……orz


 拳で闘った方が良いんじゃないかと思えてきた今日この頃……orz




 結論、俺には丈夫で馬鹿力を活かせる大剣があっていた。投擲武器もノーコンでマトモに使えない。使えば味方に当たるし、大剣で闘っても味方を巻き込む。

 つまりは……一人ボッチで仕事した方が良いってことだな。


 寂しくなんかないならな。





 うそ、ホントは寂しいです。でも、変な目で見てきたりスキンシップが過剰な奴とかもいるから一人の方が気が楽っちゃ楽だな。




 下町の大通りから市民街大通りに入り商業区に向かう。この街は下町の人々が割りを食う形になっている。攻め困れたら一番に被害が出るのが下町だ。

 だが、それだけじゃないのが御約束。じゃなきゃ同じ街に本部と下町支部があるわけない。その話はまぁ、また今度にでも。




 賑わいを見せる商店に目を向けることなくギルド本部に一直線に進む。たまにナンパしてくるバカもいるが無視しているとそのうち消える。

 大剣を担いでいる女に声をかける方がどうかしてる。気が粗い奴なら即気絶してるだろうな。


 今生の顔は前世()の小さい頃に似ているせいもあって……結構美女らしい。けっ、所詮顔かよ。前世でも女と勘違いしてナンパしてくる奴も居たって毛なぁ……今あったなら滅多刺し……あぁ、いや何でもない。




「あ、久し振り♪具合はもう良いの?」




 彼女はギルド受付嬢の名物双子の片割れ。未だに妹なのか姉なのか区別がつかない。




「なんとか。今日は軽めの仕事頼む」


「はいはーい……えっとねぇ~…うん、これを頼もう。はい、依頼書」


「何々……」




 ――依頼内容――



 要人の護衛。豪商のご令嬢が街で買い物をするので護衛求む。


 *依頼人からの一言*


 なるべく女性で頼みます。





 ―――か。う゛~ん護衛って苦手な依頼だよなぁ。こういうのはレンが得意そうだよな。俺には向かないなぁ……


 違うのに変えたもらおうと受付嬢を見ると……



「(^-^)」


「・・・・(・・;)」



 気のせいか?



「(^-^)」


「σ(^_^;)?」


「いってらっしゃい(^_^)/~~」





 逆らえなかった。




 仕方ないのでその依頼を渋々受け、依頼人の自宅に向かった。そもそも何でギルドに護衛依頼をするんだよ。お抱えの護衛くらい豪商何だから居るだろ?


 な~んか引っ掛かるんだよなぁ……まぁ受けたんだから仕方ないないか。



 俺は受付嬢から依頼人の家の地図を受け取りすぐに向かうことにした。はぁ……まぁ稼ぐためだ、仕方ないさと諦めることにする。



 それにしても何か引っ掛かるんだよなぁ……







 そんな事を言っていた頃の自分に是非とも言いたい。

 


 その勘当たってんぞ!今のうちに止めとけよ!!


 ―――と。




 まぁ、それが約一時間前の話なんだよな。そして現在。



 どうも、前置きが長いよな。女顔の前世が祟ったのか今生では女になりました、顔だけは儚げ美女――藍苺ランメイです。

 我が家の稼ぎ頭になりたいけど、国に雇われてる旦那レンと比べると泣きたくなります。

 そんな俺はただ今護衛対象のご令嬢と一緒に牢屋のなかにいます。


 石の中に居る……なら絶望的ですが、幸い?牢屋のなかにいます。



 石は石でも村が付けば違う意味で絶望的です。






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