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今回短めです。
ところ変わって黒の国……化け猫一族と名高い子爵家のとある一室にて
「烏は鳥目だから夜飛んでるのは違和感が……」
「そうだったか? 妖怪なんてざらにいるからバレないと思ったんかだかなぁ」
「まぁ、バレはしないだろうけど……私的には鷹とか鳶の方が良いなぁ~」
「猫姫の意見は取り入れる事はないと本体も言っていた。」
数時間ぶりだな。弐だ。今、猫姫の部屋の窓辺に止まっている。ご丁寧にも止まり木を置いているため周りに木などなくても楽に止まることが出来る。だが、親切にしてくれるからと言って追及の手を緩めるようなことは無いぞ。本体が如何にお人好しでも我らはそうでもないことを知ると良い。
「そんな与太話はいい。それよりも貴殿らが知っている「物語の真実」とやらをさっさと話してもらおうか? 何かと勿体ぶって8年ノラリクラリと我らを欺いたのだ……待つのはもう止めた…話さねば手段を選ばん」
「……何も勿体ぶった覚えはないけど。そうね、もう8年も先伸ばしにしてたもの。覚悟はできたわ。」
何もかも話そう。猫姫は何処か鬼気迫る様な、それでいて諦めたような、そんな目でこちらを見ていた……。
「――と、言うわけよ……私があのシナリオを書いた所為だと罵られても仕方無い……だから一人で手を打ってたの……まぁ、それももう終わりかな。友達失格な私と付き合うのも、今日が最後ね。」
あぁ、この人は一人で闘っていたのか……と。普通なら思うだろう。だが、我らはそうは思わない。何故なら「直ぐに話せば済むこと」だからだ。何故言わないのかとしか思わない。
当事者の本体が知らぬ内に何かあったらどうしてくれる。俺も、他の分身も死んだらどうするのだ。
私の知らぬところで落ち込んでいる猫姫には悪いが、意識を本体へと繋げる……所謂脳内通信とでも言おうか。
(あー、あー、マイテス、マイテス。本部、コチラ弐……)
(………――って、おからの卯の花食べなさい!……ありぇ?弐?どうかした?)
どうやら本体は晩御飯の仁義なき戦いを今日も今日とて繰り広げていたようだ……藍苺よ、好き嫌いは万病の元だぞ。本体の言うことも聞き入れてやれ。
(………ゴホンッ……ええっと……ミケの所に行ってたんだよね?)
(ああ。その報告だ。)
(うん、壱からの報告はもう来てるから弐がミケの所に行ったのは聞いてるよ……で? 散々延ばしてきた「真実」とやらは何だった?)
私は猫姫から聞いたことを本体に報告した。参程ではないにしろ我ら分身は本体と記憶を共有出来る。報告と言っても口頭ではなく、記憶の共有によって報告はなされる。
(――ふぅーん……なるほど)
(気に食わないか?)
(まぁ、――いい気はしないね)
きっと本体は眉間に皺を寄せて藍苺を不安がらせている事だろう。だが、お残しをする者には……丁度いいのではないか?
(分かった。ご苦労様……もう戻っておいで……)
(戻るもなにも、消えれば一瞬で帰れる)
(……分かったよ。)
(私の記憶と感情の保存を頼む)
私は分身だ。分身は分身らしい身の弁え方は知っている。ま、参は分身としては個性的で生物的な……いや、何でもない。
私は役目を終えれば消えるのみ……それを哀しいと思ったことは無い。しかし、他の者には理解できないだろう。してもらいたいとも思わない。
さて、今回の役目も無事終わった……。私の体は本体の妖力で作られている。その為私が消滅すれば体を構成する妖力は本体へと帰る。そして私は保存された記憶と感情の中でまた役目が来るのを待つのみだ……。
それが私の…………――――――




