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だから………帰れ

 店で未だに厄介な二人が騒いでいます。

 何時間経っただろう。もう分身さんはイライラが怒りに変わってかなり経ってしまった……どうしたものか。この分身さんは私よりも短気のようだ。私がしっかり体のコントロールを握ってないとアイツらに飛びかかりそうだ。


 私も人のこと言えないけどな。ハァ……どうしたものか。




「兄上はこの様な下賎な界隈で商いをしているのですか? どうして上の市民街に設けなかったのですか? 出来なかったのならボクがお力添え致しますよ?」


「貴様、この国を愚弄するつもりか。そもそも貴様は誰だ。レンにはお前のような弟は居ないだろ……それとも妄想の中で作り上げたのか?(嘲笑)」


「……ッ…(怒) そういう貴方は何方ですか?兄上とは同僚の様ですが……貴方こそ話に入ってこないで下さい。ボク達は話しているのです」




 だぁ・かぁ・らぁ・! 




「うっさいわっ!!黙れ貴様らぁぁっ!!!!」



「「(((((((・・;)」」



 すまんな分身さん。私も流石に店で騒がれるのは我慢できない。掴んでいたコントロールを直ぐ様外した。すると憤慨していた分身の分の怒りもプラスされて喉の底から出てきた声も、そりゃぁ大きくなりましたよ。



「聞いてりゃ人の店でギャアギャア騒がしいんだよ。これい以上騒ぐんなら……強制的に外に出ていってもらうぞ……いや、もうそうしてしまおう。そうしよう。うん。」


「え?兄上?」


「レ、蓮……待て、話がまだ!」



「知るかボケ……『転送・ギルド本部の一番高い屋根の上!!』」




 今までのイライラと怒りを込めてこの白の国で王宮以外で一番高い場所に飛ばした。ギルドの屋根と言っても塔の様に尖っている場所に設定したから……下手したら落ちるな……ま、バカでもそのくらい大丈夫だろう。ギルド本部には優秀なヒーラーも居ることだし、二人とも頑丈だろう。


 ……だが、ギルドのヒーラーに迷惑をかけたなら後で詫びを入れておこう。勿論ヒーラー達だけな。






(良いのか?アイツらは邪険に出来ないのだろ?)

(あぁ、良いの。店の妨害されるくらいなら……論外だ。)

《ギルド本部に無事転送を確認……イガグリは落ちました……が、掠り傷ひとつついてません》

(チッ……悪運の強いやつ)

(これが主人公補正か……厄介な)



『おい、ちょっと目を放した隙に何があった?』




((バカ二人が揃って騒いだからギルド本部の尖り屋根にご案内した))

《大体あってます》

『うん。何となくわかった』






 そのあと、店を予定通り分身さんに任せて視覚同調を解いた。


 私は自室のベットで寝そべっていただけなのにドット疲れたのは……あの二人の所為だと悪態をついて嫁さんの診察が終わるのを今か今かと待っていたのだった。



 てか、まだ終わっていなかったのね……診察。








 あれから……大体30分たったかな……。これ程暇なのは毒に倒れて安静にしてろとベットに押し込まれてた時くらいだ。(前作参照)


 もうこの家は私の家じゃない。家を出た私にとっては帰る家は雑貨屋兼自宅のあの家だけ。巣だった私には育った家でしかない……寂しいけどね。


 もう私の居場所は無い。部屋はあるけれど……私が居なくてもしっかり回っている。それでいい。これからどうなるか分からない私の人生に家族を巻き込まないように……離れたと言えば嘘になるけど。けれど、それも確かにあった感情だ。


 一番は幸せな家族を見ているのが辛かったのもある。もう会えない息子を思い出すから……シュン……



 それに、前世の記憶を持っている子供は果たして子供と言えるのだろうか? 今の両親は初子が私だった。けれど、本当の意味で子供と言えるのだろうか? 私はその考えから逃げたのだ。勿論あの二人が私を否定することはないだろう。優しいから。



 変な同情もされたくなかったのかもしれない。それに帰ってきた当時は……少々頭も混乱していた。一人になって考えとか記憶を整理したかったのもある。何千何万……遠い遠い記憶と知識を特殊な本に綴じるのに必死だった。そして遠い過去になりかけていた現在を思い出すのにも戸惑っていた……。



 ホントに異世界旅行は弊害だらけだわ~。


 一人称も「俺」に変わっていたから「私」に戻すのに時間が掛かったよ。



 そんな中身が変わってしまった私は、諸々折り合いをつけるために早々に家を出たのだ。





《大丈夫ですか?マスター…》

(まあ、ね。体は頑丈だよ……悪名高い九尾の妖狐と最凶の窮寄キュウキに伝説的な白龍のトリプルチート種族の血筋だよ……頑丈だよそりゃ)

《いえ、体は頑丈でしょう……私が言いたいのは精神的な疲れです。》



 最近はずっと私の影に潜んでいるクラウドが心配そうに話しかけてきた。何だか最近私は眷属達に心配されっぱなしだ。そんなに私は心配されるほど弱って見えるのだろうか?



(そこまで弱ってないけどなぁ…)


《(それはご自分のことに鈍感なだけです)》


(どうかした?)

《いえ、何でもありませんよ。》



 他の眷属達にも言えることだけど、みんな感情を隠すことに馴れてきた。特にこうして便利な連絡網なテレパシーで会話しているときに私に彼らの感情が流れてこなくなった。私からしたら嬉しい反面、彼らの感情が見えにくくなった寂しさ?がある。これも彼が成長したのだと心から喜びたいものだ。


 精神力が強くなったんだねみんな。



(みんなは?)

《ポチさんはお母様の眷属の皆さんと意見交換に、兎天さんと夜夢さんは森に狩りに行きました。八雲さんはご覧の通りマスターの影で眠っています》

(うん、わかった)



 昔はみんなの様に影に潜む事が出来なかった八雲もいつの間にか出来るようになっていた。出来なかったのは、転生者で昔の人としての記憶と認識が本人曰く邪魔していたらしい。家を出て二年くらいで意識せずに出来るようになっていたとか。


 考えも変わってきているのだろうか?





 そんなことを考えていると、母さんの眷属の豆狸がポンッと音をたてて現れた。藍苺が見たら揉みくちゃにされて抱き締められるだろう……本当に泡を吹くほど絞められそうだ……内緒にしておこう。



『どうも、若様。お初にお目にかかり……ます? 

わたくし豆狸の豆太です。お見知りおきを……主さまよりご伝言です』「診察が終わったので来てほしい」とのことです。」



 見た目アライグマ……を丸くしたアニメみたいなフォルムの可愛い豆太さん(多分私よりも年上)にお礼を言って診察室と化している一室に向かう。勝手知ったる実家ではあるけど豆太さんは私の前を歩き道案内をしている……そうだよね。


 今は私はお客様だもの。ふと、寂しさを覚える。




「こちらです。姫様、若様をお連れしました」


「どうぞ入ってきて~」


「失礼いたします…」



 豆狸の姿でドアを開けようとすると……まぁ、豆狸なのでドアノブに前足が届かない。ちなみに豆太さんは私の膝よりも低い。大きな猫程しかないのだ。チワワよりも大きいけど。いつもはどうやって家のなかを移動してるのかな?


「う、うぅ……とぅっ!……うぅ…」



 頑張っている豆太さんには悪いけど……見ててとても楽しい。



「 wwwwwwwwww――ッ」



 ヤバイ……本当に可愛いわ~。



 豆太さんの頑張りは悪いけど、いつまでも廊下で笑を堪えるのも大変なのでさっさとドアを開けた。豆太さんはというと……ドアに前足を当てて後ろ足で立ち上がり此方を見ていた……涙目で。



「面目ありません……(ウルウル)」


「あぁ~……人には向き不向きがあるよ。うん。」


「(´;ω;`)」



 ドアを開けると向かい合って座っていた嫁さんに不思議そうな目で見られた。あ、入ってくるまでの間ね、後で教えてあげるから。それと母さん……楽しんでない? 日頃豆太さんイジメて楽しんでない?


 もう、ドSなんだから……。程ほどにね。あと、豆太さんの名前つけたの母さんでしょう? もう少し捻ろうよ……ポチって呼んでる私が言えた義理無いけどさ。豆狸だから豆太って……うん。確かな血縁を再確認したよ本当。



「ふふ。豆太、あなたまたドアを開けられなかったの?」


「面目ありません……」


「かっ可愛い……」

「うん、分かったから落ち着こうね?」



 ホラホラ、豆太さんしょげてるよ。彼もオス?(男?)だからね、可愛いって言われても悲しいだけなんじゃないの? 嫁さんなら気持ちわかるでしょ~。


 涙目になる豆太さんを構い倒している母さんはとても生き生きしていたと私は思いました。


 なんだろ…作文みたいな終わりかただわ~。




 ちょっと遠くを見ている私たちと心底生き生きして楽しそうな母さんと涙目になってからかわれている豆太は第三者からはそれはそれはカオスな光景だっただろう。


 あ、まだ嫁さんの診察結果聞いてないや。







 分身の意思は微妙に意識がリンクしてますが、結構会話も成立できます。妙に息の合いすぎる双子と思ってください。


 紅蓮コウレンさん、実は無限に分身を作れます。が、面倒なのと妖力を削る意味が無いと判断してしません。敵と対峙してもポチ達が退治して終わるからです。



 あ、それと、紅蓮コウレンは日頃妖怪の姿に変化した時は尻尾は6本しか出してません。邪魔らしいです。




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