病院は早めに行きましょう
病院じゃないけど……見せに行きます。
それと、注意。
色々と九尾とか妖怪に関してオリジナルな設定にしているのでお気をつけください。
唐突だが、嫁さんの休みが長引いた。
「うっ、……うがぁぁぁ……ぅぅ…」
「痛いねぇ……うんうん……ゴロゴロしても変わらないよ?」
「(´;ω;`)」
只今店番中。嫁さんは割りと広いカウンターの中でゴロゴロ転がって痛みに耐えている。
全く痛みが引かないらしい。それよりも痛みが増しているようだ……あれ?これって……
「(婦人病の類いなら大変だぞ……)」
「……くっ薬……」
「さっき飲んだばかりでしょ……飲みすぎは危険だよ。」
「だってさぁ……」
全くと言って良いほど薬が効かない。気休め程度にお腹を暖めているが……それも効果はない。コレは母さんに見てもらう必要があるな。
言ってなかったけど、この数年で母さんは医学に物凄く精通てました、知らないうちに。立て続けに妊娠して家に閉じ籠ってた反動だと私は思う。父さんも父さんだよね……ヘタレなのに嫉妬深くて、自分の事を棚にあげて嫉妬してるんだもんね……その所為で家に閉じ籠るはめになったからマッドなサイエンティストに拍車が掛かってきたのも、その実験の被害者に父さんがなるのも仕方ないよね?
「里帰りするかなぁ……」
「グズッ……今の時期にか?」
「うん。だって辛そうだし。その辛さを知ってるからね……見てると此方が辛い……痛くなるお腹」
「でもさ、この時期……(´;ω;`)」
藍苺のあの顔は見ていたくない……(´;ω;`)ね。この顔は見飽きたよ。私は悲しそうな顔や泣き顔を見ていてニヤニヤする変態じゃないんだよ。ああいう顔はたまに見るからいいのよ。笑顔5:平常時の顔2:泣き顔・悲しそうな顔1:その他だね。いつも見てたら此方の気が滅入るってもんだよ。
笑顔でいてほしいよ。
「時期って……何も母さんが凶暴化する訳じゃないよ? 確かにピリピリしてるけど……それは主に父さんにだけだし。嫁さんのその状態を聞けば親身になってくれるって。」
「この間の帰郷の時は恐かったぞ?」
「ああ、あれね。」
あれとは、正月に一度帰郷した時のことだ。
あの時は母さんの虫の居所が悪かっただけ。それに運悪く父さんが……うん。思い出すのもおぞましい……弟や妹たちは怯えて私や嫁さんにくっついて離れなかった。本能的に母さんの妖気を恐れたのだろう。子供ってそんなところが敏感なんだってさ。私はそんな敏感な所無かったけど?
ま、父さんが悪いわけでもなかったんだけどね……あれは。ギルドの方でちょっとゴタゴタがあったりして年を越すまで帰ってこれなかった……と。あれは父さんも被害者だよね。
母さんも寂しかったんだよ。あれはさ。
あ、問題を起こしたのはあの、あのゴロツキと取り巻き共です。昨日私に絡んできた奴等ですよ。ホントにどうしてやろうかあの野郎共……おっと失礼。
「無理しないで。それにその痛み……尋常じゃないよ。だってもう5日目でしょ? ちょっと心配だからさ…ね?見てもらおう?ね?」
「ん~~……分かった」
「うん。じゃ、準備してくるね?奥に引っ込んで良いよ?そっちも準備あるでしょ?」
「うん。分かった……準備してくる……」
ヨロヨロと立ち上がって転びそうな嫁さんは準備のためにいったん奥に引っ込んだ。嫁さんが準備と言っても大してやることはないだろうけど、黙って待っているよりは多分多少体を動かしている方が気休めになるかもしれない。とはいえ過激な運動はご法度ね。気分が悪くなるなら動かないで安静にしてる方が良いよ。
と、そんなことは良いとして……店じまいはしないで分身に任せようかな店番。八雲は寝てるだろうし……夜に店番あるから昼間はあまり頼みたくないんだよね……悪いじゃない? プライベートな時間が無くなっていくんだし。
ん?分身ってなんぞや?
はい。説明しましょう。と、その前にちょっと説明を。
私は狐妖怪の中でも結構力がある一族“九尾の狐”です。はい、ここ重要ですよ。
九尾の狐とは、色々と昔話や二次元で使われてますよね。ここで九尾の狐についてちょっと解説。
九尾の狐は名前の通り九本の尻尾があるので九尾と呼ばれています。で、皆さん天狐というのを聞いたことはありませんか?
天狐、あまぎつね、てんこ、と呼ばれています。天狐とはなんぞや?
天狐とは狐妖怪の位の最上位です。この話では妖怪として扱ってますが、話によっては神の使いとか神獣とか……まあ、調べてみてください。
えっと、九尾と天狐に何か繋がりがあるのか? あります。実は九尾の狐……天狐なんです。さっき言いましたよね?
“狐妖怪の中でも結構力がある一族”と。そうです。一族の括りで位ではありません。え?そんなこと聞いてない? でも聞いてください。聞き流してください。
この話では天狐は位何です。
あら、位の説明もしましょうか。話が進まないのだか仕方ないですよね。
はい。狐妖怪の位について説明します。
先程言いましたが、最上位は天狐です。その下は順に空狐、気狐、野狐といます。千年生きれば狐は天狐になり、三千年生きれば空狐になるそうです。
気がつきました? 天狐は位的には最上位ですが力的には空狐が最強です力的に。何でも天狐になると九本の尻尾が生えて、空狐になると尻尾が無くなるらしいです……フワフワの尻尾が無くなるのは嫁さん的には……NGだな。尻尾が無い狐って……格好がつかないよ。
ま、空狐ってのは引退したご隠居さんらしいから位がしたなんだってさ。
今のご時世位に縛られている事なんて無いからね。あんまり気にしなくても良いんどけど……戸籍上には確り書かれてます。九尾一族・天狐ってさ。
さて、その下の気狐と野狐は主に妖怪に成り立ての狐妖怪です。下っ端の野狐はいたずら好きで人を化かします。気狐も化かしますが野狐よりはしないはず……個人差かな?
勿論九尾の狐でも人を化かします。悪さする狐妖怪は悪狐と呼ばれ、良い狐は善狐と呼びます。殆どの天狐と空狐は善狐ですが、コレにも個人差というものがあります。そこは人間と同じですね。そんな一部の悪狐の所為で私の一族九尾の狐は悪狐と勘違いされている節がありますね。
確かに悪名は高いですようちの母親の一族。でも、それは身を守る厚い装甲です。その悪名高さで身を守っているのです。
………えっと、戻しましょうか話を。
野狐は人に完全に化けることはまだ出来ない妖怪です。半化け…といいますか、いつもその姿を保つことはでいないそうです。うちの実家にいた小さい狐妖怪達がこの部類ですね。そして気狐はやっと人間に化け人と同じように生活できる者達が呼ばれています。気狐が一番多いですかね……。反対に極端に少ないのが空狐です。そこまで長生きな者は表に出ないので数なんて知りませんが。
ひとつ付け加えると、気狐が天狐になるまでかなり妖力をつけないといけないので中々なることが難しいとか。
気がつきました? 努力と才能さえあれば普通の狐妖怪が天狐まで登り詰めることも出きるんですよ。現に私の一族は一代で天狐になり、九尾の狐の名を世に知らしめました。八雲も今は気狐ですがいつかは天狐になるのではないかな?
あ、そうそう。一度天狐になってしまえばその血筋は天狐です。尻尾が無かろうが九尾の狐と呼ばれるのと一緒です。現に昔は私の尻尾は三本でした。
え?今はちゃんと九本ですよ?フワフワのモコモコ……迂闊に出すと嫁さんにモフられます。
はぁ……あ、失礼しました。つい。
親が天狐なら子も天狐です。尻尾の数があわなくても天狐です。たまに居ます、尻尾の数が一本の天狐とか。つまり、何が言いたかったかと言うと………
私は天狐なので大体の術は出来ます。分身なんてお手のものです。妖術なんて手足同然に扱って見せます……というのは言い過ぎかな? たまに失敗するし、最強主人公モノみたいな主人公無双とかは無いからね?
あれは本当に強いか、器用か、心が強くなと無理だよね。力に負けて暴走するのが落ちだと思う。
さて、分身の説明にやっと戻ってこれたぞ。
分身ってのは二種類ありますが……両方できるんですよね…私は。なんせ、親がチートですから。
二種類と言っても細かくするともっとあるのですが割愛。ざっくりすると質量があるモノとそうでないモノの二種類。
質量があるモノは攻撃を受ければ本体にもダメージ入ります。痛いよ~ホントに。でも、メリットが一斉に攻撃出きるところは結構使い勝手が良かったりする。一人で闘う時とかは重宝するよ。ボッチとか言うな。
質量が無い方は、幻術の類いに入るのかな? 一応ソコには存在するけど……陽炎見たいに実体がないからね、攻撃を受けないけど、攻撃も出来ない。見破られるもの早いしね。影がないから。
はい、そんなわけで説明は終わりかな?
今回は質量がある方の分身を店に残していこうと思います。遠隔操作出きるし。とは言え、戦闘ではないにしろ操作は難しいのである程度行動パターンを設定しておこう。何かトラブルが起これば此方に報せるようにすれば良いし……うん。
ポムッ…っとおとを経てて現れた私そっくりの分身。どう言った理屈なのか分からないが結構私と性格も行動もリンクしているらしい。見分けかたは無い。戦闘でも使うのだ、見分けられたらお終いでしょ?そんな設定はしてないのよ。ぶっちゃけ面倒なんだけどね。ま、そこはおいといて……
(それじゃ、店番宜しく)
(あぁ、分かった)
(何かあったら報告するように)
(了解した)
脳内で会話できるので何があっても直ぐに分かる。便利だな……。多用はしないけどさ。疲れるし……視覚を同調することも出来るんだよ……疲れるけどね。
「ボス……お出掛けっスか?」
「うん。でも、分身置いていくから寝てて良いよ?」
目をごしごししながら眠そうな八雲が起きてきた。ちょっとゴタゴタしてたのかな?嫁さん。割りと気配に敏感な八雲は物音で起きてきたのかな?
未だに眠そうな八雲を部屋に戻るように諭し、私も出掛けるための用意をささっとしてしまう。元々いつでも何があっても言いように四次元ポーチに入れてあるので別段用意をしなくても良いのだ。
「どうしたんふか?……スミマセン…どうしたんスか?」
欠伸をしながらなので「ス」が「ふ」になってしまったようだ。
そしてどうして出掛けるのか聞かれた……あっ、話してなかったのか……
「嫁さんの調子が良くないから早めに母さんに見せてこようと思ってさ……辛そうだからね」
「確かに辛そうっスね……あ、俺は影に潜んでますんで」
そう言って早々に私の影に潜んでしまった。おい。寝癖くらいは直せよ。
「さて、用意終わった?」
「うん。終った」
「じゃ、行こっか」
「うん」
めっきり口数が減った藍苺にさっきよりも不安が募る。
そして私達は足早に転送陣で帰郷したのだった。
――白の国・東の最果ての森・季節の箱庭――
何度来ても……転送陣は速いなぁ……あ、嫁さん大丈夫?酔ってない?転送陣って調子悪いときは酔う時もあるらしいよ?ん?大丈夫?そう。良かったです。
「お帰り二人とも。先触れが届いたときはどうしたのかと思ったわ……ランちゃん大丈夫?」
「大丈夫じゃないです。」
「お腹痛いです」
「そうよね愚問だったわ。その為に来たんだから……直ぐに見ましょう!」
家に直通の転送陣で来たのでもう家の中だ。家の中に直通出来る転送陣は本来なら防犯上の問題から使わないのだが、今回はあまり歩かせるのは辛いかと思い使ったのだった。過保護?もっと言ってくれてもいいよ別に。
「さあ、こっちよ……コウちゃんは部屋で待つ?」
「そうしよっかな……ちび達が奇襲かけてこないよね?」
「ふふふ…そこは抜かり無いわ。キチンと…キチンと言い聞かせてきたから…大丈夫よ♪」
「「(何をした……)」」
母さんの恐ろしさをイヤと言うほど刷り込まれたちび達は母さんには逆らわないだろう。父さん?ちび達の良い玩具だよ。ま、構って欲しいちび達にとっては大好きな父親だろうさ。
「自分の部屋で待ってるよ……嫁さん大丈夫?真っ青だよ顔…」
「無問題?」
「いや、聞いてるのこっち……じゃ、頼んだよ母さん」
「ええ、まかせて」
私は実家の自室に引っ込むことにする。母さんと嫁さんは診察室と化している客室に入っていった。別に見ていても良いのだけど、変なところで恥ずかしがりやな嫁さんに気を使って別室に来たのだった。それに薬品の臭いって嗅ぎたくないし。病院なんて良い思いでないし。
あ、さっきの部屋は物置ね。緊急用の転送陣だから普段何にも使ってない部屋、つまりは物置に設置してるのよ。ちび達がイタズラで入ったりしても気がつかないようにしてるから誤作動とかは無いからね。ま、ぶっちゃけ私と嫁さんと母さんと父さん以外には作動しない仕組みなんだけどね。
「はぁ……心配」
自室のベットに寝そべりながら天井を見てポツリと本音が出た。この世界の医療って中途半端なものだから内臓系の病気に関したら全然と言っても良い程……解っていても胃もたれとか……その程度だよ。婦人病とかホントに洒落になら無い……母さんでも直せるのか?
もし……そう、もしかしたらの話だけど。そんなことになったら……私の持てる全ての力と知識をもって治してみせる! 私の無駄に多い異世界での知識を駆使してやる!
………と、こんな寝っ転がった格好で言っても格好がつかないね……。まぁ、母さんの診察結果次第だね……
そしてふと、店の方が気になったので分身と視覚を同調させてみた……そして私は…後悔したのだった。
天狐の尻尾が九本と言うのは本当に書いてありました。Wikipedia先生で見ました。そして空狐の尻尾が無くなるのには……ちょっとショックを受けました。
やっぱり尻尾が…モフモフの尻尾が無いと私は物足りないです。(´・ω・`)




