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だから何なんだ?

 一応落ち着いた紅蓮コウレンさん。しかし、腹の虫は未だに治まってません。それと元々短気です。…………ええ、短気です。←(大事なことなので…以下略)

 気が付いたらギルド本部はハリケーンの通った跡の様に悲惨な場所に早変わりしていた。何があった……、いや、分かっているよ。


 私なんだろ?



「ボス……」

「悪い。この頃ゴタゴタしていたから……寝不足なんだ。」


 と、言い訳してみる。


 勿論片づけは私がやりますよ。私の暴走の所為ですからね。分かってます。


 だから……



「(私をガン見するな……野次馬共がっ)」

「抑えて抑えて……また暴れたら洒落になんないッスよ」

「反省はしている」



 そしてほんの少し後悔もしている。


 神妙な顔で答えるも皆さん呆れ顔で見てた……うん、本当にごめんなさい。特に受付嬢の双子とルルト……すいませんでした。



「いや、良いって。アイツらには良いお灸になったよ。………まぁ~それなりに被害額が……はははぁ~……」


「私の自費で直すよ勿論」


「多少私達も出すわ」

「そうね、私達がけしかけたのもあるしね……テヘ?」

「……ごめんなさい。こんな妹で」



 とか何とか話し合いをして修理費は私が6割、双子とルルトが各々1割。馬鹿共には各々依頼料から天引きすることに決まった。……正直この出費は痛い。嫁さんに何て言おうかな……。


 包み隠さず言ってしまえば楽なんだけど……この惨事がまた起こりそうだ。主に絡んできた馬鹿達とこの建物に。


 因みに、私達夫婦のお金は各自管理してはいるが、お互い金額は把握している。隠すことでもないからね。どちらも金遣いが粗い訳でもないし。



「ここは片付けるからマスターに報告よろしく支部長」


「………ここでその事を言わなくても……」


 ルルトはわざとらしく大きな声で支部長を強調して言った。床で未だに気持ち悪そうにしてグルグル巻きの簀巻きになっている馬鹿共はあんぐり口を開けて呆けていた。若干青ざめているが、自業自得だろ。


 知らずに喧嘩を吹っ掛けてきたお前らが悪い。



 ま、それにまんまと乗った私も人の事なんて言えた立場じゃないけどさ。



 支部長ってのはギルドマスターと副マスターの次に地位が高い事になっている。表向きにはね。


 まだ大きな街にしか支部を構えていないがその内小さいながらも村に構えることになりそうだ。母さん達の手腕に期待だね。



「余計な出費は痛い……ま、自業自得だけど」

「喧嘩を売る方が悪いッスよ。勝ち目もないのに」


「まあまあ。」

「片づけが済んだら」

「依頼に行ってきてよね」

「「岩窟鳥の討伐」」


「これまた厄介なの選んだね従者くん。俺とは相性が悪いな……」



 岩窟鳥ガンクツチョウとは、身を守るため飛ぶことを辞めて洞窟に引きこもった鳥が、その洞窟内で独自に進化した魔物だ。洞窟に引きこもった為に岩石を食べて羽を岩の鱗に代えた。どうやって食べた石を分解したのかは謎。一説には、シロアリと同じようなバクテリアと共存しているからと母さんは唱えていた。本当かどうかは知らん。


 そんな岩窟鳥は栄養満点だ。病人に食べさせればたちまち回復するとか……病人に食べさせるのはチトヘビィな気もするけど。


 その強固な鱗と化した羽は鉱物を含み良質な金属の材料にもなる。結構高価な素材だ。


 ………確かぁ…実家の物干し竿に使っていた筈。藍苺ランメイが力一杯掴んでも破損しなかった程……多少曲がったけど。


 ま、それはさておき


 高価な素材は採集に危険を伴う。だから高い。岩窟鳥もかなりの高ランク。一羽はそれ程強くもない……ぶっちゃけ弱い部類だ。が、雑魚も集まれば……烏合の衆でも恐ろしい。統率も取れているのでもっと恐ろしい。


 見た目は……某モンスターをハントするゲームの溶岩の中を散歩する竜の幼体に丸っこい嘴と頭の天辺に1本羽を付ければそっくりだ。体の色は灰色。所々羽の名残が見られる。足は細いモロ鳥の足だけど。大きさも某モンスターよりも小さい。牛くらいはあるけどね。


 属性は地とたまに火。食べている物や住処によっては水や氷も付く。反対に地属性だけのもいる。その岩窟鳥は地属性は翠 石に含まれる銅の所為らしい)、火は黒(口らか火の玉を吐いていて焦げた……?)、水や氷は水色か氷がこびりついている(涎に見えるのは秘密だ)。


 多勢に無勢、牛ほどの魔物が10匹ほど自分を取り囲むのはかなりのプレッシャーだ。見た目がゴツいから尚更。


 さっきのルルトの発言、自分とは相性が悪いと言う台詞も少数(自分)vs多勢(敵)は皆苦手だろう。特に風属性は攻撃には適していない……使い方にもよるけど。私には関係がないけど。属性だけは家族の中ではダントツのトップだ。嬉しくないけど。


 ま、嫁さんみたいに力でネジ伏せればOKなんだけどね。所詮は力でどうにかできるレベルの魔物です。数さえ多くなければ……ね。



「無駄話してる暇無いんだった。さて、こんなもんかな?」

「まだ若干ありますけど……」


「それはコイツらに……させれば良いよ(爽笑)」


「そうそう、この馬鹿たちが(黒笑)」

「事の発端だしぃ(嘲笑)」

「「尻拭いは自分でしないと男じゃない(黒笑)」」



 ルルトにはさっさと切られ、双子に睨まれ、泣きそうな奴等に合掌。



 私特製の檻に入れられないだけマシだよ。あれ、父さんでも出られなかったし。あれ?檻って……最強?




「―――――で良いスッかね?」

「あえ?何?」

「……聞いてなかったスッか? 俺とボスだけで依頼を受けてよかったッスよね?」



 いやぁ……悪かったね。暴走して……。




 そして準備も終わったのでさぁ出発しようかとおもった時、奴が来たのだ。


 ん?誰かって?………私の中でこの世で会いたくない奴ワースト3位の奴がね……帰ってきたのだよ。どんな奴かと言えば……正義感勘違い野郎だ。もうひとつオマケするなら説教魔ッスィーン。


 まるで機械マシンの様に延々と説教する姿からつけました。これを身内と顔見知り達に話すとみんな納得していた。やっぱりみんな思ってたんだね。



「本部が嵐に見舞われたと聞いて来てみれば……また君か。何度騒ぎを起こせば気がすむんだ。それで最上位等と……我がギルドの面汚しが……」



 お説教魔。いや、お説教魔ッスィーン。よくもまぁ口が動くねッてくらいお説教を続けている。続ける割に話に中身がなく同じことを繰り返すだけだ。お説教と言うよりは単なる愚痴になる。


 煩いだけの奴。それが私の奴に対する見解。



「両親の七光りでその地位に居るなど言語道断だ。即刻返上すべきだ。それに、藍さんもよくもまぁお前を養っているな……それも親に頭を下げてもらっているんだろ。これだから親の七光りは……」



 親の七光り……それは言われなくとも分かってますよ……


 また始まった……長いんだよなぁ……コイツの愚痴……どうする?と八雲を見ると……ありゃ?


「あの野郎……」


「あれ、コレは不味いんじゃない?従者くんキレてない?」


 ルルトの指摘に納得した。あれま、キレていらっしゃるわ八雲さん。この八雲、実はキレると結構危険です。……私の眷属達は敵に回すと厄介なのは共通だけど……特に八雲は容赦しない。断トツに危険です。


 昔、私がまだ子供の外見の時に不埒な事をしようとした男共に容赦ない報復をいたしまして……簡単に説明すると、金的に一撃入れて顔面肘鉄で殴打、トドメに必殺の金的潰し(本当に潰してはいない。ハズ)をお見舞いさせて恐れられた。特に私に何かしようと思っていた野郎にね。だから未だに八雲は一部の傭兵達に恐れられている。本人は知らないみたいだけどね。


 どうやってキレているか見分けられるかと言えば、簡単。語尾にッスが無いと確実にキレてます。言葉が粗暴になったらもう終わりです。だから出来るだけキレさせないでくれ。



「八雲、無視しな。それより依頼に行くよ。時間がないから。……じゃ、そう言うことなのでサヨナラ。ルルト、また後で」


「え?あぁ…気を付けてな~」


「「御武運を」」


 無言でお説教魔ッスィーンを睨む八雲の首根っこを掴んで引きずる。身長が高い八雲の首根っこを掴むのは正直言って辛い。だから早くこの場を離れて攻撃目標になるだろうお説教魔ッスィーンから引き離さねば……八雲が殺戮魔ッスィーンになりかねない。冗談じゃなく割りと本気で。



「ちょっとまて、まだ話が終わってない」



 だから呼び止めるな、ほら、八雲の怒りのボルテージが臨界点を突破するから……来んなよ。


 中途半端に強いと相手の強さを見誤るって母さん達が言ってたな……。そう言えばコイツ八雲のひとつ下の階級だった。最近は私と同じ階級の奴と組んでるハズ。多分それで天狗になりかけている……と周りは言っている。私には焦ってイライラしているようにしか見えないけど。その組んでいる奴が幼馴染みだからなのかな?


 私には関係がないけど。



「今から依頼に行くから退いて?」


「そうやって逃げるんだろ。お前は何もしないのに従者にやらせて……おい待て!」



 また小言と愚痴を言われそうになったのでさっさと無視してギルド本部から出る。ホントにもう……絡んでくるなら時と場合を選んでくれませんかねぇ?


 こちとら家で具合の悪い嫁さん残してきてるんだよ……さっさと帰りたいの!



「君達もコイツの癇癪に巻き込まれて……」


 そう言って馬鹿達を縛っていた蔦を力任せに短剣で切っていく……そんなことすると短剣が刃こぼれするよ。それにルルトが、あの温厚なルルトさんが眉間に皺を寄せて睨んでいることに気付こうよ?


 世話好きの好青年がキレると……怖っかないよ?



「どうせ的を射る様な事を言われて逆ギレでもしたのだろ。全く、人の迷惑も考えろ……」


「…………」

「…………」



 八雲と揃って無言になった私たち主従にルルトは「あ、コイツ死んだな」等と思っていたらしい。



 まぁ、明後日な検討違いの説教に嫌気も差した。私も自分の未熟さで暴走したのも自覚している……もうさっさと仕事に行こう。



「君達も災難だったね」


「あ、あぁ~……」


 聞かれて言い淀む馬鹿達。私の手前頷くことができないでいる。私が怖いのか、それとも多少の良心の呵責でも芽生えたのか……どっちでも良い。それとも顔色が悪いから吐き気を堪えるのに必死なのかもしれない。


 ぶっちゃけどうでもいい。



「………どうして簀巻きにされたのかそいつ等に聞けばいいっスよ。その他大勢にも、聞いてみたら?そうすれば色々分かるんじゃないッスか?」


 八雲の言葉に顔を反らす馬鹿達。勿論包み隠さず話しますよ、と言う目が座った受付嬢の双子。ルルトは呆れて「話も聞かないからなぁ」と眉間の皺を深くしてぼやく。


 ホントにゴメンね皆さん。何だかね、言い訳するとさ、この頃理性が保てなくてね……正直戦いに出るのが怖いのよ。闘って暴走でもしたら…とか。暴走したまま暴れないか…とか。色々思うのよ。


 8歳の時にヤンデレになりかけた(*前作、後日談参照)って聞いたし……。ホントに身に余る力は身を滅ぼすもんだね。怖い怖い。



「この頃力が暴発するかも知れないからね……出来ればあまりイライラさせないでくれます? 早い話が話しかけないでください。そうすれば問題も起こりませんから。では、仕事があるのでこれで」


「……君は馬鹿じゃないか? 一人で何ができる? 協調性を身に付けろ。」


 そんなこと分かってるって。でもね、人と話しているとイライラするのよ。それで暴発してりゃ世話無いだろ?


「もう良いだろ。レンは仕事に行くんだぞ。放してやれよ」


「お前もお前だ、甘やかすな。コイツの所為で何れだけ迷惑を……」


「もういい加減にしてよ。」

「こっちも忙しいの。そこに転がるおバカさん達の所為で……」

「元はと言えばそいつ等の所為で依頼者に賠償と慰謝料払うのよ。それなのにレンに絡んで……」

「絡まなかったらそもそもギルド本部も半壊しなかったわ」

「大事な奥さんの事を侮辱されれば怒るのは当たり前よ……」

「「そもそも龍の血を引いてるって分かってて言ったのだから……自業自得よ」」


 二人でマシンガントークを見せた双子。


「まあ、普通なら怒るし、短気な龍に喧嘩を売ればどうなるか子供でも分かるよね……彼等は知らなかったみたいだけど」


 呆れて「ふぅ~やれやれ」と惚けるルルト。余談だけどギルドマスターの父さんが龍ってことは周知の事実なんだよね。けど、白龍ってことは不思議なことにあまり知られてない。


 銀髪で分かりやすいと思うでしょ? でも、本来の髪の色が普段の色とは限らない。私が良い例だね。薄藤色の髪に真っ赤な目だから。


 それが知られていない理由の一つなのかもね。



 本来の色と普段の色が違うのは混血や種族の違う妖怪(狐と虎の姿を持つ母さんと龍の父さんの間に生まれた私とか)は割りとよくあるらしい。


 薄藤色は九尾一族の固有の色らしい。窮奇キュウキは薄緑、白龍は銀髪や白髪。その一族同士の間に産まれない限りは結構バラバラで生まれてくる。特に髪の色は母親に似やすいらしく、私も嫁さんの藍苺ランメイも髪の色は母親似だ。目は父親に似やすい……。


 稀に逆も存在するらしい。


 顔?顔は……特にどちらに似やすいとかは無いようだ。多分。



「……そうなのか?」


「お、俺たちは……ッ」


「本当なのか?」



 問い詰められてたじたじな馬鹿達はきっと今からお説教が始まることだろう。だが私は知らん。



 ターゲット(タゲ)が奴等に向いている今がチャンスと八雲とさったとトンズラしたのだった。


 今思えばさ、アイツって正義感が邪魔をして周りが見えにくくなってるタイプじゃない?




 ま、他人のことなんてどうでもいいけどさ。だって私は……面倒は嫌いだからね基本。











 このあと紅蓮を呼んでいたお父さんは紅蓮が来るまでずっと待っていました。紅蓮……すっかり忘れてます。


 何かあっても紅蓮だから正気を取り戻りて来ると思っていたようです。


 ドンマイ朱李さん。


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